中国不動産大手「万科」、非中核資産の売却を加速
中国不動産業界の優等生とされる万科も、資産の切り売りを余儀なくされている。写真は同社が深圳市内に建設した高層マンション(万科のウェブサイトより)
中国の不動産大手の万科企業(バンカ)は、中国の不動産業界において財務状況が安定していると評価されてきた1社だ。しかし不動産市況の悪化が続く中、同社もまた資金繰り確保のための資産売却を迫られている。
万科の董事会主席(会長に相当)を務める郁亮氏は、4月30日に開催した年次株主総会で「本業に集中し、事業をスリム化して健全経営を実現する」ための一連の計画を発表。その第1段階として、事業資産の圧縮とグループの資金調達方法の見直しを図ると明らかにした。
撤退すべき非中核事業を洗い出し、それらの清算や譲渡を進める。バルクセール(複数資産の一括売却)や不動産投資信託(REIT)などの手段を活用して、商業施設やオフィスビルの現金化を加速する方針だ。
毎年4000億円超の回収目指す
万科は2023年にもバルクセールを行い、約123億元(約2670億円)の資金を回収した。郁氏は2024年の資産売却について200億元(約4340億円)との目標を掲げ、今後数年にわたって毎年200億元規模の回収を続ける考えを示した。
それだけではない。万科は株主総会の1週間前の4月23日、同社とその子会社が外部に債務保証を供与する権限を認めるよう、株主総会に諮る議案を公表した。
具体的には、万科および同社が50%以上を出資する連結子会社が、金融機関から融資を受ける際に(相互に)債務保証を供与するのを認めるという内容だ。2024年度の新たな債務保証の上限額は、前年度の約4.3倍に当たる1500億元(約3兆2550億円)に引き上げることを提案した。
「グループ全体の銀行借入残高は2023年末時点で2000億元(約4兆3400億円)近くに上るが、そのうち万科のグループ企業が直接借り入れているものが1200億元(約2兆6040億円)を超える」
万科の総裁(社長に相当)を務める祝九勝氏は、前出の議案について株主総会でそう述べた。
不動産業界に対するデフォルト不安が高まり、万科も2度の信用危機に直面した。写真は同社の董事会主席を務める郁亮氏(万科のウェブサイトより)
その意図は、グループの傘下企業がバラバラに借り入れている債務を万科本体または同社が直接支配する子会社の信用力の下に集約することにあるとみられている。
有利子負債を2年で3割圧縮へ
中国の不動産大手の中では相対的にましとはいえ、万科を取り巻く経営環境は厳しくなる一方だ。
同社は2023年10月末、不動産業界のデフォルト(債務不履行)リスクに対する市場の警戒感が高まる中で(債券や株式を売り込まれる)最初の信用危機に直面。2024年2月にも再び危機に見舞われた。
万科は2023年末時点で総額3200億5000万元(約6兆9450億円)の有利子負債を抱えている。同社は「着実なレバレッジ(債務)低減」という旗印を掲げ、2024年から2025年にかけて1000億元(約2兆1700億円)を超える有利子負債の削減を目指す。
(財新記者:陳博)
※原文の配信は5月1日
(財新 Biz&Tech)