鍼灸師・柔道整復師の高林氏は伸長エクササイズ「のびタス」を考案。成長期を終えた大人でも身長を延ばすことができるといいます(写真:Graphs/PIXTA)

一般的に、成長期を過ぎると身長は伸びなくなるとされています。しかしアスリートゴリラ鍼灸接骨院院長の高林孝光氏は、氏が考案した伸長エクササイズ「のびタス」を実行すれば「大人でも身長が伸ばせる」と言います。

その効果と実績について、高林氏の著書『身長は伸びる!――子どもはもちろん!大人になっても』より一部抜粋、編集してご紹介します。

第1回:「あきらめない!大人になっても身長は伸ばせる

ゆがみの根本原因である骨盤とともに矯正

私が考案した伸長エクササイズは「のびタス」といいます。「のびタス」というネーミングは、「実行すればその場で身長が伸び(のび)、さらに継続すれば継続するほど身長が足されていく(タス)」ことから決まりました。

のびタスを行うと、なぜ成長期を終えた大人でも身長が伸びるのでしょうか。それは、のびタスが、身長を伸ばすための3つのキーワードである「代謝」「成長ホルモン」「骨格」のすべてをカバーしているからです。

まず、私の専門分野である骨格矯正の視点から説明しましょう。

前回述べたように、柔道整復師の世界では、ネコ背やO脚を改善させることによって、その分、身長を伸ばすことはよく知られた方法です。そのため、テレビのバラエティー番組などでも、しばしば取り上げられています。しかし、この方法には、即効性はあるものの、ある程度時間が経過すると元に戻ってしまうという弱点があります。なぜなら、ネコ背なら脊椎を、O脚なら脛骨と腓骨をというように、ゆがみのある部分のみを矯正しているからです。

そこで私は、脊椎や脛骨、腓骨といったゆがみの起こりやすい部分に加えて、その根本原因になっている骨盤の後傾や前傾も矯正できるように、のびタスを設計しました。また、ゆがみやすい脊椎や脛骨、腓骨だけでなく、肩や足の指の骨にも働きかけるようにしています。さらに、広背筋、腹横筋、大臀筋、中臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、内転筋、長母趾屈筋といった全身の筋肉を鍛えたり、緊張をゆるめたりするようにも構成しています。

骨格を矯正することで代謝も成長ホルモンも刺激される

このように、のびタスには全身の骨格と筋肉を正常な状態に戻す働きがあります。しかも、それぞれの動きは身長を伸ばすためのもう2つのキーワードである「代謝」と「成長ホルモン」とも深くリンクしています。

全身の関節に栄養をいきわたらせて代謝を促すには、全身を動かすことが必要です。しかも、「曲げる」「伸ばす」「ひねる」など、さまざまな動きが求められます。のびタスは、その条件のすべてを満たしています。

また、全身の骨格を矯正することは、成長ホルモンの分泌を促すことにもつながります。骨盤が後傾あるいは前傾していることの多い現代人には、足の指の裏側が地面に接していない「浮き指」がよく見られます。しかし、のびタスによって骨盤が正しい位置に収まり、浮き指が解消すると、足の指の裏側が地面に接するようになります。

足の裏マッサージの世界では、足の第1指(親指)の裏側には脳の反射区があるとしています。脳の反射区が刺激されれば、脳の下垂体から成長ホルモンの分泌が促されるのです。

さらに、成長ホルモンは激しい運動よりも、ゆっくりと行う「スロートレーニング」によって分泌が促されることが判明しています。のびタスは、この点でも理想的な方法です。すべての動きがゆっくりとして、いわば二重の意味で成長ホルモンの分泌をよくするのです。

実際に、のびタスの効果には目を見張るものがあります。その実効データを公開しましょう。

有効率97%超! 80歳でも0.7センチ伸びた

私は、2022年10月から11月までの約1カ月間にわたってのびタスを実践した38人のデータをまとめました。


(図:『身長は伸びる!――子どもはもちろん!大人になっても』より)

38人の内訳は、男性18人・女性20人。年齢は最年少が11歳、最年長が73歳で、平均年齢は約43歳になります。実践にあたっては、1日に最低1度、任意の時間にのびタスを行い、当日と約1カ月後に身長を測定して記録をするようお願いしました。毎日欠かさず行うのが原則ですが、仕事などの関係でむずかしい場合は、できるだけ間隔を空けないようにと指導しました。

その結果、38人のうち、継続を断念された1名を除く37人の身長が伸びていました。有効率は97%超にも上ります。1カ月継続した人では100%の有効率です。トータルで最も伸びた人は2.0センチ、最低でも0.4センチ伸びており、平均で約1.0センチ背が高くなっていました。


また、データには反映されていませんが、多くの方がご家族といっしょに実践され、お子さんやご主人、奥様などにも同様の結果が出たという報告を受けています。

同じく、このデータ外の記録として、特筆すべき結果が残っています。80歳の女性、A・Yさんの身長が0.7センチ伸びたのです。

A・Yさんは腰痛とひざ痛のために当院に通院されている患者さんでした。とくに症状の重いひざ痛は、背中が丸まって骨盤が後傾し、ひざに負担がかかっていることが原因と考えられました。そこで、骨盤の後傾を改善する効果のあるのびタスをすすめてみたのです。「しかも身長も伸びますよ」と伝えましたが、A・Yさんは当初、「いまさら背が伸びてもねえ」と、あまり乗り気ではありませんでした。

しかし、やり方を説明したところ、「そんなに簡単にできるのなら、とりあえずやってみようかね」と賛同してくれました。その結果が0.7センチという数字となって現れたのです。骨がもろくなり、身長が縮んでいく年齢の人にも、これだけの効果が現れたのは画期的といえるでしょう。

成長ホルモン分泌不全性低身長症のような病的な低身長を除けば、わざわざ医療機関で成長ホルモンの注射を打ったり、高価なサプリメントや健康器具を購入したりしなくても、これだけの効果を得られるのです。

次回は、のびタスの具体的なやり方を紹介します。

(高林 孝光 : アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長)