ボーナス未返還だけじゃない…退職金ゼロ公約の川勝知事「退職金8100万円既に受け取り」県民激怒“給料泥棒”がリニア妨害

写真拡大

 静岡県・川勝平太知事が「コシヒカリ発言」のペナルティとしてのボーナス440万円返上を結局していなかった問題について、元プレジデント編集長で作家の小倉健一氏は「川勝知事のセコさはそれだけではない」というーー。

ボーナス持ち逃げからの返上表明。川勝知事の不誠実な姿勢

 日本には「給料泥棒」という言葉がある。デジタル大辞泉によれば「あまり仕事をしないで給料をもらっている人を軽蔑していう語。月給泥棒。」のことだという。

 リニア新幹線の静岡工区の妨害を続ける静岡県・川勝平太知事が、いわゆる「コシヒカリ発言」を巡って、「年末の手当ボーナスとか12月の公給は、全額県民の皆さまにおかえしする、返上する」と約束をしていたにもかかわらず、返上をしていなかった問題で、7月6日、川勝知事は静岡第一テレビの取材に対して、「返上は私の意思なんですが、令和3年、知事選、参議院の補選、衆議院選挙と激しい選挙があって、そのあと議会が非常に私に対して厳しくなった、その過程でいわゆる給料の返上は相手にされなかった」とし、記者からの「県民との約束を守れなかったことについては?」との問いかけに対して、「約束をしていません」とそのままボーナスを持ち逃げする意向を示した。

 その後、やはり返上する意向を表明。バックレられると考えたものの、少し粘ってみたけれど、県民の反発の大きさに震え上がったのだろう。

440万円のボーナス持ち逃げ。退職金は2期合計で8100万円にも及ぶ

 問題の発言は、2021年の参院補選での応援演説で「(御殿場市は)コシヒカリしかない、だから飯だけ食って、それで農業だと思っている」とのべたことだ。川勝知事は「私は約束を必ず守ります、筋を通します」としていたにも関わらず、返上に必要な条例案の提出を見送り、7月3日に公開された『去年の所得』で、給与やボーナスを返上していなかったことが明らかになったのだ。返されなかった金額は、川勝知事が「自らに罰を科す」として当時自分で表明したところによれば「12月分の給料約130万円と期末手当約310万円」の計440万円だった。

 実は、まだ果たされていない約束もある。2009年の知事選で川勝知事は「退職金ゼロ」を公約にして、「知事の退職金を支給しない条例をつくり、受け取らなかった。2期目は『受け取ることが望ましい』との県審議会の答申に従い受け取っている」(中日新聞)。3期目と併せて、合計8100万円の退職金をもらっている。

 また、川勝平太知事の2022年分の所得総額は2261万円だった。

 ねとらぼ調査隊『「知事の年間給料」が多い都道府県ランキング【2020年版】』によれば、川勝知事の所得は、全国44人中10位にランクインしている。税金からこれだけの所得を得て、さらには4年毎に、多額の退職金をもらっておいて、とにかくセコい。それだけ税金で蓄財することができれば、多選したくなる気持ちもよくわかる。

舛添元東京都知事を彷彿とさせるセコさ。コロナ禍でも軽井沢通いしていた川勝知事

 「セコい」で思い出すのは、東京都の舛添要一元知事であろう。政治資金の使途には法律上の制限はないのをいいことに、リゾートホテルに家族と宿泊する費用や美術書の購入、美術品の購入まで政治資金を充てていた。湯河原の別荘には、ほぼ毎週、「湯河原の風呂は広いから足を伸ばせる」として、公用車で通っていたという。

 県外への通いといえば、川勝知事も負けてはいない。コロナ禍で、静岡県民に県境をまたぐ移動制限を呼び掛けていた際も、自宅住所に登録してある長野県・軽井沢に滞在を繰り返していた。当時の静岡県への報道には、「静岡県は昨年12月以降、『不要不急の帰省は我慢して控えてください。やむを得ず帰省する場合は帰省の2週間前から大人数や長時間での飲食はやめ、守れなかった場合には帰省しないでください』と強く要請していた。帰省以外でも、各都道府県の感染状況に基づくレベル分けを行った上で、県民に県境をまたぐ移動制限を呼び掛けている。このうち長野県への移動は、首都圏や愛知県と同様に「特に慎重に行動」することを求める、最も高いレベルの移動制限となっている」(産経新聞・2021年1月4日)とある。

リニア着工妨害に謎の執念を燃やす川勝知事

 今回のボーナス持ち逃げ騒動をみても、舛添元知事と同じような「相手には強く要求するが、自分だけは何をやっても許される」という謎の特権意識を感じざるを得ない。過去の事例から考えても、この県民との約束を果たせず、また果たす気がない以上、即刻辞任をしたほうがよいように思われるが、私が気がかりなのは、やはりリニアの問題である。

 川勝知事の異常な発言が注目されることによって、川勝知事の一連の工事着工妨害が、「ただの言いがかり」であったことがやっと国民、そして静岡県民に理解できてきたように感じる。はっきりいって、リニア着工を妨害することで静岡県民が得られるメリットなど何もない。川勝知事が求める条件をすべてクリアしたからと言って、大井川水系に与える影響はほとんどない。まったくないと言いたいところだが、生態系や水系は複雑なのでこのような表現をしている。何より、水がもし工事で減ったらJR東海にきちんと対処してもらう以外に、そもそも解決法がないのに、「◯◯のおそれがある」などと意味不明な嫌がらせを繰り返して時間がすぎているだけだ。

極め付けは「盛り土」への布石。川勝知事の給料泥棒はいつまで続くのか

 水の問題が終わったら、今度は、工事で出る「盛り土」を川勝知事は問題化する予定だ。そのための布石がうってあり、全国でも珍しいぐらいに厳しい盛り土条例などがその最たる例であろう。

 しかし、鉄道の歴史とは、土木工事の歴史でもある。JRは盛土について、構造物として設計し、十分な排水設備を設けるとしているが、それを川勝知事が熱海土石流の違法な産廃業者と同列視しているのは、明らかにおかしな印象操作である。全く持って科学的、工学的な議論ではない。国交省のホームページには、提出されている『大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取組み(JR東海資料)』には、盛り土の排水施設について、以下のように記されている。

 『静岡県からのご指摘ならびに、JR東海が発生土置き場を将来に亘って責任をもって管理することを鑑み、さらに安全側な100年確率(180mm/時程度)における降雨強度により、排水施設が機能を失わずに排水することが可能な設計を進めております』

 一方で、静岡県が定める『静岡県林地開発許可審査基準及び一般的事項』では、10年確率(100mm/時程度)における降雨強度で設計することを求めている。つまり、県が一般に求めている水準を大きく上回る、100年に1度の激しい豪雨を想定した施設を用意すると言っているJR東海を、違法な産廃業者と一緒くたにしているということだ。民間業者であるJR東海にこれ以上、どう盛り土の対策をすれば、「リニア妨害」「給料泥棒」の川勝知事はOKをするのだろうか。