誰でもいい。とにかく誰かに、「自分」を認めてほしい――。

現代社会において、そんな考えを持っている人は少なくないかもしれない。

そんな人にピッタリの自動販売機が、金沢21世紀美術館に設置されている。

並んでいるのは、青くてギザギザの丸の中に白いチェックマークがついたもの。

これはいわゆる、"ツイッターの公式マーク"じゃないか!

いや、今となっては"Xの認証バッジ"。Xプレミアムにお金を払い、一定の条件を満たせばゲットできるものになった。

しかしかつて、このマークは、アカウントの持ち主が「なりすまし」ではないと示すものだった。「本物」であることの証明だったのだ。

多くの有名人や企業が、このマークを求めた。申請しても認証されず、涙をのんだ人たちもいる。

そんなマークが、この自販機では1000円で買えるという。サブスクではなく、買い切りである。

予想を遥かに超える売り上げ

自販機から出てくるのは、こんなアイテムだ。

Xの認証バッジそっくりの、アクリルバッジである。

2023年11月30日、Jタウンネット記者の取材に応じた金沢21世紀美術館によると、自販機はコンセプチュアル・アーティスト松田将英さんの作品「Souvenir」。

本作《Souvenir》では、SNSにおける「認証マーク」を模したバッジを誰もが手軽に購入できる自動販売機が設置されます。そして購入者にはそのバッジを身に着ける機会が提供されます。本作は、デジタル社会において、身体を代替不可能なアカウントとして位置付けることで、その真正さや権利を保つものが何であるのかを、ユーモアを交えながら問いかけます。(作品キャプションより)

同館ミュージアムショップの担当者によると、バッジは展示開始から取材時点までに2000個近く売れており、「当初、予測していた売行きを遥かに超えています」。「代替不可能なアカウントである」と認証されたい人は非常に多いようだ。

「(「認証マークの」)SNS上での使い方としては「私は本物です」という表明だと思います。それと同じように、(「認証マーク」バッジを)自分の身に着けることで「私は本物です」という表明とするのが正しい使い方かもしれません。ただし、その時湧き出る疑問や違和感こそが、このバッジに込められたメッセージとなっています」(ミュージアムショップ担当者)

「本物」と認証されたい人、認証された時にどんな気持ちになるか知りたい人は、金沢21世紀美術館へ。「Souvenir」は24年3月17日まで設置されている。

なお、自販機からは100分の1の確率で、金沢金箔を使用した特別仕様のバッジが出るという。