大谷翔平の全試合を観戦する「ミニタニ」現地レポート

(「ミニタニ」インタビュー編:「大谷翔平の全試合を全米で観戦 話題の「ミニタニ」とは「何者?」「費用はいくら?」>>)


大谷の全試合を現地観戦するミニタニが実感した大谷狂騒曲とは?

 昨年からロサンゼルス・エンゼルス大谷翔平の全試合を現地観戦しているミニタニ氏が、オールスターからトレード騒動、プレーオフ進出が厳しくなったチームと周囲の雰囲気についてレポートした。

【シアトルでのチャントに鳥肌】

 ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手がメジャー3度目となるオールスター出場! ミニタニも大谷選手のお面を手に、晴れ舞台となるオールスターへ! 遠征で何度も訪れている、ロサンゼルスと同じ西海岸のシアトルでの開催ということで、どこかホーム感が漂っていた。

 大谷選手のオールスター初ホームランに期待し、そのボールをキャッチしたいと願いを込める。思い切って買った400ドル(約58000円)のチケットを強く握り締めライトスタンド前方に陣取った。

「ホームランボールよ、ここに飛んで来い!」

 ちっさなグローブを手に全集中! そして、いよいよ大谷選手の打席が回ってきたのだが......突然、驚きの叫びがスタジアムに鳴り響いた。

「Come to Seattle!(シアトルに来て!)」

 スタジアムに詰めかけた約4万人のファンによる大谷選手への大チャント! 今まで多くのメジャーを現地で見てきたが、こんな光景は初めて。鳥肌がビンビンに立っていた。

 契約最終年を迎え、オフにFAとなる世界最高のプレーヤーへのラブコール。正直、「シアトルへの移籍はないだろうな」と心の中では思っていたが(笑)、それ以上に、こんなにも大谷選手のトレードやFAが注目され、声を挙げるファンが多いことに感銘を受けた。

【華やかだったオールスターとは対照的に......】

 45勝46敗、借金1で迎えたエンゼルスの後半戦。しかしスタートと同時に衝撃的なニュースが球界を騒がせた。

「エンゼルスが大谷翔平をトレードで放出!」

 トレード期限(現地時間8月1日)まで約2週間に迫った頃、 各メディアは大谷選手のトレード予想を一斉に報道。 その"行き先"は全米を巻き込む論議になった。

 昨年もエンゼルスは負け越しムードになり、同じようにトレードの噂があったが、今年のニュースにはかなり信憑性があった。昨シーズンのオフには球団の身売り話があり、大谷選手の契約最終年という状況もあって、移籍先の候補となる球団も絞られ、トレードはほぼ確定の空気感だった。

 ミニタニ自身も候補先のユニフォームの予約、トレード先での滞在場所などの下調べに追われた。ただ......正直、ミニタニ的には今回のトレードには賛成だった。

 大谷選手が上位の球団に行けばワールドシリーズ進出への可能性が上がり、エンゼルスには若手有望株の加入でチームが再生する可能性もある。ミニタニとしても、新たな球場で、新しいユニフォームで応援することで新しい世界が広がる。それを受け入れてくれるファン、「裏切り者」と呼ぶエンゼルスファンもいるだろうけど、すべて覚悟の上だった。

 大谷選手を愛する気持ちはみんな一緒。 だが、大谷選手やエンゼルスの未来を見据えたファンの意見は2分化していた。

「世界最高の選手をトレードで放出するなど、球団の恥」

「この地球上でもっとも優れた選手が、他のチームに行くところは見たくない」

「大谷をトレードで放出し、若手有望株をチームに加入させて再建を目指すべき!」

「シーズン終了後にFAで他球団に移籍することは確実。ならば、チームは今年のプレーオフ進出は諦めて、今すぐ"売り"に転じるべきだ」

 最後にエンゼルスがプレーオフ進出を果たしたのが2014年。 MVPを3度受賞しているマイク・トラウトでさえも1度だけしか経験したことのない世界だ。エンゼルスは今シーズンもプレーオフ進出を諦めるのか、それとも......その決断に注目が集まった。

【大谷選手は孤軍奮闘も、プレーオフ進出の確率は0.1%に】

 トレードのニュースが飛び交う中で、緊張と不安の日々が過ぎていった。トレード期限が間近に迫った7月26日から 、エンゼルスは強豪チームとの16連戦。その時点でチームは51勝49敗、貯金2。 わずかにワイルドカード争いへの望みはあるものの非常に厳しい状況だった。

 しかし、その26日に球団から発表が。 大谷選手をトレード放出しないこと、9年ぶりのポストシーズン進出に集中することを決定。チームオーナー、アート・モレノ氏は「人生最大の賭け」に出たのだ。

 大谷選手のチーム残留が決まった次の日、アウェーでのデトロイト・タイガースとのダブルヘッダー。敵地にも関わらず球場にはGMのペリー・ミナシアンの姿もあり、どこかダグアウトはざわついていた。

 大谷選手は1試合目、二刀流での出場。スタジアムに姿を現し、いつもと変わらぬルーティンをこなし、爪を気にする仕草もあったがどこか安堵しているようにも見えた。その1試合目でメジャー初の完封勝利を飾ると、2試合目には2打席連続での37、38号本塁を放った。

「これが大谷翔平というプレーヤーなのか」

 初めて大谷選手を見たという現地ファンは、興奮の面持ちで賞賛の声を漏らしていた。

 大谷選手の残留とプレーオフ進出へと舵をきったエンゼルスは、若手有望株2選手をシカゴ・ホワイトソックスへとトレードし、次々と即戦力の選手たちを加入させていく。現地ファンからは喜びの声と期待感が湧き上がった。デトロイト、トロント、アトランタ......遠征にも関わらず多くの大谷選手ファンが球場へと駆けつけ、プレーオフ進出への希望も込めた眼差しを向けていた。

 しかしその矢先、大谷選手は両足のふくらはぎや指のけいれんで、途中交代となった試合が投打で2試合。ただでさえ故障者の多いエンゼルスには緊張が走った。現地では休養を求める声も多い中で、大谷選手は「もう休める試合はひとつもない」と執念のコメントを残し、孤軍奮闘の活躍を魅せ続けていたが......。

 大谷選手のチーム残留が正式に発表された8月1日から、エンゼルスは泥沼の7連敗。 7連敗目の試合直後のホーム球場「エンゼル・スタジアム・オブ・アナハイム」ではファンが倒れるように座り込み、まさに地獄絵図だった。落胆と悲しみで、静けさがスタジアムを包んでいた。

 その後もエンゼルスは上昇気流に乗れず、米データサイト「ファングラフス」によるエンゼルスのプレーオフ進出確率は、8月22日時点で0.1%。シーズンの残りは40試合をきったが、WBCでチームジャパンを優勝に導いた大谷選手とエンゼルスはプレーオフ進出へ軌跡を起こせるのか。FAとなるシーズンオフにどんな動きがあるのか。まだまだ目が離せない。

【プロフィール】
◆ミニタニ/ミニビッシュ(アキ・テリヤキ)

茨城県出身。米ロサンゼルス在住。身長159cm、体重54kg。モノマネ芸人&ユーチューバーとして活動し、ダルビッシュ有の「ミニビッシュ」、大谷翔平の「ミニタニ」のほか、DA PUMPのISSAのモノマネ「ChiSSA(ちっさっ)」も有名。日米のテレビ出演多数。今季は日本のテレビ局でエンゼルス大谷の現地リポーターとしても活動。