【六川亨の視点】2024年4月7日 J1リーグ第7節 FC東京vs鹿島アントラーズ
J1リーグ第7節 FC東京2(0−0)0鹿島
17:04キックオフ 国立競技場 入場者52,772人
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まずお詫びと訂正です。先週の原稿でFC東京の松木玖生や荒木遼太郎らがU-23日本代表に選出されたら、7日にカタールへ出発するため当日の試合には出られないと紹介しました。しかし出発は22時30分と22時50分のため、7日の試合に出場することは可能で、彼ら以外にも代表に選出された選手は試合に出場しました。ここにお詫びして訂正いたします。
そして鹿島戦、FW荒木はレンタル移籍のため出場できなかったが、MF松木とGK野澤大志ブランドンは90分間フル出場した。荒木の代わりに1トップに入ったのは仲川輝人だが、やはり彼はサイドに固定するより自由に動いた方が対戦相手にとって脅威となる。左右両サイドに流れたり、中盤に降りてきたりしてビルドアップに参加しつつ、再び前線へと飛び出して行く。すると相手もマークしにくくなり、彼の動きに連動して松木もフィニッシャーやラストパサーとして前線で躍動した。この日はベンチ外だったが、ディエゴ・オリヴェイラだとトップに張る形で相手の集中マークを受けやすい。さらにボールを持つと「オール・オア・ナッシング」のドリブル突破を仕掛けるため、抜ければいいが奪われると、その都度攻撃は分断される。その頻度も昨シーズンより増えている気がしてならない。
ところが荒木や仲川が前線に入ると無理な突破は仕掛けず、まずはボールキープを優先し、ドリブルも運ぶようなスタイルでパスの選択肢を残しているため攻撃に連動性がある。さらに松木である。フィジカルの強さを生かした突破やキープだけでなく、ここ2試合はパスセンスにも非凡な才能を発揮した。この日の2ゴールも松木のアシストによるもの。ジャジャ・シルバがGKとの1対1でシュートを決めていれば3アシストを記録した。GK野澤がボールをキャッチすると、最初に自陣から敵陣目がけてダッシュするのも松木と、荒木とのマッチングを契機に、攻撃の核としてプレーが多彩になり覚醒した感がある。そんな彼らの不在についてピーター・クラモフスキー監督は「今日の無失点は全選手のハードワークのおかげ。誰がこのユニホームを着て出ても、信念を持って戦ってくれる。松木らがいなくなるのは現実のこと。しっかり前を向いて進んでいかなければならない」と代替案についての明言は避けた。
一方、敗れたランコ・ポポヴィッチ監督は「ゲーム自体は我々がコントロールした。失点の前に得点のチャンスがあったのでしっかり決めないといけない」と試合を振り返った。確かに開始直後こそ右FWチャヴリッチの突破を足がかりに押し込む時間が続いた。前線からのプレスも効果的だった。しかしそれも開始10分過ぎまで。その後はシュートシーンを迎えてもCBエンリケ・トレヴィザンと土肥幹太の身体を張ったブロックに遭い、GK野澤を脅かすことはできなかった。監督に就任してまだ7試合目、チーム作りの最中であり、試行錯誤を繰り返していることだろう。大型ストライカーのチャヴリッチは1トップや2トップではなく「本来得意なポジションは今日のポジション(右サイド)」とポポヴィッチ監督は言うが、それが最適解なのかどうか。攻撃陣のタレントは豊富とはいえ、指揮官の試行錯誤はもうしばらく続くかもしれない。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。