蓄電システムは再生可能エネルギー発電の出力の不安定さを緩和する役割を担う。写真は中国の国有電力大手、華潤電力が設置した蓄電システム(同社ウェブサイトより)

中国では再生可能エネルギー発電の設備容量が安定的に増加するなか、電力を一時的に蓄える「蓄電システム」の導入が急拡大を見せている。

業界団体の中関村儲能産業技術連盟が9月8日に公表したデータによれば、2023年1月から8月にかけて中国各地で実施された蓄電システムの競争入札の規模は容量ベースで43.1GWh(ギガワット時)に達し、前年同期の5倍に膨れ上がった。

リチウム相場急落でコスト低下

その一方、入札の平均落札価格は大幅に下落した。リン酸鉄系リチウムイオン電池を用いた蓄電システムを例にとると、8月の平均落札価格は1Wh(ワット時)当たり1.085元(約22円)と前年同月比で3割安くなった。また、同月の最低落札価格は同0.92元(約18.5円)を記録し、1元(約20円)を割り込んだ。

落札価格の下落の背景には、蓄電池の主原料である炭酸リチウムの相場急落に伴う蓄電システムの生産コストの低下がある。炭酸リチウムの取引価格は2023年に入って下がり続けており、9月8日時点のスポット相場は1トン当たり19万6000元(約393万5400円)と、1年前より6割も安い。

電池メーカー同士の激烈な競争も、蓄電システムの価格下落に拍車をかけている。電池メーカーは主力のEV(電気自動車)向け電池で需要の伸びが鈍化する一方、近年の生産能力の拡大競争で膨大な生産余力を抱えている。そんななか、電池メーカー各社は(工場の稼働率を上げるため)蓄電システムの受注拡大に全力を注いでいる。


電池メーカーはEV向け電池の成長鈍化を補うため、蓄電システムの受注拡大に力を注ぐ。写真は車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)の蓄電システム(同社ウェブサイトより)

需要サイドの動きを見ると、2023年は風力発電所と太陽光発電所の新増設が増え続けており、蓄電システムの需要を押し上げている。中国のエネルギー政策を所管する中国国家能源局のデータによれば、1月から7月までの間に設置された太陽光発電設備の容量は約4億9000万kW(キロワット)に上り、前年同期比42.9%増加した。同じ期間に風力発電設備の容量は3億9000万kW増加し、前年同期を14.3%上回った。

地方政府の「強制設置」も追い風に

再生可能エネルギーの利用拡大とともに、中国各地でピーク時とオフピーク時の電力料金の落差が広がっていることも、(再生可能エネルギー発電の送電網への出力を平準化できる)蓄電システムの導入を後押ししている。前出の中関村儲能産業技術連盟のデータによれば、中国国内18地域のピーク時とオフピーク時の電力料金には1kW当たり最大0.7元(約14円)の落差が生じている。


本記事は「財新」の提供記事です

蓄電システムの導入は(再生可能エネルギー発電による)電力の生産量と消費量のマッチングや、送電網の受け入れ負担軽減などに高い効果を発揮する。

そのため各地の地方政府が、風力発電所や太陽光発電所の建設認可の条件として蓄電システムの設置を求めるケースが増えている。業界内で「強制設置」と呼ばれるこの政策も、蓄電システム導入の追い風になっている。

(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は9月9日

(財新 Biz&Tech)