かつてと異なり日本株から割高感が消えた。新NISAで今後、市場への資金流入も増加しそうだ。

日経平均株価は33年ぶりの高値水準にあり、3万円台で値固めを続けている。視野に入るのは1989年最高値3万8915円の更新だ。『週刊東洋経済』の9月25日(月)発売号(9月30日号)では、活況に沸く株式市場の中で、「3万円時代に買える株」を特集。新NISA始動も目前であり、ランキングととともに、今から株式投資を始める超初心者向け記事も盛り込んでいる。

PERは欧米水準に


日経平均株価は今年5月に20カ月ぶりに3万円台を回復、またバブル崩壊後の高値を更新し、以後、3万円の大台で安定的に推移している。

市場関係者の多くは1989年12月の最高値3万8915円更新を視野に入れつつある。最高値更新が絵空事でなく現実味を帯びるのは、長期的に株式市場の質的転換が図られたためだ。デフレからインフレへの転換、株価水準と企業業績との乖離の縮小、日本企業の足元の業績が順調、などがこれに当たる。

ファンド運用者は「インフレの時代に突入し、物価が2倍になるなら、当然、株価も2倍になる。現在の3万円台が6万円台になっても不思議ではない」と話す。物価2倍は極端としても、デフレからインフレへの転換期に株価が上昇するのは不思議ではない。製品値上げが個別企業の収益成長に拍車をかけている面もあり、株価上昇の支援材料だ。


下図のとおり、バブル期から2000年代までの株価は1株利益と乖離し、企業業績の実態と懸け離れたものだった。それゆえPER(株価収益率)も欧米と比較して高水準の状態が続き、バブル期にはPER30倍台でも割安銘柄とされていた。


だが、現在ではPER10倍台と欧米水準で推移する。株価も1株益との連動性が高まり、かつての需給要因主体の相場から改善が進んだ。


この間、日本企業もROE(自己資本利益率)向上やガバナンス改革を進め、収益の改善を図ってきた。東証改革の一環で、PBR(株価純資産倍率)改善に注力しているのは、周知のとおりだ。

企業業績は好調

足元の企業業績は『会社四季報』23年4集秋号が示すとおり好調だ。下に業績や見出しの集計表を掲載している。国内全上場企業の今期業績は営業利益12.1%増、純利益9.6%増の見通し。金融を除く全29業種中、20業種が純増益の見込みで、前号比で予想純益額が増えたのは24業種だ。秋号の見出しは、前号の夏号比や会社計画比で「増額」「上振れ」が多い点に特徴がある。



もちろん相場の先行きに関して、米国景気、中国企業の過剰債務問題、日銀の金融政策、為替の動向、地政学リスクなど懸念材料は少なくない。日本企業の収益改革もまだまだ道半ばであり、人口減少下でマーケットの成長が望みにくい中、選択と集中やM&Aによる成長を加速する必要がある。今・来年の一本調子の最高値更新シナリオは、超楽観的にも映る。

新NISAが始動

とはいえ、24年初には新NISA(少額投資非課税制度)が始動し、「株式投資の民主化」が加速する。非課税保有期間が無期限となり、年間投資枠が360万円、非課税限度額が1800万円に拡張される新NISAによって、これまで投資に無縁だった層の株式市場への流入が予想される。

下図のとおり、日本株のメインプレーヤーは外国人投資家だが、個人の買いが増えれば「なぜ日本人は自国株に投資しないのか」といぶかしがっていた彼らの参入をなお呼び込む効果もありそうだ。


新NISAを念頭に、すでに市場では連続増配銘柄や安定配当銘柄が注目されている。新NISA始動待ちではなく、これを目前に控えた現在こそ、先んじた投資好機との考えも成り立つだろう。

特集では、『会社四季報』秋号のフォローアップや読み方の深掘り、3万円時代の投資術や銘柄について、超初級、初級、中級に大別して取り上げている。


(石川 正樹 : 東洋経済 記者)