磐田、J1自動昇格へ負けられない「ラスト3」 立ちはだかる“ライバル清水の壁”…残り1枠を巡り運命の東京V戦へ【コラム】
シーズン残り3試合、昇格争いのライバル3位磐田が4位東京Vと直接対決
J2はFC町田ゼルビアがロアッソ熊本に勝利して、悲願のJ1昇格を確定させた。
その一方で、2位の清水エスパルスがいわきFCに7-1の大勝。東京ヴェルディは破竹の快進撃を続けていたジェフユナイテッド千葉に0-2から終盤の3ゴールで逆転勝利を飾った。
ジュビロ磐田はアウェーで徳島ヴォルティスと対戦。前回ホームで敗れた相手に対して、押し込まれる流れが続いたなかでも、前半に2本のカウンターで2-0とすると、後半の立ち上がりに3点目を奪取。ジャーメイン良のポストプレーから右サイドに展開して、鈴木雄斗のクロスに松本昌也が飛び込んで合わせた。シーズン終盤まで来たら内容より結果とよく言われるが、厳しい戦いの中にも横内昭展監督が率いる磐田の狙いが出た試合でもあった。
前半のボール保持率は磐田が29%で、シュート本数も徳島が3倍を数えるなど、磐田が本来やりたいサッカーからすると、決して理想的な試合ではなかった。ボランチの鹿沼直生はそれを認めたうえで「チームとして、もちろん高いラインでできたらいいんですけど、そこで分裂せずに統一してできたということで、ゼロで抑えられたところを見れば良かった」と振り返る。
すべて狙いどおりに徳島の攻撃を跳ね返せていたわけではない。2点目の直前にはバックラインの処理ミスから守護神・三浦龍輝のビッグセーブに救われるシーン、さらにはセンターバックのリカルド・グラッサがゴールマウスの手前でクリアするなど、紙一重のシーンが多く、全く違うスコアになってもおかしくない試合内容だった。それでも粘り強く、終わってみれば3-0で勝利したことの価値は高い。
アウェーの地で、徳島のボールを握る能力の高さを考えれば、高い位置からプレスをはめてショートカウンターに持ち込んだり、逆に自分たちが押し込んだりというのは簡単ではない。そうしたなかでも「カウンターからチャンスを作れるのは分析のところで分かっていた」と鹿沼が語るように、徳島の背後を狙うというのはトレーニングで積んできたという。
ただ、押し込んでくる相手の背後を狙うのは対戦相手にしたら当然のこと。徳島戦の磐田が素晴らしかったのは、縦に速い攻撃にも、厚みと迫力があったことだ。3点目のゴールを決めた松本は「徳島戦は前を意識したプレーを増やしていこうと言われていて。長い距離を走って行くのは2週間やってきて、それが得点の場面でも出たんじゃないかと思います」と語る。
横内監督も「2週間空いたところで、前に入った時のダイナミックさだとか、長い距離を走るだとか、そういうところは意識してトレーニングをやりました。それをやるにはかなりのスプリントをしないといけないし、きついと思うんですけど、それを出さないと得点は生まれない」と語り、象徴的な3点目のゴールを評価した。
虎視眈々と奮起狙う18歳ストライカー
勝ち点3という結果に加えて、腰の怪我と肉離れで長く試合に絡めていなかった藤原健介が後半途中からボランチに入り、クリーンシートでの勝利に貢献。藤原は「立て続けに怪我してしまって、チームに迷惑をかけたし、自分にもショックな怪我だった」というが、その意味でも「この2週間は本当に自分の最後のチャンスだと思ってやっていた」と語る。
筆者は若手トリオの古川陽介、藤原健介、後藤啓介を合わせて“三介”と呼んでいるが、ここまで古川の活躍や18歳の後藤の成長も見られたところに、藤原が戻ってきて3人が揃ったことは最終盤に向かううえでの明るい話題だ。藤原も「3人が出たらサッカーも変わると思うので。相手も嫌だろうし、そういったところで最初からこの3人が使われるようになったらいいのかなと思います」と語る。
この試合は3人の中でただ1人、出場がなかった後藤は、コンディション不良から回復してきたファビアン・ゴンザレスが5枚目のカードとして出る前に、FWのライバルでもある“ラッソ”を握手で送り出した。横内監督は「悔しさは多分あると思います。逆にないとおかしい。ただ、違う選手が出たとしても、チームの勝利に対して彼は貪欲というか。そういう態度でいてくれるというのは嬉しい」と語る。
東京Vとの前回対戦時(アウェー)はスコアレスドローだったが、奇しくも18歳の後藤にとっては負傷交代で悔しい思いをしたカードでもある。「俺が決めます」と意気込んでいたダービーではビッグマッチでの強さを発揮できなかったが、東京Vを相手に磐田の勝利に導くゴールを決めることができるか。
2位の清水は18位の熊本、21位の大宮アルディージャ、15位の水戸ホーリーホックとの3試合にすべて勝てば、磐田と東京Vの試合結果に関係なく、自動昇格が決まる。磐田の山田大記は徳島戦前に「4試合すべてに勝って、プレッシャーをかけていくしかない」と語っていたが、その1つ目に勝利した。次は東京Vとの大一番に挑む。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)