HarmonyOSによって叶えられる未来の暮らし。ファーウェイのスマートカー&スマートホーム取材記
HarmonyOSを中心としたエコシステムのなかで、スマートフォンやタブレット、ウェアラブルデバイスなどを展開するファーウェイ。日本では現状、HarmonyOSはあまり普及していないが、中国ではそれが急速に拡大しており、クルマや家電にまでOSが搭載されている。
このたび筆者は、中国深圳にあるファーウェイのフラグシップストアとスマートラボを見学し、その最前線を体験した。ファーウェイのHarmonyOSが実現する近未来の様を紹介しよう。
自動運転対応のスマートカーが展示されている旗艦店
まず訪問したのが、ファーウェイのフラグシップストア。現地スタッフによれば、同店が位置している場所は「日本でいう大手町」だそうで、周囲には高層ビルが立ち並んでいた。フランスの有名なチームとファーウェイが共同で設計したという建物は、周囲4面がガラス張りの3階建て。曲線的なデザインで、ステンレス製の屋根は鏡面仕上げになっている。
この店にはファーウェイの最新デバイスがずらりと並んでいるが、それはスマホやウェアラブルデバイスなどのガジェットに限ったものではない。入り口脇にはスマートカーが鎮座しており、2階にはスマートホームのモデルルームもある。
圧倒的な存在感を放っているスマートカーは、もちろんHarmonyOSを搭載。自動運転に対応したハイブリッドカーで、中型のAITO M7と、小型のAITO M5の2車種がある。AITOは、共同開発を行なったクルマメーカー・小康工業集団のブランド名だ。
ガソリンと充電池の併用で、最大1200kmを走れるというこのクルマには、「ADS 2.0」という自動運転機能が搭載されている。27個ものセンサーで周囲の状況を把握し、赤信号ならブレーキをかけ、青信号では自動走行してくれる。また、自動駐車システムも搭載されているという。
クルマの動作は至る所がスマートで、解錠することで顔を出すドアハンドル、ドアを開けると自動で出てくる踏み台、着座すると自動で奥行きを調整してくれる電動の座席など、従来のクルマにはなかった機能が多数搭載されている。解錠などの操作はスマホやウェアラブルデバイスから行える。
2階には、スマートホームのモデルルームも
2階に上がると、スマートホームのモデルルームがあった、リビングとダイニングキッチンが再現されたこの部屋では、HarmonyOSのエコシステムが、家の姿をどう変えるかを体感できる。
日本ではウェアラブルデバイスメーカーとしての印象が強いファーウェイだが、中国ではより広範囲のコンシューマー事業を展開している。このフラグシップストアを訪問した筆者は、その事業範囲の広さを実感した。
タブレットと声で家中の操作が完結する“未来の家”
フラグシップストアにあったスマートホームのモデルルームは、近未来を予感させるものだった。それよりはるかに大規模なスマートホームがあるのが、ファーウェイのスマートラボだ。高層ビルの44階に入居しているこのラボには、リビング、ダイニングキッチン、寝室、キッズルームなどを備えた、巨大なスマートホームが設置されている。
スマートホームの中には、リビング、寝室、ダイニングキッチンなど様々な部屋があるが、その全てに共通しているのが、1台のタブレットによって操作が完結すること。これが実現しているのは、照明からオーディオ、各種家電に至るまで、あらゆる機器がHarmonyOSに対応しているからだ。
家の設備は、音声操作にも対応している。人の発声からシステムの動作までのタイムラグがないのが印象的で、特にカーテンの開閉ではそれを如実に感じた。発声からカーテンの動作までにかかる時間は、体感では1秒もなかった。
スマートホームでは、細かな技術が光っていた。それが、人感センサーで点灯する読書灯だ。人感センサーを搭載した照明はすでに世の中に多く普及しているが、誤作動があるものも多い。しかしここの読書灯はそれを可能な限り抑えている。たとえば、動物が近寄っても照明はまったく動作しない。
スマートホームは災害にも強い。あらゆる電気機器の制御を統合しているホームマシンが、災害時には生活のために最低限必要なものだけを選び、太陽光発電によって動作させる。
ファーウェイのコンシューマー事業のコンセプトは、「すべての人に最適なデバイスを届ける」こと。スマートカーやスマートホームも含めて、同社が多彩な製品を開発している理由はそこにある。それらの機器にもれなく搭載されるHarmonyOSは、アメリカの制裁によって産まれたものではあるが、いまやファーウェイの幅広い製品展開を支える根幹に成長しており、同社の底力の大きさを感じさせる。日本の対岸で着々と拡張しているそのエコシステムは、世界へ乗り出す機会をうかがっているのだ。