自分の頭で考えない人は株をやらないほうがいいという(写真:metamorworks/PIXTA)

今年1月から始まった新NISAですが、MBA保有の経営者でYouTuberとしても活動する上岡正明氏は、「本当に腑に落ちたうえで積み立て投資を選んでいる人は意外と多くない」と指摘します。独自にあみだした「二刀流」戦略で日本の個別株を推奨する上岡氏が、新NISAの実像と攻略法を解説します。

*本稿は上岡氏の著書『日本株で新NISA完全勝利 働きながら投資で6億円資産を増やした 僕のシナリオ』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

新NISAは「政府の陰謀」と主張する人たち

ある女性タレントの方が、テレビ番組でこんな主張をしていました。

「(新NISAには)手を出していないです。国が推してるじゃないですか。国が推してるものにいいものがあるのかなって。何か裏があるんじゃないか」

「私は預けないです。放ったらかしにしていても(儲かる)とか、そんな甘い話は世の中にない。永久(に非課税)っていう言葉も信じていません」

新NISAには、何かしら裏の狙いがあるのではないか、政府の陰謀なのではないかという、懐疑的な見方が一部で広がっています。中には、日銀(日本銀行)の売りどきをつくるためではないか、と考える人もいます。
日銀は2010年以降、ETF(上場信託投資)を積極的に購入することで、日本の株価を下支えしてきました。ところが2023年、初めて売り手に転じたのです。

そのことを根拠に、「日銀が高値でETFを売り抜けることができるように新NISAをつくった」と言っているのです。

では、私の考えを述べましょう。答えは、正解でもあり、不正解でもある、です。

少なくとも、みずから制度のメリット、デメリットを勉強せずに、国が押しつけようとしている、政府の陰謀だと考える人は、そもそも投資には向いていません。厳しいことを言うようですが、そういう人は投資をやらないほうがいいでしょう。

新NISAは、成人した国民全員に与えれらた権利です。しかし、国民全員に適性があるわけではありません。仕事に向き不向きがあるように、投資にも向き不向きが存在します。

自分の頭で考えない人は株をやらないほうがいい

先ほどの女性タレントの主張に答えるなら、「放ったらかしでも儲かるなんて甘い話は世の中にない」というのは一部本当です。少なくとも個別株投資に関しては、みずから進んで学ばないと儲けることはできません。

また、「永久に非課税という言葉も信じていない」というのも間違ってはいません。たとえば今後、NISA制度に否定的な政党が国民に支持され、政権を取った場合、廃止になる可能性はなくはありません。

そして、「裏があるんじゃないか」という疑問については、「あってもいいじゃないか」というのが私の答えです。

そもそも株式投資というのは、みんなで手をつないでゴールする、最近の小学校の徒競走ではありません。勝つ人もいれば、負ける人もいる。だます人も、だまされる人もいる。非常にシビアな世界です。

もし日銀が高値まで吊り上げて売り抜けようとしているなら、自分が先んじて売り抜ければいいだけの話です。「そうすれば儲かるじゃん」と思ったあなたは、株式投資の適性があります。

そして、もし売り抜けに失敗したなら、それは100%自己責任です。このことが腑に落ちていないうちは、株式投資をやるべきではありません。

ただし、株式投資はゼロサムゲームではありません。日経平均株価が4万円、5万円になれば、ほとんど全員が儲かります。国も儲かるし、あなたも儲かります。あなたの大切な家族も、友人も、そして私だって儲かります。人生を変えるような大金を手にする人もいるでしょう。みんながハッピーになれるわけです。

国が今やろうとしているのは、こういうことです。もし、新NISAが陰謀だと思っている人が本書を読んでいたら、「今からぜひ投資の勉強をしてください」と私は強く言いたいです。

似たような陰謀論として、「新NISAは富裕層優遇だ」という主張もあります。

庶民は生活に苦しんでいる。投資をするお金なんてない。だから新NISAを活用できるのは、お金を持っている富裕層だけだ、という内容です。

これも大きな間違いです。むしろ、富裕層には不利な制度になるかもしれません。というのも、近い将来、金融所得課税の引き上げが行われる可能性が高いからです。

新NISAは庶民にとって有利な制度

岸田文雄首相は就任時、「新しい資本主義」というアドバルーンを打ち上げました。その中には、金融所得課税の引き上げが明記されていました。しかし、各方面からの反対にあい、すぐに引っ込めてしまったのです。

しかし、新NISAがスタートする直前、岸田首相は「経済・市場への影響を考えながら議論を続けている」と述べました。決して、忘れたわけではなかったのです。

実際、新NISAは、金融所得課税の引き上げとトレードオフなのだと思います。1800万円までは非課税にするので、その代わり上限を超えたぶんは金融所得課税を上げるぞ、ということなのでしょう。

そう遠くない時期に、税率が現在の20%から25%かそれ以上に上がることは既定路線だと思っておいたほうがいいでしょう。

このように、新NISAはむしろ庶民の武器になると思います。

1800万円までは非課税で、しかも株価は上を目指している。こんなチャンスはめったにありません。

私は、政府のやっていることがすべて正しいとはまったく思っていませんが、新NISAに関しては、すばらしい制度だと思っています。陰謀論を真に受けるのではなく、ぜひご自身でメリット、デメリットを考えてみてください。

インデックスファンドの積み立ては決して万能ではありませんし、唯一の正解でもありません。そこで私がおすすめするのが「二刀流」戦略です。

成長投資枠(上限1200万円)をいっぱいまで使って日本の個別株を売買し、つみたて投資枠(600万円)でインデックスファンドを積み立てる、という戦略です。

言い換えるなら、「コア・サテライト戦略」の新NISAバージョンといってもいいでしょう。


(出所:『日本株で新NISA完全勝利 働きながら投資で6億円資産を増やした僕のシナリオ』より)

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目指すのは「ミドルリスク・ミドルリターン」の運用

コア・サテライト戦略とは、保有する資産を「コア」と「サテライト」に分けて運用するポートフォリオ戦略で、投資家の間ではよく知られている基本中の基本ともいえる手法です。


コア(中核)は、安定したリターンが期待できる長期分散投資での運用のこと。ここでは、つみたて投資枠を使った運用を指します。

サテライト(衛星)は、ある程度大きな値動きがあり、タイミングを見て売買する運用のこと。ここでは、成長投資枠を使った運用を指します。

コアとサテライト、つまり「守りの運用」と「攻めの運用」を同時に行うことで、リスクとリターンのバランスをコントロールすることができます。

ハイリスク・ハイリターンでもなく、ローリスク・ローリターンでもない、ミドルリスク・ミドルリターンの運用が、この戦略をとることで実現するのです。

(上岡 正明 : 経営者・個人投資家)