2月に行われた高校最後の大会に登板した鶯歌工商の高橋選手=嘉義市野球場(Ning's Baseball Shot提供)

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(台北中央社)2023年10月に行われた日本のプロ野球ドラフト会議で、ヤクルトから育成1位指名を受けた北部・新北市立鶯歌工商の高橋翔聖投手。今年6月に高校を卒業し、日本へ旅立つ。5月上旬、中央社の単独インタビューに応じた高橋は、念願のプロ入りが間近に迫り「期待しかない。わくわく(している)」と胸を高鳴らせている。

台湾の高校に通う生徒が日本の球団からドラフト指名を獲得するのは史上初。そんな高橋は2005年に台湾で生まれた。台湾人の父と日本人で阪神ファンの母を持つ。2013年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の台湾対日本戦を見たことがきっかけで、野球を始めた。中学3年生の時、同高野球部の王伝家監督にスカウトされ、監督の人柄や選手の自主性を重視する指導方針に魅力を感じ、同高に進むことを選択。進学後は投手に専念した。

入学当初、ストレートの球速は130キロほどだったが王監督や盧劭禹投手コーチらの指導の下、体力強化や筋力アップなど、体づくりのための基礎的な練習を「確実に、焦らず、監督とメニューを相談しながら」こつこつと積み重ねてきた。さらにその時々に応じて「自分に何が足りないのか」を考え、自主トレーニングに取り組んできた。

2年生の頃から努力の成果が現れ始め、球速が徐々に上昇。この頃の試合を見たスカウトの目に留まったという。ただ、自身にはほぼ知らされていなかった中での育成1位指名。「今もずっと、うれしいって感じがします」と喜びをかみしめる。指名後は、今年2月に開催された高校最後の大会のために力を注いだ。試合では、ストレートが最速151キロを計測するなど、自身の活躍ぶりを「3年間ずっと成長し続けたのを見られたので後悔はない」と振り返り、「高校の仲間と(大会に)出られて本当に良かったと思います」と笑う。

その大会が終わってからは、プロ入りに照準を合わせた練習に取り組んでいる。「6月に試合ができるようにしています。すぐ試合かどうかは分からないですけど」「一番いい状態で(投げたい)」と、スタミナや筋力強化のトレーニングに加え、自らが課題としている変化球のキレを磨くため、ブルペンでの投球練習に励んでいる。

元々速球派の投手でなかったこともあり、持ち味は制球力。マウンドではストレートの他、ツーシーム、スライダー、チェンジアップなどの変化球を投げ分ける。球数を少なく抑えて、長いイニングを投げることを心掛けているという。

憧れの選手は、元阪神の投手、藤川球児さん。「絶対的な安心感」がその理由だ。自身も「ファンにそう思わせたいです」と意気込む。

ヤクルトのチームの印象は「家族みたいで、雰囲気がいい球団。打線が強い」と語る。日本で暮らした経験も少ないとし、これから始まる新生活に笑顔で「楽しみです」と期待を寄せる。

当面の目標は支配下登録をつかみ取り、なるべく早く1軍に定着すること。そして「ずっと(先発)ローテーションを守る、安定感のある(投手になりたい)」とはにかんだ。

(中村充孝)