中国科学院(CAS)の地球化学研究所が、縮尺1:250万の月の地質地図帳を発表しました。この地図は、完全な高精度月地質地図帳としては世界初で、将来の月の研究や探査の基礎となる地図データとして役立てられるとのことです。

China Publishes World's First High-definition Lunar Geologic Atlas----Chinese Academy of Sciences

https://english.cas.cn/newsroom/cas_media/202404/t20240422_660730.shtml

China's Moon atlas is the most detailed ever made

https://www.nature.com/articles/d41586-024-01223-0

CASが2024年4月21日に発表した「Geologic Atlas of the Lunar Globe」は、100人以上の研究者が10年以上の歳月をかけて編集した月の地質図です。前例のない縮尺で作られた高精度な地図には、合計で1万2341個のクレーター、81の盆地、17種類の岩石のほか、月面に関するそのほかの基本的な地質学的情報が網羅されています。



CASの研究者で、月地図作成プロジェクトの共同リーダーでもあるJianzhong Liu氏によると、既存の月地図は1960〜1970年代のものだとのこと。Liu氏は「アメリカ地質調査所は、アポロ計画のデータを使って縮尺1:500万の地図や、着陸地点付近の地域的な高精度地図など、月の地質地図を多数作成しました。それ以来、月に関する私たちの知識は大きく進歩し、それらの地図では将来の月の研究や探査の際のニーズを満たすことができなくなっています」と述べました。

中国は、月への野心を支援するためにこの地図を利用する予定であり、Liu氏はこの地図が他国の月面ミッションの遂行にも役立てられると考えています。

科学誌・Natureによると、2024年に入って日本の探査機を含む3つの探査機が月を目指して打ち上げられているとのこと。また、中国は5月にも月の裏側から石を採取する探査機を送る計画です。

月の地図帳が更新されたことで、科学者は月の歴史をより深く理解したり、月の資源の在りかを評価したり、地質学的な比較研究を実施したりできるようになります。さらに、将来の月面研究基地の建設など、今後の月面ミッションの候補地の選定にも役立つと考えられているとのこと。



中国語版と英語版が発行されるこの月地図には、主に2007〜2009年にかけて軌道上から月面を調査した嫦娥1号のデータが使われています。嫦娥1号の観測記録は、2013年と2019年に月面に降下した嫦娥3号と4号からのデータによりその正確性が検証されました。

地図作成チームはまた、NASAの月探査機・GRAILやインドの探査機・チャンドラヤーン1号などのミッションで収集されたデータも使用したとしています。

ドイツ・ベルリン自由大学の上級科学者であるグレゴリー・マイケル氏は、「この地図は、アポロ時代以降のデータをすべて使った世界初のもので、過去数十年にわたる国際的な成果や、大成功を収めた中国の嫦娥計画の上に成り立っています。これは、月の地質学に関する新しい挑戦の出発点となり、あらゆる種類の月研究を行っている研究者の主要な情報源となるでしょう」と評価しました。