[5.19 J1第15節 町田 5-0 東京V Gスタ]

 大車輪の活躍でダービーを制した。FC町田ゼルビアFW藤尾翔太は前半11分に先制点につながるオウンゴールを誘発すると、同29分、後半25分とゴールを決めた。「立ち上がりから終盤まで、僕たちの流れで試合を運べた」と手応えを語った。

 昨シーズンはJ2の舞台で激闘を繰り広げた両チームによる、J1初のダービーマッチ“東京クラシック”。「同じJ2から上がってきて、絶対に負けたくない気持ちはあった」(藤尾)。町田は序盤から球際の部分で気迫を見せつけ、東京ヴェルディのゴールを脅かしていく。

 前半11分には均衡を破った。MF仙頭啓矢からのパスを、藤尾がPA右で収めた。角度的に右利きの藤尾ではシュートが決まる可能性は高くない。「シュートという選択肢もあったけど、GKとDFの間に入れれば、味方が入ればゴールだし、いなくても相手が触ればゴールと考えていた」。即座に判断すると、低い弾道のクロスは相手選手に当たってオウンゴール。「速いクロスは間違っていなかった」と振り返った。

 前半29分には自らのゴールで追加点。右サイドラインからのスローインでDF鈴木準弥は得意のロングスローでなく、マイナス方向に出して味方からリターンパスを受ける。その間に藤尾は敵陣PA内で相手選手と駆け引き。「一回相手の後ろに入って、入りたいスペースを開けておいた。ボールが来るタイミングで先にうまく入れた」。鈴木のクロスにダイビングヘッドで合わせ、今季4点目を沈めた。

 前半を2-0で折り返すと、後半15分には再びチャンス到来。MF平河悠が敵陣PA内に入ったボールを追いかけると、相手のファウルを誘発する。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)のチェック中に、藤尾はボールを抱えて準備万端。「VARが入ってスクリーンを見たときに、PKやなと思ったので。心の準備をしていた」。事前練習からPKキッカーは藤尾と決まっていたという。

 PKで相対したのは名手GKマテウス。藤尾はキックモーションから一度止まって確認すると、マテウスは微動だにせず。「動いていなかったので、サイドにより速いボールを蹴れば入ると思った」。ゴール右ポストに当たったものの、「狙いすぎた部分はあるけど、あのへんを狙わないと入らなかった」とギリギリのところを攻め切り、今季5点目で3-0とした。

 再び首位に浮上した町田は、6得点のFWオ・セフンを始めFW陣が好調。激しいポジション争いの中で、藤尾もひとつアピールに成功した。「僕もそこに食らいついていけるように。結果を出せばチームも勝つし、僕も地位が確立できると思う」。クラブでのアピールはパリオリンピックのメンバー入りにも影響。「チームの順位と個人の結果がすごく(メンバー入りに)結びつく」とさらなる活躍を誓った。

(取材・文 石川祐介)