『キングダム』王騎役・大沢たかお、肉体改造しすぎて衣装を4回作り直し!
原泰久の漫画を山崎賢人主演で実写映画化する『キングダム』シリーズで屈指の人気を誇る大将軍・王騎(※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記)。演じる大沢たかおは、第1作・2作で過酷なトレーニングを経て20キロ近く増量する肉体改造を経て本キャラクターになり切り、原作ファンも圧倒する説得力十分の演技を見せた。現在公開中の第3作『キングダム 運命の炎』に至るまでの“大沢版王騎”の魅力を、プロデューサーの松橋真三が語った(※一部ネタバレあり)。
紀元前・中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く戦災孤児の少年・信(山崎)と、信の亡き親友・漂と瓜二つの容姿を持つ秦国の若き王・エイ政(吉沢亮)を描く本シリーズ(※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)。3弾では、超大国・趙を相手にした「馬陽(ばよう)の戦い」と、原作ファンの間でも泣けると人気の「紫夏編」のエピソードが展開。秦国に積年の恨みを抱く趙の大軍勢が突如、秦への侵攻を開始。残忍な趙軍に対抗すべく、エイ政は長らく戦から離れていた伝説の大将軍・王騎を総大将に任命する。
主人公・信にとってあこがれの存在である王騎。松橋Pは演じる大沢の徹底したストイックさ、プロフェッショナルぶりをあらためて指摘する。
「大沢さんは第1作の時に18キロ、第2作ではさらにパンプアップして、23〜4キロに増量して王騎のキャラクターを作り込んで映画の撮影に臨んでくださいました。衣装合わせで体のサイズを測って、それに合わせてピッタリの衣装を中国で作っていただくのですが、それが上がってくるのに4週間ぐらいかかるんです。衣装を作っている間にも大沢さんはトレーニングをしているので、4週間後に出来上がったものを合わせてみると、さらに体が大きくなっているので、合わない……。こんなことが続いて『運命の炎』では結果として4回も衣装部さんに作り直しをお願いしました。“衣装費が4倍かかってしまうので勘弁してください”ってお願いをしたぐらいで(笑)。最終的には大沢さんが体の各部位をあと何センチ大きくしようとしているのかを確認して“腕はあと1センチ頑張ります。ウエストはもう少し絞ります”といったやりとりをして、ようやく撮影の時にピタリ合った感じです」
〜以下、ネタバレ含みます〜
『運命の炎』では王宮の間から撮影が始まり、王騎が現れた時の共演者たちの反応をこう振り返る。「王騎が王宮の間に入ってくる時に、大沢さんがあそこまで体を作り込んでくることで、その場にいるキャストたちは衝撃を受けるわけです。“自分もちゃんとやらなきゃいけない”とさらに気合が入ります。現場を引っ張っていたのはもちろん主役の山崎さんですが、それを周りからピリッと支えているのは大沢さんでした。第2作では、馬に跨りながら喋るだけでも、あの威圧感、存在感なんですね。最強の将軍だと思わせる大沢さんのパワーは本当にすごいとあの現場にいる人たち全員が思っていたと思います」
第1作では信やエイ政たちを遠目からクールに見ていた王騎だが、第3作にかけて徐々に変化しつつある。松橋Pは「信やエイ政と接する態度や喋り方にも変化が見て取れる」と語る。
「王騎はかつて仕えた昭王を亡くして以来、半ば隠居しているような状況なのですが、心の中は中華全土を震え上がらせた当時のままの状態だったと思うんです。もしエイ政が生半可な覚悟だったら別に殺したって構わないとも思っていたはずです。それが第1作のクライマックスでエイ政の覚悟を知り、ひょっとしたら彼に可能性があるかもしれないと気付き、第3作で趙が攻めてきた際に改めて多くの死者を出すかもしれない“中華統一”への覚悟をエイ政に問いました。それだけでなく「蛇甘(だかん)平原の戦い」で武功を挙げた信に新時代の到来を感じ、彼らのような若人に国を託してもいいかもしれないと、思ったのではないでしょうか」
なお、『運命の炎』では王騎の登場シーンで映画オリジナルのアレンジを加えているという。エイ政が、かつての恩人・紫夏(杏)のエピソードを語る場面だ。
「エイ政と紫夏の物語は、原作では宮女の向(こう)ちゃんが聞く設定ですが、映画では信と王騎がこの話を聞くシーンに変更しました。そこは原作と大きく違うところなのですが、王騎がエイ政の過去を信と一緒に聞いたことで、自身もまた過去と向き合って戦に再び臨む覚悟を決めるという構造になっています。そうすることで王騎も若人たちとの出会いによって、再び中華を面白くできるかもしれないという可能性を見出し、自分も戦地に舞い戻るという変化が出てきていると思います」
最新作『キングダム 運命の炎』では、趙の大軍を前に怖気づいた兵たちを「全軍前進」のたった一言で一つにするシーンをはじめ、王騎の貫禄、カリスマ性あふれる名シーンが見られるほか、副官・騰(要潤)との掛け合いも見ものだ。(編集部・石井百合子)