「ロケラン搭載のロボット犬」をアメリカ海兵隊がテスト中
アメリカ海兵隊は都市部で装甲車両を遠隔攻撃するための新しい兵器として、「ロケットランチャーを装備したロボット犬」の運用をテストしています。
DVIDS - News - Marines test emerging technologies at The Combat Center
https://www.dvidshub.net/news/456001/marines-test-emerging-technologies-combat-center
https://www.thedrive.com/the-war-zone/marines-test-fire-robot-dog-armed-with-rocket-launcher
アメリカ海兵隊は、口径66mmの使い捨て対戦車ロケットランチャーであるM72を搭載したロボット犬の運用をテストしています。無人で動作可能なロボット犬に武器を搭載するというアイデアは数年前から存在しており、ボストン・ダイナミクスなどのロボット企業6社は「自社ロボットを武器化しない」と誓約する公開書簡を発表しました。
銃器装備の犬型ロボットが登場、「来るべき時が来た」と海外紙 - GIGAZINE
しかし、その後もロボット犬の軍事運用は進められており、アメリカ海兵隊は対戦車ロケットランチャーを搭載したロボット犬の開発を進めています。アメリカ海兵隊の開発するロケットランチャー搭載ロボット犬について、The War Zoneは「過去に中国で市販された武器搭載ロボット犬に似たものをベースとしているようだ」と報じています。
カリフォルニア州のトゥエンティナイン・パームズにある海兵隊空地戦闘センター(MCAGCC)の戦術訓練および演習管理グループが、2023年9月にM72を搭載したロボット犬の概念実証デモンストレーションを実施しました。テストの様子は以下の動画でチェックできます。
U.S. Marines test fire the M72 LAW with a Robotic Goat - YouTube
アメリカ海兵隊が運用するロボット犬とその能力の詳細はほとんど明かされていません。しかし、概念実証デモンストレーションの様子を見ると、ベースとなるロボット犬は中国のUnitree Go1であることがわかります。なお、Unitree Go1はオンライン上から簡単に購入可能で、公式サイトではUnitree Go1のベースモデルであるGo1 Airが2700ドル(約40万円)、高性能センサーを搭載したGo1 Proが3500ドル(約52万5000円)で販売されています。
人間と並ぶとこれくらいのサイズです。
片手で持ち上げることも可能。
おねだりポーズもできます。
横から急に蹴られても自動でバランスを取って倒れません。
このUnitree Go1に搭載されるのは、M72ロケットランチャー。ただし、概念実証デモンストレーションなので、使用するのは21mmロケット弾を発射可能な訓練用のM72ASです。なお、M72ASは通常の66mmロケット弾を発射するM72の一般的な使用感やパフォーマンスを再現した訓練用ロケットランチャー。
M72ASを発射
別アングルから見るとこんな感じ。
銀色のパーツ部分でM72が固定されており、ロケットランチャー本体を取り外すこともできます。
ロケットランチャーを外した状態だとこんな感じ。マウント部分についてThe War Zoneは、「M72を保持・発射するためのマウントと、GoProカメラが搭載されており、他にもカメラや照準レーザー、その他のアクセサリを取り付けることができるレールがあります」と説明しています。
アメリカ海兵隊は概念実証デモンストレーション動画の中で、このロボットをなぜか「ロボットヤギ」と呼んでいますが、「一般的に、この種のロボットは『ロボット犬』と呼ばれますが、なぜ海兵隊がこの呼称を選んだのかは不明です」とThe War Zoneは指摘しました。
ロケットランチャー搭載ロボット犬の開発責任者である海兵隊のアーロン・サファディ中尉は、「現場の兵士に兵器システムを操作させたり安全装置を解除させたりする代わりに、リモートトリガー機構を採用することで、すべての動作を遠隔操作できるようにしました」と述べました。
また、戦術訓練および演習管理グループは「これにより、海兵隊員が物陰に隠れたため、兵器システムのみを前進させることができるようになります。つまり、海兵隊員は安全な場所から安全装置を操作し、兵器システムを目標地点に近づけることができるようになるわけです」と説明しました。
M72のような対戦車ロケットランチャーを用いた装甲車両への攻撃は、特に都市環境では至近距離から実施されることがあるため、非常に危険な攻撃であるとThe War Zoneは指摘。また、目標に近づくことができればロケット弾が当たる可能性も高まります。そのため、The War Zoneは「兵士なしでロケット弾を搭載・発射できるロボット犬をリモートで操作するという手法は理にかなっている」と述べました。
また、ロケットランチャーや銃火器で武装したロボット犬は、友軍の前方を偵察することにも利用でき、脅威を発見した際には即座に交戦することもできるとThe War Zoneは指摘。加えて、ロボット犬ならば人間が出入りできないような空間への侵入もできるため、密集した都市環境を移動する際などにも役立つ可能性があるそうです。
なお、アメリカ軍では複数の部門で既にロボットの運用が行われており、Ghost Roboticsの四脚ロボットQ-UGVや、ボストン・ダイナミクスのSpotが偵察・警備任務に利用されています。ただし、どちらも今回のロボット犬とは異なり非武装です。
Vision 60 Swamp Dog Q-UGV: Tyndall AFB 24x7 Perimeter Autonomous Patrol - YouTube
一方、中国人民解放軍は武器を搭載した四脚ロボットの概念実証を行っています。
ROBO-SOLDIERS China unveils ‘Robocop’ exo-skeletons, gun wielding killer robot dogs - YouTube