健康食「豆腐」 “食べ過ぎ”でどんなリスク? 摂取時の注意点は? 医師に聞く
豆腐にはタンパク質やビタミン、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれているといわれています。冷ややっこのほか、みそ汁や鍋など、さまざまな料理に使うことができるため、日々食べている人は多いのではないでしょうか。
ところで、豆腐を食べ過ぎると、健康上、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。1日の適切な摂取量や摂取時の注意点などについて、「戸塚西口さとう内科」(横浜市戸塚区)の院長で医師の佐藤孔信さんに聞きました。
腎臓に負担がかかる可能性も
Q.豆腐を食べるメリットについて、教えてください。さまざまな栄養素が豊富に含まれている食べ物といわれていますが、本当なのでしょうか。
佐藤さん「大豆を原料とする豆腐は、『畑の肉』といわれるほど良質なタンパク質を豊富に含んでいます。タンパク質は人間の体をつくる上でとても大切な三大栄養素の一つで、筋肉や臓器、肌、髪の毛、爪などの材料のほか、酵素やホルモンの材料にもなります。
豆腐にはタンパク質以外にも、さまざま栄養素が含まれています。例えば、豆腐に含まれる脂質は『リノール酸』といわれ、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を下げ、善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす特徴があります。
他にも、悪玉コレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に効果的なビタミンEのほか、骨や歯を丈夫にするのに不可欠なカルシウムも含まれています。特に、豆腐に含まれる『イソフラボン』は、女性ホルモンの『エストロゲン』と同様、骨密度の低下を防ぎ、骨そしょう症の予防にも効果的であるといわれています。
豆腐は『木綿豆腐』『絹ごし豆腐』のほか、一度凍らせてから乾燥する『凍り豆腐(高野豆腐)』など、さまざまな種類があります。木綿豆腐と絹ごし豆腐とでは、製造上、木綿豆腐の方が栄養素が凝縮されているのが特徴です。その木綿豆腐を上回る栄養素を含むのが凍り豆腐です。凍り豆腐は乾燥品なので日持ちも良く、栄養価が高いのが特徴です」
Q.豆腐の1日の適切な摂取量について、教えてください。
佐藤さん「1日の適切な摂取量は『100〜150グラム』で、パック入りの豆腐の場合、2分の1丁から3分の1丁が望ましいとされています」
Q.豆腐を食べ過ぎた場合、健康上、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。例えば、カルシウムや鉄分などの栄養素の吸収に影響を与える可能性はあるのでしょうか。
佐藤さん「豆腐に含まれるイソフラボンは、『1日70〜75ミリグラム』が摂取の上限値として設定されています。豆腐150グラム当たりに含まれるイソフラボンは、40ミリグラム前後です。
豆腐を食べ過ぎた場合に有害な健康障害が出ることは、現時点では確認されていませんが、イソフラボンの過剰摂取は、ホルモンバランスを乱す可能性があるため、注意が必要です。
また、カルシウムは、タンパク質やビタミンDと一緒に取ることで、吸収がより促進されるといわれています。例えば、ビタミンDを豊富に含むキノコ類や魚類と一緒に摂取すると、効果的です。
木綿豆腐は絹ごし豆腐よりも鉄分を豊富に含んでいますが、植物性の食品は肉類などの動物性食品よりも鉄分が体内に吸収されにくいのが特徴です。鉄の吸収率を上げるには、ビタミンCや動物性タンパク質を含む食品と一緒に摂取することが効果的です。
豆腐は脂質が少ないほか、さまざまな栄養素が含まれており、血圧やコレステロールの抑制に効果的といえますが、過剰摂取は好ましくありません。肉や魚、卵などの動物性タンパク質も同時に摂取し、バランスの良い食事を心掛けましょう」
Q.持病や体質によって、豆腐の摂取時に注意が必要なケースはありますか。
佐藤さん「腎臓病の人はタンパク質の摂取を制限する必要があるため、豆腐の過剰摂取には注意が必要です。
タンパク質を代謝すると、血液中に老廃物が生じます。この老廃物は、腎臓を通じて体外に排出されるため、タンパク質を過剰に摂取すると、腎臓への負担が大きくなります。先述のように、豆腐にはタンパク質が豊富に含まれるため、過剰摂取は避けるべきです。
腎臓病の中でもさまざまな病態があるので、タンパク質の摂取を制限する際は、主治医の指示に従いましょう」
豆腐を過剰に摂取すると、ホルモンバランスが乱れたり、腎臓に負担をかけたりする可能性があるということです。豆腐を食べる際は、適量を心掛けましょう。