空き巣のマーキングの実態とは…

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 年末年始になると「空き巣被害」が増えると言われています。よく、空き巣犯が表札に傷をつけたりとマーキングしているという話しを聞いたりします。そこで、実際にそんなことがあるのか、元警視庁公安部外事課捜査官・刑事であり防犯事情に詳しい日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村悠さんに聞きました。

空き巣のマーキングは多種多様 “狙われやすい家”とは…

Q.ずばり、空き巣は表札に傷をつけたりしているのでしょうか。また、その他の手段を持っていたりするのでしょうか。

稲村さん「空き巣などを行ういわゆる“泥棒”によるマーキングは実際にあります。傷をつけたり、シールを張る、ペンで書くといった手法があります。

まず、注意しなければならないのは、空き巣犯だけではなく訪問販売員や悪質な業者によるマーキングもあります。

マーキングは、単独犯であれば自分用のメモとして、グループによるものであれば情報共有として行います。空き巣を生業にしているプロの泥棒であれば、入念な下見を繰り返し、実際に数カ月以上、下見を繰り返す例もあるので、マーキングの内容がアップデートされ、より緻密な情報が蓄積されていきます。

また、表札だけにマーキングをするとは限りません。実際には、目立たない窓枠、玄関ドアの隅、郵便受け、インターホン、電気&ガスのメーター、エアコンの室外機などが挙げられます。

他にも、タギングといってマーキングとほぼ同じ概念の手法がありますが、時には目立たない場所に石を置くなどの目印を付けることもあります。以下にマーキングの印例を記載しますので、参考にしてください。

◆マーキングの例
S/単身▽F/一般世帯(複数人世帯)▽W/女性▽M/男性▽赤/赤ちゃん▽ロ/老人▽ア/子どもが住んでいるという略(小さな子どもがいる場合に使われる)▽◎/入りやすい、狙いやすい
例えば『WS820』だと『女性・単身世帯・8時〜20時まで外出』といった意味を持ちます。

また、シールの場合もあります。色による意味合いは犯罪者側で決めているので一概に同様の意味を持つといった判断はできないため、参考程度に覚えておいてください。『貼った回数』は訪問した回数、『黒』狙いづらい(男性世帯、複数世帯など)、『白』狙いやすい(女性単身、老人など)といった感じです」

Q.空き巣に狙われやすい家の特徴を教えてください。

稲村さん「警察庁が示す『侵入窃盗 発生場所別 侵入口・侵入手段別 認知件数』によると、一戸建てが36%、中高層住宅が4%、その他住宅が9%…となっており、残り半数を『商店などその他』が占めています。

この際の侵入窃盗には空き巣以外にも住民が就寝中に侵入する忍び込みなど他の手口が含まれることには注意していただきたいです。以上の内容から、狙われやすい家は戸建てが多いと言えます。
しかし、高層階でも無施錠の玄関やベランダから侵入する手口も発生していますので注意が必要です。

そして、空き巣犯が狙いやすい家の特徴を以下例示します。

(1)不在の時間が長い世帯
当然ながら、空き巣犯としては狙いやすい家となります。また、不在を示すサインを出しっぱなしにしている家も防犯への関心がないとして狙われやすいです。例えば、電気が点いていない、洗濯物を夜間も干している、郵便物が溜まっているなどです。その他、電気使用量が少ない=電気メーターがあまり回っていないという点も空き巣による判断材料の一つです。古い電気メーターは未だに回転盤が付いているものがあり、判断されやすいので注意が必要です。

(2)単身世帯、高齢世帯、女性世帯
空き巣犯が侵入した際、仮に住民と出くわしても抵抗力が弱いため、空き巣としては障害となる要素が少ないと判断できます。

(3)施錠をしていない
施錠をしていない世帯は未だに多く、空き巣からすれば何の抵抗もなく入れます。アパートや高層マンションでも空き巣の被害があるのは施錠をしていない家があるからといった理由もあります。後述しますが、空き巣は窓を破って入るより、無施錠の玄関口から入るほうが気楽です。気を付けなければいけないのは、玄関だけではなく窓の施錠も必要です。プロの空き巣犯は驚くほど身軽に高層部分に昇っていくほか、上層階のベランダを伝い、下層階のベランダから侵入するといった犯行も容易に行います。玄関、窓など施錠していない家は狙われやすく、防犯上論外といえます。

(4)周囲から見えにくい、騒音がある
高い塀で囲われていたり、旗竿地(はたざおち)で玄関が奥まっている、背の高い植木が多いような家は、空き巣犯からすれば周囲からの視線を気にすることなく犯行が行えます。また、幹線道路や空港などの近くは騒音が多く、窓ガラスを破る際の音も目立ちません。ただし、プロの空き巣犯は驚くほど静かに窓ガラスを破るので、窓を割る音が聞こえるだろうといった油断は要注意です。

(5)侵入する足場がある
空き巣犯は排水パイプや室外機などから容易に上階に昇ることができますが、特に上部に何も置いていない室外機は絶好の足場となります。現に、私が刑事課勤務時に臨場した侵入盗事件や下着泥棒の事件でも、2階が狙われた事件は室外機に足跡が残っていることが多かったです。余談ですが、“大泥棒”と呼ばれる伝説的な泥棒は痩せていて小柄な人物が多いと感じます。

(6)周囲が汚い家
汚い庭やポスト、放置された植木など手入れされていない家は油断が大きいとして狙われやすいです。
『犯罪者はどこに目をつけているか』(清永賢二、清永奈穂/新潮社)で紹介されている天才的と評された大泥棒『猿の義ちゃん』は、堀のらくがきや散らばったゴミ、家の前、その周囲に放置されたままの自転車などを見て、『この家は油断がある、入りやすい』と判断すると指摘しています。もし、皆さんがマンションやアパートを借りる際は、ゴミ捨て場やポスト、駐輪場が汚いところは、まず避けた方がいいです。当然ながら適切に管理されていないと推察されます。

【防犯対策】空き巣犯に狙われなくなるようにする方法

Q.空き巣犯に狙われなくなるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?

稲村さん「これまで述べた狙いやすい家の条件を打ち消していくことが必須です。その上で、防犯上とるべき対策を解説します。

マーキングを見つけたらまず写真を撮り証拠を残しましょう。そして、直ぐに消します。マーキングを消さないと『マーキングされたことに気が付いてない=警戒意識が低い』と見られてしまい、空き巣犯から狙われやすくなります。

通常、空き巣犯は非常に警戒心が高く、マーキングが消された時点で諦めます。しかし、消してもさらにマーキングされた場合は、空き巣犯は懲りずに狙っている証拠です。防犯カメラなど空き巣犯に見せる警戒を行うとともに、最寄りの警察署に相談しましょう。

次に侵入しにくい家を作ることが大切です。一般的に、空き巣犯は玄関や窓などの出入り口から侵入します。無施錠は論外とし、ガラス破りなどの手口で窓からの侵入を試みる空き巣犯ですが、侵入にかかる時間が5分以上かかると諦めるとされています。窓に貼る防犯フィルムや窓自体の強化によりその5分を稼ぐのが狙われにくい家につながります。

その他の防犯対策については以下となります。
(1)防犯ステッカーの貼り付け
(2)防犯カメラの設置
(3)センサーライトの設置
(4)(窓ガラスを割れにくくする)防犯フィルムの貼り付け
(5)補助錠の設置
(6)在宅時の施錠(マンションの高層階があえて狙われる事例も多い)
(7)現金を自宅保管しない

以上は例示ですが、昨今、『闇バイト』による強盗事件も多発しており、空き巣対策が強盗対策にもつながります。

空き巣は12月、1月といった年末年始に向けて増加します。今一度、ご自身が『狙われやすい家』なのか振り返り、きちんと対策を行い、ご自身やご家族、大切な人を守るようにしてください」