敦賀駅南方の新幹線車両基地付近から北を望む。画面左下のカーブした線路は小浜線。右へと延びるのは北陸本線で段違いの上り線を「しらさぎ」が米原へと進行。下り線からは新設された特急ホームへの線が分岐して勾配を上がり、コンクリート擁壁も新しい築堤上で上り線とクロスする。右上の雄大な建築が新幹線敦賀駅(写真:久保田 敦)

鉄道ジャーナル社の協力を得て、『鉄道ジャーナル』2023年11月号「金沢・敦賀 新幹線開業まで半年」を再構成した記事を掲載します。

待望の開業は3月16日、だが短縮わずか3分の現実も

北陸新幹線金沢―敦賀間の延伸開業日が2024年3月16日土曜日に決まった。8月30日、あわせて運行計画の概要も発表された。東京―敦賀間直通列車は「かがやき」9往復、「はくたか」5往復の計14往復。これに関西や名古屋と北陸を結ぶため、敦賀で特急「サンダーバード」「しらさぎ」と接続する「つるぎ」が敦賀―富山間18往復、敦賀―金沢間7往復。ほかに朝と夜に特急接続のない「つるぎ」が計5本。

最速列車は東京―福井間が2時間51分、東京―敦賀間は3時間8分となる。福井の場合は36分短縮され、東海道新幹線米原経由よりも30分程度早くなる。敦賀は50分短縮と言うものの、こちらは米原経由のほうが勝る。

一方、大阪―金沢間は22分短縮の2時間9分、大阪―富山間は29分短縮の2時間35分。名古屋―金沢間は16分短縮の2時間9分、名古屋―富山間は23分短縮の2時間35分となる。しかし、大阪―福井間1時間44分、名古屋―福井間1時間33分は、いずれも3分の短縮に過ぎない。敦賀が新幹線と在来線特急の乗り継ぎ駅となった結果、乗り換え時間が新幹線の時間短縮分を相殺してしまうようだ。

また、敦賀―金沢間の在来線はJR西日本から分離されるため、この間の特急は全廃となる。その結果、大阪―敦賀間「サンダーバード」25往復、「しらさぎ」は名古屋―敦賀間8往復と米原―敦賀間7往復が引き続き運転され、そのほか七尾線を走る金沢―和倉温泉間「能登かがり火」が5往復となる。

並行在来線分離の結果としてほかのJR在来線とつながらなくなった支線はいくつかあるが、七尾線もその例に加わる。そこに、三セク会社の駅(金沢)を起点にJR特急が走るのは初のケースだ。


金沢駅から約11kmの北陸本線松任駅西側が白山総合車両所に出入りする分岐地点。ここから福井方面が今回の建設区間で敦賀の工事終点まで約115km(写真:久保田 敦)

工事区間でいよいよ実車走行、線路の監査・検査とは

北陸新幹線金沢―敦賀間の建設工事は、今年5月27日、大きなエポックとして芦原温泉駅でレール締結式が行われた。とは言え、その時点から新幹線電車が走れるわけではない。本線のレールは2022年10月に敦賀駅付近で敷設を終え、設定替え(レールを適切な温度の状態で最終的に締結する)の作業も今年2月に完了している。だがさらに、レール面の正整作業は、儀式としてのレール締結式を挟んで続けられた。また軌道だけでは列車は走ることはできず、変電所や配電所・配電線関係を今年3〜4月に、続いて電車線(架線)関係の工事を7月末に完成させた。さらに通信線や電灯電力の工事は9月末まで続くスケジュールである。

これらの工事がそれぞれ完成すると、「監査・検査」が実施される。整備主体である鉄道・運輸機構(JRTT)による「工事しゅん工監査」と、運営主体のJR西日本による「設備検査」を合わせて「監査・検査」と略している。具体的には出来栄えを確認する「外観検査」、設計図書や施工記録類を確認する「書類検査」、設備が機能的に適正であるかを確認する「機能試験」、営業に使用する車両を用いた「走行試験」があり、対象は用地・路盤・停工・軌道・機械・建築・電気・運転・営業の9部門に分かれる。

また、段階的にはトンネルや橋梁・高架橋などの大規模構造物の目視確認や打音検査を行う「事前監査・検査」に始まり、手直しや追加処置をした後、地上設備全般を対象に「地上監査・検査」がある。それから実車を使用した「総合監査・検査」に進む。


2023年8月22日の「監査・検査」公開時点の福井駅。時刻表などを除いて営業上の表示類も整い開業の近さを示す(写真:鶴 通孝)

今般の敦賀延伸工事において、最初の監査・検査に入ったのは電車線部門で今年4月26日。各設備に通電しないと物事は始まらないから電気がトップを切る。6月12日から対象が拡げられ、大規模構造物についてもここに開始された。そして8月21日から地上検査・監査に入った。総合監査・検査は9月22日からとされ、翌23日にJR東日本の新幹線総合試験車「East-i」を使った試運転が計画される。これが新幹線電車の初走行となる。

22日深夜、営業区間の運転が終了するのを待って未明に白山総合車両所を出発、金沢駅に向かい、折り返して敦賀の車両基地まで。速度は駅構内を時速30km、駅間を時速45kmとする。East-iで全線の入線確認が完了すると、26日から営業用電車W7系での試験が開始される。初日は最高速度を時速110kmに抑え、以後、営業最高速度の時速260kmまで引き上げてゆく。12月9日までを予定する。

国の完成検査を受けて訓練運転へ

全機能が正しく作動するかのコントロールランで支障がないと確認されると、鉄道施設の管理はJRTTからJR西日本に引き継がれる。


そしてこの段階に至ってJR西日本は、鉄道事業法に則って事業を営んでゆくために、国土交通省の「完成検査」を受ける。ちなみに、ここで検査対象とされるのは、「工事によって作られた地上設備」であり車両は含まないが、そちらについては省令に基づく「車両確認」が必要となる。

また、営業するには組織や制度も整っていなければならないので、国土交通省は営業体制や制度の監査も行う。これらが事業主体による「監査・検査」とは別の、国による「検査・監査」であり、その合格を経て開業が可能になる。以後は開業まで訓練運転が続けられる。

(鉄道ジャーナル編集部)