共和党大統領予備候補のドナルド・トランプ氏が、中国系ソーシャルメディアアプリのTikTokをアメリカで全面的に禁止しようとする動きについて懸念を表明しました。これは、議会が可決すれば禁止法案に署名すると述べたジョー・バイデン大統領の見解とは対照的です。

Trump says TikTok ban would empower Meta, slams Facebook

https://www.cnbc.com/2024/03/11/trump-says-a-tiktok-ban-would-empower-meta-slams-facebook-as-enemy-of-the-people.html



TikTok ban: House vote set for Wednesday morning

https://www.axios.com/2024/03/11/tiktok-ban-congress-when-biden

CNBCのインタビューに応えたトランプ氏は「TikTokがなければFacebookはより大きくなる。Facebookは国民の敵だと考えている」と語り、TikTokの全面禁止がアメリカ国内で進められつつある現状への懸念をあらわにしました。

TikTokは中国企業のByteDanceに運営されていることから、アメリカのユーザーデータが中国に流出するのではないかとの懸念が高まっており、すでに政府が管理するデバイスでTikTokの使用を禁止する法律などが定められています。これに続く流れとして、アメリカ政府はTikTok側に「アメリカでのサービス停止か、さもなければ売却か」を迫っています。

TikTokのショウ・チュウCEOは「アメリカにおいてTikTokはByteDanceから独立しており、プラットフォームの本社はシンガポールとロサンゼルスにあるため、アメリカのデータはアメリカ人が監督するアメリカの企業により管理されていることになる」と説明していますが、政府側の理解は得られていません。

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TikTokへの反発が続く中、TikTokの売却を命じることができる法案「外国の敵対者が管理するアプリケーションがもたらす国家安全保障上の脅威からアメリカ国民を守るための法案」が議会に提出され、2024年3月7日にアメリカ下院議会のエネルギー・商業委員会を全会一致で通過しました。

この法案をめぐりバイデン大統領が「上院・下院ともに法案が可決された場合、その法案に署名するつもり」と語ったため、ついにTikTokが最終的な決断を迫られるのではないかとの見方が強まりました。

一方のトランプ氏は、TikTokをめぐる国家安全保障やデータプライバシーに関する懸念を認めた上で、「TikTokには良いこともあれば悪いこともたくさんある」と指摘。「TikTokが大好きな人もたくさんいて、TikTokがないとおかしくなってしまう若い子もたくさんいる」と語り、TikTokを一部擁護するような姿勢を見せました。

なお、そもそもTikTokの全面禁止を主張し始めたのは大統領時代のトランプ氏だったため、方針転換とも取れる主張に疑問の声が上がっています。

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とはいえ、TikTokが中国の所有物であることから国家安全保障上のリスクは避けられないとトランプ氏は指摘しており、「中国がTikTokから何かを欲しがれば、TikTokは与えるだろう」との見解を示しています。加えて「私はFacebookの規模を2倍にしようとは思っていない。もしTikTokを禁止すれば、他のSNS、特にFacebookが大きな利益を得るだろう。特に選挙に関しては、Facebookは私たちの国にとって非常に悪い存在だと思う」と述べました。

今回の法案には賛否両論の声があり、「いかなる企業に対してもアメリカ人の所有権を要求することは危険な前例となる」との反対派の意見や、「TikTokがもたらす国家安全保障上の懸念は特異で実証済みなので、法案に対する懸念は問題にならない」との賛成派の意見が見られています。