改正旅館業法で宿泊拒否に該当する行為は?

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 ホテルや旅館では、宿泊客が従業員に対して理不尽な要求をしたり、暴言を吐いたりするなどの行為をすることがあります。このような行為は「カスタマーハラスメント」と呼ばれており、社会問題となっています。そんな中、 改正旅館業法が12月13日に施行されることで、ホテルや旅館の事業者が、カスタマーハラスメントに該当する行為をした人の宿泊を拒むことができるようになります。

「過剰なサービスの要求」「不当な要求」などが拒否事由に該当

 厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症の流行期に、「宿泊者に対して感染防止対策への実効的な協力を求めることができない」「いわゆる迷惑客について、営業者が無制限に対応を強いられた場合に、感染防止対策をはじめ、本来提供すべきサービスが提供できない」などの意見が寄せられたことが、旅館業法改正のきっかけになったということです。

 現行の旅館業法では、旅館業の事業者は、公衆衛生や旅行者などの利便性といった国民生活の向上などの観点から、一定の場合を除き、宿泊しようとする人の宿泊を拒んではならないと規定されています。

 12月13日に施行される改正旅館業法では、宿泊拒否事由が追加。宿泊施設の事業者は、宿泊しようとする人が従業員に対し、次のような行為を繰り返す場合に宿泊を拒否することができるようになります。

【新たな拒否事由に該当するものの例】
(1)不当な割引、契約にない送迎など、過剰なサービスの要求
(2)対面や電話などにより、長時間にわたり、不当な要求を行う行為
(3)要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が不相当なものなど

 一方、次のようなケースは、新たな拒否事由に該当しないということです。

【新たな拒否事由に該当しないものの例】
(1)障害のある人が社会の中にある障壁(バリアー)の除去を求める場合
(2)障害のある人が障害を理由とした不当な差別的取り扱いを受け、謝罪などを求めること
(3)障害の特性により、場に応じた音量の調整ができないまま従業者に声をかけるなど、その行為が障害の特性によることが、本人やその同行者に聞くなどして把握できる場合
(4)営業者の故意・過失により損害を被り、何かしらの対応を求める場合(手段・態様が不相当なものを除く)など

 このほか、改正旅館業法により、事業者は、特定感染症の国内での発生期間に限り、宿泊者に対してマスクの着用や消毒液の使用など、感染防止に必要な協力を求めることができるようになります。

 また、同法では、感染症のまん延防止対策の適切な実施や特に配慮を要する宿泊者への適切な宿泊サービスの提供のため、従業員に必要な研修の機会を与えるよう努めなければならないことなどが規定されています。