「非テレビ」の事業拡大に走る民放局のジレンマ

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本業の広告収入が頭打ちとなっているうえ、証券市場からは資本効率改善への圧力が増大。民放キー局・地方テレビ局を取り巻く注目トピックスについて解説する。

※記事の内容は記者による解説動画「Q Five」から一部を抜粋したものです。外部配信先では動画を視聴できない場合があるため、東洋経済オンライン内、または東洋経済オンラインのYouTubeでご覧ください。

Q:広告収入が陰る中、次はどうやって稼ぐ?

電通が毎年発表している統計「日本の広告費」によると、2023年の総広告費は過去最高となった一方で、地上波テレビは前年比4%の減少となりました。これに伴い、テレビ局の業績の下方修正も相次いだ形です。

各局で共通している打開策は、テレビ以外の領域の強化です。直近では、TBSホールディングスが学習塾のやる気スイッチグループホールディングスを、日本テレビ放送網がスタジオジブリを買収しました。

フジ・メディア・ホールディングスは、サンケイビルやグランビスタホテル&リゾートのもとで不動産事業を強化しています。また、テレビ朝日は有明エリアに複合型エンタメ施設「東京ドリームパーク」を建設中です。

ただ、日本テレビホールディングスが2014年に買収したフィットネスジムのティップネスはコロナ禍で赤字が膨らむなど、各局の新規事業がすべてうまくいっているというわけではありません。

Q:地方局の多くが抱える経営課題は?

国内には民放キー局だけでなく、約130の地方(ローカル)局も存在します。そのローカル局を巡っては、2023年末に群馬テレビで起こった”社長解任劇”が業界で話題となりました。こうした騒動の引き金になっているのもやはり、業況の悪化と考えられます。

群馬テレビの業績が悪化した要因の1つは、県の広報番組が終了したことだと言われています。群馬県側は近年、県庁内に自前の放送スタジオを設置するなど、自治体自らで配信体制を築いてきました。他県でも、地元局が担い手となっていた広報番組が終了となる例は出ています。

ローカル局の中には、サーモンや車エビの養殖など、従来のテレビ局の事業とは程遠い領域に乗り出す会社も出てきています。バラエティなどの番組制作をしたくて入社したのに……という新入社員が流出してしまい、社内の高齢化が進んでいるケースも増えています。

民放キー局に限らず、ローカル局でも課題は山積み。今後も生き残りをかけた戦いは厳しくなっていきそうです。

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(郄岡 健太 : 東洋経済 記者)