2024年は TikTok Shop 勝負の年。課題は顧客体験とバイラルへの対応
2023年はソーシャルコマースにとって重要な年だった。フリップ(Flip)のようなアプリが成長し、9月には米国でTikTok Shopがローンチされ、中国では何年も前から常識となっているソーシャルメディアとショッピングの完全な融合に世界の多くの国々がようやく追いついたような感がある。
だが、そこには課題がないわけではない。インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によると、ソーシャルコマースは2026年までに米国における小売売上全体の6%近くを占めるようになり、TikTokユーザーの約40%が2024年には少なくとも1度はTikTokで買い物をする予定である。だが、TikTokはeコマース事業の構築に数十億ドルを費やしてきたため、TikTok Shopは2023年に5億ドル(約705億円)の損失を出す見込みだ。
いまのところ、顧客や加盟店はTikTok Shopを受け入れている。ニューコンシューマー(The New Consumer)の12月のレポートでは、TikTok Shopのユーザーの93%が満足していると回答し、92%がTikTok Shopでまた買い物をすると答えた。
タルト(Tarte)やマイジェンマ(MyGemma)などの企業は、偽造品が存在するにもかかわらず、TikTokを受け入れている。11月にタルトはTikTokで12時間のライブストリームを開催、2万5千人以上の視聴者を集めた。その期間中のTikTok Shopの売上の70%は、同プラットフォームでタルトをフォローしていない新規の顧客によるものだった。アナリストはGlossyに対し、2024年には、マーケットプレイスモデルを使用するソーシャルコマースプラットフォームがさらに増えると予想していると述べた。マーケットプレイスでは独立した販売者がプラットフォームによる直接の監視なしにアイテムを出品できる。2022年には、オンライン購入全体の47%がマーケットプレイスで行われていた。
「2024年には、現在TikTokにみられるように、ソーシャルコマースがマーケットプレイスへ移行しようとするだろう」と話すのは、eコマースプラットフォームのプロダクツアップ(Producstup)のマネージドサービス部門グローバルヘッド兼アメリカ地域ソリューションマネージャー、ケイティ・モロ氏だ。「(マーケットプレイスは)消費者にショッピング体験へのシームレスな移行を提供する。広告主はバイヤーのジャーニーをコントロールしたいので、(ソーシャルコマースは)やりたくないという声を聞くが、最終的には需要が勝つと考えている」。
だが、マーケットプレイスの問題は規制の緩さにあることが多い。TikTokはすでにショップでこの問題に直面している。あり得ないほど安い価格で販売される怪しげな商品が氾濫し、TikTok上でどの販売者が信頼できるのか、顧客は疑り深くなっている。
「ソーシャルコマースの最大の課題は顧客体験だ」と述べたのは、TikTok Shopの公式認証パートナーである再販認証企業、ルプリ(LePrix)のCMO、エミリー・ワング氏だ。「非常に多くの種類の小売業者やP2Pセラーが存在するため、ソーシャルコマースはまさに未開の地だ。特にライブショッピング(の台頭)で、どこでも誰もが何でも売ることができる。顧客にしてみれば幅広い商品から選択できるようになるというかなり有益な面もあるが、偽物や悪質な販売者につながる可能性もある」。
また、ソーシャルコマースにいまだ懐疑的なブランドもある。メンズウェアブランド、バック・メイソン(Buck Mason)の創業者、エリック・アレン・フォード氏は、自身のブランドは2024年に向けてソーシャルコマースに一時的に関心を持っているだけだと述べた。
「私たちにはインスタグラムショップがあるが、あまり重要なものではない」とフォード氏は言う。「インディペンデントブランドにとってよいことのように思えるが、私たちにとって主要な取り組みではない」。
美容ブランド、キャンヴァスビューティ(Canvas Beauty)の創業者であるストーミ・スティール氏は、TikTok Shopは同社にとってすでに成功していると語る。9月にTikTok Shopをローンチして以降、プラットフォーム経由の売上は1日あたり2000ドル(約28万円)から10万ドル(約1410万円)以上になった。売れ筋商品であるボディグレーズは、TikTok Shopだけですでに100万ドル(約1.4億円)相当を売り上げている。
「ソーシャルメディア上で販売することで、Eメールのような従来のチャネルでは不可能な動画ファーストの充実したフォーマットで顧客とつながることができる。取引上の『今すぐ購入』ボタンに注力するのではなく、最初に自分たちのストーリーを伝えることができる」とスティール氏は述べた。
だが、スティール氏によれば、すべてが簡単というわけではなかった。
「TikTok Shop戦略を成功させる上でもっとも難しい要素は、そのバイラル性に対応できるかどうかだ」とスティール氏は言う。TikTok Shopの最初の1カ月で同社は売上が毎週倍増、時には毎日倍増した。「出荷時間を犠牲にすることなく夜間の極端な需要に対応するために、ビジネスのほぼすべての部分を再構築しなくてはならなかった。(とはいえ)問題ではあったが、間違いなく結果的にはよかった」。
モロ氏などのアナリストは、2023年11月の時点で16億人以上のユーザーがいるTikTokの人気の力が、2024年にTikTok Shopの成功を後押しすると確信している。
「全体としてソーシャルは、引き続きブランドが顧客とつながる際に利用するトップチャネルにランクされるだろう」とモロ氏は言う。「ブランドは関係構築者としての役割を受け入れている。つながりを強化するためにソーシャルを倍増させることは、次のステップとしては筋が通っている」。
[原文:2024 will be a make-or-break year for TikTok Shop]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)
だが、そこには課題がないわけではない。インサイダーインテリジェンス(Insider Intelligence)によると、ソーシャルコマースは2026年までに米国における小売売上全体の6%近くを占めるようになり、TikTokユーザーの約40%が2024年には少なくとも1度はTikTokで買い物をする予定である。だが、TikTokはeコマース事業の構築に数十億ドルを費やしてきたため、TikTok Shopは2023年に5億ドル(約705億円)の損失を出す見込みだ。
ソーシャルコマースがマーケットプレイスへ移行
タルト(Tarte)やマイジェンマ(MyGemma)などの企業は、偽造品が存在するにもかかわらず、TikTokを受け入れている。11月にタルトはTikTokで12時間のライブストリームを開催、2万5千人以上の視聴者を集めた。その期間中のTikTok Shopの売上の70%は、同プラットフォームでタルトをフォローしていない新規の顧客によるものだった。アナリストはGlossyに対し、2024年には、マーケットプレイスモデルを使用するソーシャルコマースプラットフォームがさらに増えると予想していると述べた。マーケットプレイスでは独立した販売者がプラットフォームによる直接の監視なしにアイテムを出品できる。2022年には、オンライン購入全体の47%がマーケットプレイスで行われていた。
「2024年には、現在TikTokにみられるように、ソーシャルコマースがマーケットプレイスへ移行しようとするだろう」と話すのは、eコマースプラットフォームのプロダクツアップ(Producstup)のマネージドサービス部門グローバルヘッド兼アメリカ地域ソリューションマネージャー、ケイティ・モロ氏だ。「(マーケットプレイスは)消費者にショッピング体験へのシームレスな移行を提供する。広告主はバイヤーのジャーニーをコントロールしたいので、(ソーシャルコマースは)やりたくないという声を聞くが、最終的には需要が勝つと考えている」。
ソーシャルコマース最大の課題は顧客体験
だが、マーケットプレイスの問題は規制の緩さにあることが多い。TikTokはすでにショップでこの問題に直面している。あり得ないほど安い価格で販売される怪しげな商品が氾濫し、TikTok上でどの販売者が信頼できるのか、顧客は疑り深くなっている。
「ソーシャルコマースの最大の課題は顧客体験だ」と述べたのは、TikTok Shopの公式認証パートナーである再販認証企業、ルプリ(LePrix)のCMO、エミリー・ワング氏だ。「非常に多くの種類の小売業者やP2Pセラーが存在するため、ソーシャルコマースはまさに未開の地だ。特にライブショッピング(の台頭)で、どこでも誰もが何でも売ることができる。顧客にしてみれば幅広い商品から選択できるようになるというかなり有益な面もあるが、偽物や悪質な販売者につながる可能性もある」。
また、ソーシャルコマースにいまだ懐疑的なブランドもある。メンズウェアブランド、バック・メイソン(Buck Mason)の創業者、エリック・アレン・フォード氏は、自身のブランドは2024年に向けてソーシャルコマースに一時的に関心を持っているだけだと述べた。
「私たちにはインスタグラムショップがあるが、あまり重要なものではない」とフォード氏は言う。「インディペンデントブランドにとってよいことのように思えるが、私たちにとって主要な取り組みではない」。
美容ブランド、キャンヴァスビューティ(Canvas Beauty)の創業者であるストーミ・スティール氏は、TikTok Shopは同社にとってすでに成功していると語る。9月にTikTok Shopをローンチして以降、プラットフォーム経由の売上は1日あたり2000ドル(約28万円)から10万ドル(約1410万円)以上になった。売れ筋商品であるボディグレーズは、TikTok Shopだけですでに100万ドル(約1.4億円)相当を売り上げている。
「ソーシャルメディア上で販売することで、Eメールのような従来のチャネルでは不可能な動画ファーストの充実したフォーマットで顧客とつながることができる。取引上の『今すぐ購入』ボタンに注力するのではなく、最初に自分たちのストーリーを伝えることができる」とスティール氏は述べた。
TikTok Shop戦略で難しいのはバイラルへの対応
だが、スティール氏によれば、すべてが簡単というわけではなかった。
「TikTok Shop戦略を成功させる上でもっとも難しい要素は、そのバイラル性に対応できるかどうかだ」とスティール氏は言う。TikTok Shopの最初の1カ月で同社は売上が毎週倍増、時には毎日倍増した。「出荷時間を犠牲にすることなく夜間の極端な需要に対応するために、ビジネスのほぼすべての部分を再構築しなくてはならなかった。(とはいえ)問題ではあったが、間違いなく結果的にはよかった」。
モロ氏などのアナリストは、2023年11月の時点で16億人以上のユーザーがいるTikTokの人気の力が、2024年にTikTok Shopの成功を後押しすると確信している。
「全体としてソーシャルは、引き続きブランドが顧客とつながる際に利用するトップチャネルにランクされるだろう」とモロ氏は言う。「ブランドは関係構築者としての役割を受け入れている。つながりを強化するためにソーシャルを倍増させることは、次のステップとしては筋が通っている」。
[原文:2024 will be a make-or-break year for TikTok Shop]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)