【駅前広場や駅直結タワーマンションも誕生予定。再開発で生まれ変わる名鉄瀬戸線「三郷」駅前地区】
尾張旭市三郷町にある「三郷」駅は、瀬戸市や名古屋市を結ぶ交通拠点です。市内で最も早く発展してきた場所として、尾張旭市随一の商業地域でありながら「愛知県森林公園」の自然も身近に感じられる場所。現在、再開発によって、駅前広場の整備やタワーマンションの建設など、新しいまちづくりが進められています。一体、どのように生まれ変わるのか、レポートします。
住み心地の良いベッドタウン尾張旭市
尾張旭市は愛知県の北部に位置し、名古屋の中心部から直線距離で15kmと近く、名古屋市のベッドタウンとして発展してきた経緯があります。また、北部を中心にため池や緑地が点在した水と緑が豊かなまちでもあります。2004年には、WHO(世界保健機構)西太平洋地域健康都市連合に参加し、「健康都市宣言」を行いました。交通の便がよく、程よい距離に買い物施設がある住みやすいまちとして発展を続けています。
「三郷」駅周辺は交通の結節点
尾張旭市内には名鉄瀬戸線の駅が4駅あり、「三郷(さんごう)」駅は最も東部に位置する駅です。準急と急行が停車し、名古屋市の繁華街「栄町」駅からは約20分~30分で到着します。また、駅周辺は南北を走る県道75号春日井長久手線(森林公園通り)と、東西を走る県道61号名古屋瀬戸線(瀬戸街道)の主要道路が交差している交通結節点となっています。
「三郷」駅前の昔と今
「三郷」駅が開業したのは1905年。当時、尾張旭市では農業を中心とした営みがほとんどでしたが、瀬戸市で陶磁器工業が盛んになると、昭和初期に三郷地区にも陶磁器工業ができるなど、第2次産業が発展しました。1970年に尾張旭市が誕生した頃からは、名古屋市に隣接する住宅都市として人口が増加しています。「三郷」駅から車で5分ほどの距離にある「愛知県森林公園」には、広大な芝生広場や植物園、児童遊園地などがあり、豊かな自然に囲まれた中でゆっくりと余暇を過ごせるなど、交通、商業、自然のバランスがとれた住みやすいまちであることも、人口が増加した要因かもしれません。かつて、三郷駅南には「三郷市場」があり、にぎわいのあるまちを形成しています。
しかし、「三郷市場」の閉鎖や、商店街の後継者不足などにより、以前より地域の商業活力は低下しています。ほかにも、建物の老朽化、市街地の更新が進んでいないこと、駅前広場などのコミュニティにつながる公共施設が少ないこと、通学・通勤などの駅利用者の送迎車による渋滞、駅が主要道路に隣接していることによる踏切渋滞の慢性化や危険性があるなど、多くの課題を抱えています。
そこで、時代に合った新しいまちづくりをしていこうと機運が高まり、「尾張旭市都市計画マスタープラン」による都市づくりの方針に沿ったまちづくりワークショップが2009年に開催され、駅前を拠点にした新しいまちづくりが進められています。
目指す将来像はコンパクトなまちづくり
尾張旭市で策定した「尾張旭市都市計画マスタープラン」では、都市づくりのテーマを「ともに育てる 笑顔とうるおい あふれるまち」としています。「三郷」駅周辺は隣の「尾張旭」駅周辺と共に、尾張旭市の中核となる「活力拠点」と位置づけられ、商業・業務・文化等の都市機能を充実させることや交通機能の強化が図られています。
「三郷駅を拠点に住・商・工が調和し 豊かなコミュニティを育む 誰もが住みたくなるまち」を地域の目標にしており、駅周辺で歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりを進めています。具体的なイメージとしては、駅前を高齢者や子育て世代に配慮したバリアフリー化し、にぎわいあふれる商業系施設の集積や都市型住宅の建築も見据えた、まちなか居住の再開発です。
(図「東部地域の取り組み方針」)
駅を核とした「三郷駅前地区第一種市街地再開発事業」が本格始動!
現在、尾張旭市の「活力拠点」となる「三郷」駅前で再開発が進められています。
はじまりは先述した2009年の「まちづくりワークショップ」です。2011年に「三郷駅前周辺整備検討会(発起人会)」の設立以降、「三郷駅周辺まちづくり協議会」の設立、調査検討を経て、2019年に「三郷駅前地区市街地再開発準備組合」が設立され、再開発の計画が決定しました。
そして、2023年7月に「三郷駅前地区第一種市街地再開発事業」が愛知県知事より認可を受け、再開発組合が設立、いよいよ事業開始となりました。事業協力者には「三菱地所レジデンス株式会社」と「株式会社フージャースコーポレーション」が選定されています。
対象地区は尾張旭市三郷町栄の一部にあたる一角で、北側に名古屋鉄道瀬戸線、南側に名古屋瀬戸線(瀬戸街道)、西側に玉野川森林公園線(森林公園通り)、東側に市道三郷東栄1号線に囲まれた地区です。かつて「三郷市場」があった辺りで、現在は「三郷」駅の南にある駐輪場や駐車場が辺りです。施工地区の面積は約1.1haで、商業施設や駅前広場、道路、都市型住宅などが整備される複合開発になります。
今後は、2024年度に権利変換計画の認可を受けたら解体工事に着手し、2027年度末に竣工する予定です。
駅前広場を中心とした3棟を建設
再開発では主に、新たな駅前広場を整備し、広場の周囲に3棟の施設を建てる(西側にA棟、北東部にB棟、南東にC棟を配置)ことになります。A棟は鉄筋コンクリート造と鉄骨造の地上23階建のマンション、B棟は4階建の立体駐車場で、約260台を収容、C棟は1階が駐車場、2階と3階が商業施設となる予定です。
A棟は名鉄瀬戸線沿線初の駅前タワーマンションに
A棟は1階から4階までが商業・業務・公共公益施設・駐輪場になり、1階と2階の駐輪場は合わせて約750台の収容を予定しています。5階から23階は約130戸の住宅が入り、瀬戸線沿線で初となるタワーマンションが建設されることになります。商業だけでなく、暮らせるまちとして、駅前のさらなるにぎわいが見込まれます。
周辺の街並みと融合する歩行者通路
施設の建設と合わせて、快適性を確保した道路整備も行われます。それぞれの建物の1階部分には、歩道と一体化したオープンスペースが作られ、2階には「三郷」駅と直結するデッキが設けられます。駅前広場の歩道は幅6m以上、2階デッキは3m以上の幅に整備され、安全性も確保した歩行者空間が形成されます。
対象地区の東にある三郷駅前線は駅前広場への連絡動線として、幅員15mの都市計画道路が新設されるほか、既存の道路に歩道が新設されるなど、快適性と安全性がさらにアップします。
市民協働のまちづくりで「三郷」駅前が尾張旭市の顔となる
尾張旭市ではハード面の強化だけでなく、ソフト面のまちづくりも進められており、「三郷」駅と周辺地域が魅力的で市民に愛される場所になるようにと、市民参加型のワークショップや社会実験、オンラインフォーラムなどが開催されています。参加した市民を「35(さんごう)フレンズ」と呼び、市民協働でまちづくりをすすめている様子がわかります。今後、駅前広場での地域交流や地域の活力創出などに期待ができます。
2027年、新しい「三郷」駅がスタートする予定です。商業のまちとして発展してきた歴史を受け継ぎながら、新たなにぎわいを生み出す尾張旭市の“顔”となっていくことが期待できます。