子どもの動画やゲーム「賢い」家庭の付き合い方
動画やゲームは子どもたちにとって「身近な娯楽」になっています(写真:metamorworks / PIXTA)
現代の子どもにとって身近な娯楽と言えば、もはやテレビではなくYouTube なのかもしれません。またスマホゲームやオンラインゲームが大好きなお子さんもいらっしゃるでしょう。
皆さんのご家庭では、子どもたちがYouTubeを視聴したりゲームをしたりすることに対してルールや制限を設けていますか?なかには勉強に集中できないのはYouTubeやゲームのせいではないかと考え「全面禁止」にしているご家庭もあるようです。
はたしてYouTubeやゲームは“悪”なのでしょうか?今回はYouTubeやゲームなど娯楽メディアとの上手な付き合い方について考えます。
「禁止ルール」に効果はある?
小学生向けのタブレット型通信教育サービスなどを提供している「RISU Japan」で、難関中学に合格した受講生を対象に行ったアンケートでは、娯楽を禁止していない家庭が大半だったという結果が出ています。
つまり、これらの家庭では、娯楽は受験勉強の妨げにはならなかったということです。適度な付き合い方をすれば、禁止する必要がないことがわかります。
確かにYouTubeやゲームなどの娯楽は、やり始めるとキリがなくなりダラダラと時間を使ってしまうものです。そのような悪い部分が目についてしまい、全面禁止にしているご家庭もあると聞きます。
しかし、集中力は「誘惑を排除すればずっと続く」というものではありません。たとえ娯楽を禁止しても、疲れてくればどうしたって気持ちはだらけます。
また、禁止してもコッソリ約束を破るというのはよくあることです。罪悪感に苛まれながらコソコソ見るYouTubeは、疲れたときの息抜きにすらなりません。
勉強が何も手に付かなくなるほど娯楽に夢中になるのは問題ですが、YouTubeやゲームは上手に付き合えばプラスの効果もあるのです。よって、全面禁止にするよりも視聴してもよいルールを決めるほうが得策です。
YouTubeやゲームについてルールを決めるときは、親の考えだけで決めたルールを子どもに押し付けることがないよう気を付ける必要があります。大切なことは、子どもの考えや言い分にきちんと耳を傾けることです。
話し合いとは、お互いの考えを伝え合い、意見を擦り合わせていく作業です。相手を論破して自分の意見を通すことが目的ではありません。話し合いの姿勢を家庭で学ぶことは、社会に出てからも生かせる経験になります。
話し合いたいポイントは、「視聴時間」や「視聴してもいい時間帯」、「クリアするべき条件」などでしょう。例えば、「YouTube30分、ゲーム30分、合計1時間まで」「遅くとも20時半には消すこと」「今日の課題が終わってから見ること」という具合です。
このとき、約束事を子ども側に決めさせる方法も効果的です。親に押し付けられたルールでなく、自分から決めたルールのほうが、守らなければという気持ちが強く働くものです。
注意しなければならないのは、YouTubeについては視聴するテーマや時間を意識的に決めておかなければ、メディア側からのオススメ動画をどんどん見せ続けられてしまいます。
特にショート動画はおもしろい動画が無限に流れてくるので、ついつい時間が経つものです。同じ「おもしろい」でも「funny=笑える」と「interesting=興味深い」は違います。終わり時間を決めてダラダラしないよう気を付けたいところです。
動画だから理解しやすいこともある
娯楽というと無駄な時間に思えてしまうYouTubeですが、単に息抜きという以外にも、学習面で生かせる良さがあります。
「百聞は一見に如かず」ということわざがあるように、動画だからこそ手っ取り早く、理解しやすいことがあります。
例えば、プログラミングなどは手順をいちいち文章で説明するよりも、動画で見せれば「こうやります」の一言で済みです。自動車工場など普段見られない場所に潜入できるのも動画ならではの魅力です。
理科の分野でも、図鑑の写真より動画のほうがよりリアルな実態を知ることができます。天文や昆虫などの自然観察や科学実験は興味深い動画がたくさんあるので、学習にうまく取り入れて利用するといいでしょう。
解説系の動画もおすすめです。自分でたくさんの記事を調べなくても、親しみやすいキャラクターが順を追ってわかりやすく説明してくれる解説動画がたくさんあります。
例えば数学の定理や法則など、「なぜそうなのか」を知っておくことで授業内容もより興味を持って話を聞けるようになります。
学びにつながるおすすめYouTube
筆者がセレクトした、子どもたちの学びにつながるおすすめのYouTubeチャンネルをいくつかご紹介します(外部配信先では画像やリンクが見られない場合がありますので、その場合は東洋経済オンラインのサイトでご覧ください)。
せみまるプログラミング教室
Scratchを使ったプログラミングのやり方を子どもにもわかりやすく、楽しく解説してくれるチャンネルです。子どもたちにも人気の高い実在するゲームを題材に、それをScratchで再現するなど、子どもにとって興味深く親しみやすい動画となっています。
(出所:https://www.youtube.com/@semimarunko)
GENKI LABO
学べてためになる実験をテーマに動画を配信しているチャンネルです。「光るかき氷の作り方」「醤油やコーラもろ過だけで透明にする」など、子どもに身近な題材でおもしろい実験を見ることができます。理科をますます好きになれるチャンネルです。
(出所:https://www.youtube.com/@GENKILABO)
ナゾトキラボ【IQ & 謎解きチャンネル】
「おやどりさん」と「ヒヨコイ」の親しみやすいキャラクターが掛け合いをしながら、数学の謎と不思議をわかりやすく解説してくれるチャンネルです。「素数」「虚数」など難しいテーマを理解しやすく表現してくれたり、推理クイズもあったりと、小学生から大人まで算数・数学に親しめる内容になっています。
(出所:https://www.youtube.com/@nazotokilab)
中学生の勉強応援『スタフリ』
中学生の学習内容について、たくさん習ったことをしっかり整理できるチャンネルです。先生が要点を絞っておもしろく、わかりやすく解説してくれるので、ざっと総復習をしたいとき、苦手な範囲を割り出したいときなどに役立ちます。
(出所:https://www.youtube.com/@study_freak)
留意しなければならないのは、どんなにためになりそうな動画であっても、YouTubeは「受け身」のスタンスでしかないという点です。能動的に脳を使っていないので、動画を見てわかった気になっても本当の意味で学習内容が身に付いているとは言えません。
よって、YouTubeの視聴時間は学習時間にはカウントせず、あくまで好きなこと、興味があることを楽しむ時間として考えます。
もし、せっかく学習系の動画を見て得た知識を定着させたいなら、自分でノートにまとめ直したり、親に内容を説明して教えたりするなど、アウトプットをセットで行うことを意識すると良いでしょう。
ゲームと上手に付き合う方法は?
ゲームもYouTubeと同じように全面禁止にする必要はありません。
ゲームはYouTubeよりも娯楽の要素が強いイメージがありますが、ゲームの中にも遊びながら学べるものがたくさんあります。私自身もゲームを通じて歴史に興味を持ち、詳しくなった経験がありますが、何事も興味があることの勉強は苦にならないものだと感じます。
全国各地の地名や名産物に強くなれる「桃鉄」や、立体感覚が養われる「マインクラフト」は子どもたちに人気のゲームです。
マインクラフトではコマンドを使ってプログラミングの要素を学べたり、化合物を作ったりもできます。スマホアプリのゲームでも、パズルや謎解きクイズなど頭を使うゲームはたくさんあります。
学びにつながるゲームはたくさんありますが、親が「このゲームで遊びなさい」「これだったらやってもいい」と強要したり制限をかけたりするのは逆効果になるので注意が必要です。
子どものほうから興味を示して遊ぶならいいのですが、楽しくないのに嫌々遊ぶのでは息抜きにもなりません。親としてはゲームの時間は娯楽と割り切って、決めたルール内で子どもの好きにやらせるのがいいでしょう。
もし、子どもがやっているゲームの内容が気になるなら、一緒にやってみるのも1つの手です。子どもの好きなことに親が付き合ってくれるのは、子どもにとってうれしいこと。親子のコミュニケーションを取る時間にもなります。
2人プレイのゲームは、お互いに対戦するだけでなく、2人で協力し合って課題をクリアしていくゲームも多くあります。子どもが親より得意なことを自慢気に話せるのも、貴重な機会かもしれません。
メリハリをつけて気分をリフレッシュ
YouTubeやゲームなどの娯楽を全面禁止にすることは、子どもにとってストレスになります。またこっそり禁止ルールを破ることも考えられるため、親子でルールを話し合い、息抜きのためにも適度な距離感でうまく取り入れるのがいいでしょう。
ダラダラ視聴するのではなく、好きなこと、興味があることについて積極的に調べてみると良い時間になります。
ゲームについても同じようにメリハリをつけて楽しむようにしましょう。うまく気分をリフレッシュすれば、充実した学習時間のための活力につながります。
(今木 智隆 : RISU Japan代表取締役)