茨城県つくば市は、1987年に3町1村が合併して誕生しました。科学技術の振興と高等教育の充実、東京都の過密対策を目的に、国家プロジェクトである筑波研究学園都市として建設。現在では約2万人の研究従事者を有する日本最大級のサイエンスシティとなっています。2005年には、つくばエクスプレスが開業。都心へのアクセスが軽快な住宅拠点としても注目されています。今回は、つくば市の魅力と住宅事情について紹介します。

つくば市の特徴

つくば市は、東京から北東に約50キロメートルの茨城県南西部に位置します。総面積は283.72平方キロメートルあり、茨城県内では4番目の広さ。627.53平方キロメートルある東京23区の半分弱の面積となります。

市の北側には筑波山、東側には霞ヶ浦があり、これらは国定公園にも指定されています。市域の多くは、関東ローム層に覆われた平らな地形で、つくば市中心部のすぐ東側を南北に流れる河川を利用した水田などによってのどかな田園風景が広がっています。

筑波大学のキャンパス(画像素材:PIXTA)

1963年に研究・学園都市の建設地を筑波地区とする閣議了解となり、1966年より用地買収がスタート。1969年に筑波研究学園都市の総合起工式が行われ、1973年には筑波大学が発足しました。そののち、常磐自動車道が開通し東京と直結。1985年には国際科学技術博覧会であるつくば万博が開かれました。

そして1987年に大穂町、豊里町、桜村、谷田部町が合併し、つくば市が誕生。東京駅-つくば間の高速バスの運行もスタートしました。つくば市の誕生の翌年1988年に筑波町、2002年には韮崎町も編入し、現在も発展を続けています。

科学万博記念公園(画像素材:PIXTA)

街のさらなる発展の契機となったのが、2005年のつくばエクスプレス線の開業です。鉄道路線が整備されるとともに沿線で鉄道と一体となった街づくりが行われ、土地区画整理事業により新駅を中心に新たな街区が整備されました。

万博記念公園駅(筆者撮影)

1990年に16万8,466人だったつくば市の人口は、つくばエクスプレス線開業に伴う沿線開発もあり、2023年7月1日時点で25万5,152人と大きく伸びています。県庁所在地である水戸市に次ぐ県内2位の人口数を誇り、2023年1月1日時点の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査」における人口増加率は初の全国1位に。いずれ水戸市の人口数を追い抜く可能性もある、勢いのある注目の街です。

研究学園駅の大規模マンション(筆者撮影)

【つくば市のデータ】
総面積…283.72平方キロメートル
人口…25万5,152人
世帯数…12万273世帯
※県統計課「茨城県常住人口調査」(2023年7月1日時点)

先進的な街づくりが魅力

筑波研究学園都市として開発が進められてきたつくば市は、研究学園地区、つくばエクスプレス沿線地区、既成市街地地区、産業系市街地地区(工業団地)の大きく4つにゾーニングされています。ここでは産業系市街地地区以外の3つのゾーンを見ていきましょう。

まずは研究学園地区。つくば市の中央部の約2,700ヘクタールを研究学園地区として開発し、国の試験研究・教育施設や商業・業務施設、住宅施設などを計画的に配置しています。 研究学園地区は、さらに都心地区、研究・教育施設地区、住宅地区の3つの地区に分かれており、計画的に整備されています。

つくば市将来都市構造図(出典:つくば市都市計画マスタープラン2015)

研究学園地区の特徴はペデストリアンデッキなどの歩行者専用道路。たとえば、つくば公園通りは、筑波大学から赤塚公園まで至る幅員10から20メートル、延長約10キロメートルというスケール。その沿道には、公園や公共施設、商業施設、研究施設、住宅などが配置されています。

つくば駅の市街地の街並み(筆者撮影)

主に新住宅市街地開発事業で整備された住宅地では各地区内に幅員約8メートルのペデストリアンデッキが整備され、そのペデストリアンデッキ網沿いに公園や学校、児童館、幼稚園、サブセンターなどが配置。地区の人々の主要動線となっています。

住宅街の中にある公園(筆者撮影)

実際に街を訪ねると、歩行者専用道路があり、公園も点在していて緑も豊富。歩いていて心地よさを感じます。教育関連施設も計画的に整備されており、子どもの通学なども安心感があります。

研究学園地区をネットワークしている歩行者専用道路は、総延長48キロメートルにも及びます。この研究学園地区は、つくば駅を中心に飛び地も含め南北に広がっています。

続いて、つくばエクスプレス沿線地区。「大都市地域における宅地開発及び鉄道整備の一体的推進に関する特別措置法(宅鉄法)」に基づき、UR都市機構と茨城県が施行者となりつくばエクスプレス線の整備と沿線地域のまちづくりが広域的に一体で進められています。沿線駅としては、みどりの駅、万博記念公園駅、研究学園駅が開業しています。

研究学園駅の住宅街(筆者撮影)

街ごとに開発エリアの広さや範囲が異なっていますが、どの街も歩道の整備された美しい街区をベースに市街化が進行中です。

万博記念公園駅の街並み(筆者撮影)

そして、筑波研究学園都市が建設される前からあった既成市街地地区。北条地区、小田地区、大曾根地区、吉沼地区、上郷地区、栄地区、谷田部地区、高見原地区などがありますが、どの街も駅から距離があります。

人口流入が進んでいるのは先に挙げた研究学園地区とつくばエクスプレス沿線地区です。

つくば駅周辺の街区(筆者撮影)

2003年に人口18万7,686人、世帯数7万1,310世帯だったつくば市は、2022年には人口25万1,208 人、世帯数11万4,092世帯に。ここ数年も着実に人口・世帯数ともに増加しており、前述の通り2023年1月1日時点での人口増加率は全国1位となりました。その理由は、計画的な街づくりや都心アクセスだけでない魅力がつくば市にあるからでしょう。

つくば市の男女別人口、世帯数の推移 ※各年10月1日時点(出典:統計つくば令和4年度版)

「安心・便利な日々の暮らし」がかなう街

『令和4年(2022年)度つくば市民意識アンケート結果』によれば、つくば市に「住み続けたい」と答えた人は、51.2%。「どちらかといえば住み続けたい」32.6%を加えると83.8%の人が住み続けたいと考えています。
住み心地については、「住みやすい」と答えた人が38.0%、「どちらかといえば住みやすい」と答えた人が44.9%。8割を超える人が住みやすいと感じています。

研究学園駅の駅前(筆者撮影)

住みやすいとする理由としては、「日常生活が便利」と答えた人が58.5%と最も多く次いで「豊かな自然」が57.1%とこの2項目が突出しています。「住み慣れている」が45.8%で続き、「居住環境が良い」が44.8%、「暮らしていて安全」が34.9%、「通勤・通学先が近い」が31.0%、「教育・文化環境が良い」が30.1%です。

「充実した医療機関・福祉サービス」も28.5%と高い数値となっています。生活利便性と豊かな自然に加え、居住環境や教育・医療など日々の生活に多くの人が求める便利で安心感のある暮らしがつくば市で評価されています。

筑波山(画像素材:PIXTA)

豊かな自然を代表するのが、日本百名山の一つである筑波山です。「西の富士、東の筑波」とも称された美しい山は、標高877メートルと低く登山が楽しめます。山頂へのルートとして、ロープウェイやケーブルカーも利用できるので気軽に家族で登れるのもうれしいところ。山頂には、筑波山を御神体として仰ぐ古社、筑波山神社があり、山頂からの眺望は関東一円の景色が広がります。また、筑波山周辺には温泉施設もあり日帰り入浴も可能です。

筑波山のロープウェイ(画像素材:PIXTA)

かつて、筑波には土浦駅から岩瀬駅を結んでいた鉄道路線である1918年開通の筑波鉄道が通っていました。自家用車の普及とともに1987年に廃線に。その後、廃線跡はつくば霞ヶ浦りんりんロードとして生まれ変わりました。自転車・歩行者専用の道路で高低差が少なくトイレや休憩所も整備されているので、サイクリングが楽しめます。桜川市犬田と土浦市川口間約40キロメートルが結ばれており、霞ヶ浦方面へ出かけられます。

つくば駅近くの公園(筆者撮影)

中心市街地の周りに緑豊かな公園があるのもつくば市の特徴です。洞峰公園や中央公園、つくば万博の跡地には科学万博記念公園など大きな公園が点在。さらに市内には、ゴルフコースも多数あります。

洞峰公園(画像素材:PIXTA)

サイエンスの街でもあるつくば市には、世界最大級のプラネタリウムのあるつくばエキスポセンターなど子どもの好奇心を育む多彩な施設があります。宇宙開発拠点でもあるJAXA筑波宇宙センター、産業技術のショールームであるサイエンス・スクエア つくば、さまざまな植物を展示している筑波実験植物園、食と農の科学館のほか、筑波大学のキャンパスもあり、「教育・文化環境が良い」と評価する人が多いものうなずけます。

つくばエキスポセンター(筆者撮影)

次に日常生活の便利さについて見てみましょう。研究学園地区やつくばエクスプレス線沿線地区の街を訪ねるとつくばの暮らしやすさが実感できます。

駅前には、スーパーマーケットや商業施設が立地。幹線道路も整備されているので、車や自転車の移動もスムーズです。つくば駅前にはトナリエつくばスクエアやBiViつくば、研究学園駅には北関東最大級の大型複合商業施設であるイーアスつくばをはじめ、コストコホールセールつくば倉庫店、イオンモールつくば店など、さまざまな商業施設が立地しています。

研究学園駅にある大型複合商業施設イーアスつくば(筆者撮影)

ホームセンターを備えた複合ショッピングセンターの山新グランステージつくばのほか、家電量販店や飲食店などもロードサイドに多く出店しており、週末には家族で買い物も楽しめます。クリニックなどのほか、筑波大学附属病院や筑波メディカルセンター病院があるなど医療施設も充実。生活関連施設の充実は、つくば市で暮らす大きな魅力と言えるでしょう。

つくば駅(筆者撮影)

2005年に開業したつくばエクスプレス線は、つくば市の交通利便性を大きく向上させました。つくば駅-秋葉原駅間は快速利用で最短45分。つくば市内には、つくば駅、研究学園駅、万博記念公園駅、みどりの駅の4駅が誕生しました。つくばエクスプレス線は、良好な都心アクセスに加え、駅構内などでバリアフリーかつ利用しやすいユニバーサルデザインを採用していて誰もが使いやすくなっています。

新築分譲マンション供給はつくば駅周辺で活発

つくば駅周辺で分譲中の大規模マンション(筆者撮影)

つくば市の住宅事情を見てみましょう。

つくば駅周辺などでは新築マンション分譲が活発に行われています。駅を中心に街区が整備されており、敷地規模が大きいのが特徴。総戸数100戸を超える大規模マンションの分譲が目立ち、なかには500戸を超える規模のマンションも。ラウンジやゲストルームなど多彩な共用施設を有する物件もあります。

みどりの駅の戸建て街区(筆者撮影)

また、土地区画整理事業が進められた沿線駅では、新築戸建ての分譲も活発です。つくばエクスプレス線の開業当初は駅から近い戸建て街区が目立ちましたが、現在は駅から離れた街区の戸建て分譲が中心になっています。

万博記念公園駅のマンション開発予定地(筆者撮影)

新築マンションの価額は駅や立地で差異があるものの、3LDKタイプが3,000万円台で購入できるマンションがあるなどリーズナブル。広さを求める家族にとって選択肢が豊富にあります。つくば市は、新築マンションを選びやすい街と言えるでしょう。

中古マンションの流通も、ストックの多いつくば駅中心に活発です。新築マンションと併せて検討すると良いでしょう。

研究学園駅の公園と戸建て街区(筆者撮影)

新築戸建てについては駅徒歩圏の分譲は限られています。駅徒歩圏で戸建てを検討するなら、中古戸建ても選択肢に入れると良いでしょう。街が新しいので、築年数の浅い中古戸建ても流通しています。駅から近い戸建ては人気もあり、つくば駅や研究学園駅周辺で探すなら5,000万円台~6,000万円台程度の予算は見ておいたほうが良いでしょう。

次に、つくば市内の筆者おすすめの街を2つ紹介します。

当駅始発が利用可能なつくば駅

つくば駅の街並み(筆者撮影)

一つ目は、つくば駅です。

つくば駅前(筆者撮影)

つくば駅の魅力としてまず挙げられるのが、つくばエクスプレス線の始発駅でありスムーズな都心アクセスが可能なこと。区間快速利用により通勤時も約45分で秋葉原駅へ到着します。移動時間はある程度かかるものの、時間帯によっては座って通勤も可能です。

つくば駅の商業施設(筆者撮影)

つくば駅周辺は研究学園地区として開発が進められており、ペデストリアンデッキを配した歩行者と自動車を分離した動線など安心の街づくりが魅力。トナリエつくばスクエアをはじめとする商業施設、中央公園などの憩いのスポットが街なかに豊富にあります。

つくば駅前の広場(筆者撮影)

つくば市立中央図書館やつくば文化会館アルスといった文化施設や小学校・中学校などの教育関連施設も充実。つくば駅を最寄り駅とする筑波大学では、子ども向けのイベントも行われています。子育て環境としてもつくば駅周辺地域は魅力的でしょう。

つくば駅周辺で建設中の大規模マンション(筆者撮影)

つくば駅周辺では、新築分譲マンションの供給が活発で3LDKタイプが3,000万円台から検討可能です。また、好立地の中古マンションストックも豊富にあるので、新築と中古を併せて検討することをお勧めします。

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研究学園都市駅周辺は大型商業施設が充実

研究学園駅(筆者撮影)

二つ目は研究学園駅です。

研究学園駅周辺は、つくばエクスプレス線沿線地区の街づくりとして開発が進められています。駅周辺にマンションやホテルなどが立地するほか、つくば市役所の庁舎も研究学園駅から徒歩圏内に立地します。

つくば市役所(筆者撮影)

研究学園駅の特徴は、駅周辺にイーアスつくばやコストコホールセールつくば倉庫店など大規模な商業施設が立地すること。家電量販店やホームセンターなども生活圏にあり、日用品も買い物は身近で済ませることができます。住宅街と併せて公園も整備されており、憩いの場所も豊富。生活利便性が高く暮らしやすいのは、研究学園駅周辺に住む魅力でしょう。

筑波山も見える研究学園駅の街並み(筆者撮影)

研究学園駅徒歩圏の新築マンションや新築戸建て分譲は近年少なくなっており、中古物件が中心となります。つくば駅周辺と比べると過去の分譲マンションの供給も少なく、流通件数は限定的。中古マンションでは、3LDKタイプが3,000万円台から検討できます。中古戸建ては土地面積が50坪~60坪の広い敷地のものが多く、価額帯は5,000万円台超に。比較的新しい街なので、築年数が浅い戸建てが流通しています。

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物件価格がリーズナブルな万博記念公園駅、みどりの駅

みどりの駅前(筆者撮影)

つくばエクスプレス線沿線では、万博記念公園駅、みどりの駅周辺といった街でも新築マンション分譲や戸建て分譲が行われています。つくば駅や研究学園駅に比べると駅の利用者数が少なく街づくりはこれからですが、スーパーマーケットやドラッグストアなどの生活関連施設は整っています。

2018年には、みどりの駅から徒歩約5分の場所に小・中一貫で学習するみどりの学園義務教育学校が開校。先進的ICT教育や小1からの英語教育を行う学校として注目され、多くの生徒が通学しています。そのため、新たにみどりの南小学校、みどりの南中学校の新設が決定し、2024年4月の開校に向けて準備が進められています。

みどりの駅前の街並み(筆者撮影)

みどりの駅周辺や万博記念公園駅周辺の魅力は、つくば駅と比べ価額がリーズナブルなこと。万博記念公園駅の中古マンションのなかには、専有面積80平方メートル台の3LDKタイプが3,000万円前後で売り出されています。

地価の安さでも注目されており、令和5年都道府県地価調査の茨城県内住宅地の地価上昇率1位、2位の場所はみどりの駅が最寄り駅となっています。コストパフォーマンスの良さが評価されているようです。

都市と自然の魅力を享受できる先進的な街

つくば駅にある中央公園(筆者撮影)

人口増加が示すように、つくば市には多くの家族層が流入しています。価額の値頃感に加え都市と自然が一緒になった先進的な街づくりが評価されているのでしょう。図書館や科学館など子どもの知的好奇心を広げる場が豊富な点も魅力的です。

筑波大学のキャンパスの風景(筆者撮影)

留意すべきポイントとしては、街のスケールが大きく生活には車が必須であるということ。つくば駅周辺ではバス網も充実していますが、車があったほうが暮らしやすいでしょう。コストコホールセールつくば倉庫店やイーアスつくばのある研究学園駅周辺などでは、車移動の混雑が起こることもあるようです。

ロボット実験区間の表示(筆者撮影)

2022年3月10日に行われた国家戦略特別区域諮問会議において、つくば市はスーパーシティ型国家戦略特別区域として区域指定されることが決まりました。

スーパーシティとは、AIやビッグデータなどの未来技術を活用し、暮らしを支えるさまざまな最先端サービスを地域に社会実装していく取り組み。「住みたい、住み続けたい」と感じるより良い未来社会を実現することを目指しています。サイエンスシティとして発展したつくば市なら、生活の中の「困りごと」をテクノロジーで解決していく街へと発展していくでしょう。

コロナ禍によって、働き方やライフスタイルが変化している今、つくば市での暮らしに注目してみてはいかがでしょうか。

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