ポルコの愛機「サボイアS.21F」を光沢レッドで塗装【達人のプラモ術<アジトのポルコ>】

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【達人のプラモ術】
ファインモールド
紅の豚 アジトのポルコ
03/04

『紅の豚』の劇中で、ピッコロ社のオヤジが「1927年のシュナイダーカップでこいつを付けたイタリア艇はカーチスに負けた。でもコイツが悪いからじゃない、メカニックがヘボだったからさ」とポルコに話をするシーン、好きなんですよ。というワケで第3回となる今回は、サボイアS.21Fに搭載されたエンジンの製作からスタートです。(全4回の3回目/1回目、2回目)

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」でもレビューを配信中。

 

■サボイアS.21Fの製作

キットは1/48スケールということもあり、エンジンも少ないパーツながらリアルに再現されています。サボイアS.21Fは架空飛行艇ですが、1920年代に開催されていたシュナイダートロフィーは現実に開催されていた水上機のレースで、ポルコがエンジンを見て「こいつはフォルゴーレじゃねえか」と語るシーンでエンジンが登場しますが、実在したマッキM.39飛行艇に載せられていたV型12気筒のフィアットAS-2エンジンがモデルになっているようです。いや〜飛行機好きには堪らんマニアックな設定ですねコレは。

エンジンはセミグロスブラックで塗装し、銀でドライブラシをかけてディテールを強調。さらにタミヤスミ入れ塗料のブラウンでオイル感を表現してみました。

ピッコロ社のガレージでは、ポルコにエンジンを見せながら「1927年のシュナイダーカップでこいつを付けたイタリア艇はカーチスに負けた」と語っていますが、現実のシュナイダートロフィーでは、カーチス機の出場は1926年までで、この年は1926年はAS2型エンジン搭載のイタリア機(マッキM.39)が優勝しています。

シュナイダートロフィーの話を始めると、いくらスペースがあっても足りなくなるので話をキットの製作に戻しましょう。

エンジンの製作と併せて、機体の製作も進めていきます。サボイアS.21Fは艇体の上に高翼式に主翼が配され、さらにエンジンが主翼の上に搭載されています。フィオ曰く「キレイな艇(ふね)」。キットは、前回製作した機体内部に艇体を被せる構造になっているので、取り外すことで内部も楽しめるようになっています。

▲劇中でサボイアS-21Fに新たに搭載されたエンジンはパーツ数12点で構成されており、塗装することでリアルに再現できる

▲組み上げたエンジンはエアブラシで黒に塗装

▲スミ入れ塗料のブラウンでエンジンをウォッシング

▲レシプロエンジンのオイル感を再現してエンジン完成

▲主翼上面のエンジンナセルにエンジンを収めた状態。完成後はディテールがほとんど見えなくなってしまうが、上面のカバーを取り外せば見られる

▲S-21もともと載まれていたエンジンと比べると、前面下に大きく張り出したラジエイターが外観上の違いとなる

▲マッキ M.39。劇中ではポルコの戦友フェラーリン少佐の愛機(イタリア空軍機)として登場している。1936年のシュナイダーカップで優勝した機体でもある。画像はS.B.Sモデル1/72プラモデル。価格1万340円

 

■紅の豚なんだから赤にはこだわりたい!

サボイアS.21Fは真っ赤に塗られています。これはイタリアのインターカラーだったということもあり、シュナイダートロフィーに参加したイタリア艇もすべて赤で塗られていました。以前本コーナーで制作した双胴飛行艇サボイア・マルケッティS.55も赤でした。

キットではMr.カラーのモンザレッドが指定されています。イタリアンレッドではないのかなとも思いますが、真っ赤!という点では確かにモンザレッドだと思います(ポルコのライバルカーチスの言葉をかりれば軽薄な赤)。作例は、個人的な好みでタミヤラッカーのピュアーレッドを塗装しています。このあたりは自分の思うイメージの赤で塗ればいいと思います。

そして赤をより鮮やかに発色させるため、下地はピンクサ―フェイサーで塗装しておくのがお約束です。

ところで劇中のサボイアS.21Fの赤はツヤがあったのか…はたまたツヤがない塗装なのか…模型的に悩みどころではあるのですが、ポルコが「あと15ノット(約25Km/h)は欲しい」と最高速にこだわっているので、塗装は空気抵抗の少ない光沢塗装であったと解釈して、機体は光沢塗装仕上げとしています。劇中ではピッコロ社の工房でばーちゃんがスプレーガンで機体の外板を赤く塗っていましたね。

また垂直尾翼と主翼下面にはイタリアの国旗の緑・白・赤の三色旗(Tricolore italiano)が描かれており、キットはデカールが付属していますが、デカールは垂直尾翼の前縁などの処理が難しいので、作例は塗装で塗分けて再現しています。

▲機体色となる赤塗装の発色を良くするための下地としてピンクサーフェイサーを塗装しておく

▲タミヤ「ファインサーフェイサーL (ピンク)」(880円)

▲機体色の赤で塗装するパーツは、まとめてピンクサーフェイサーで塗装

▲今回、機体の赤はタミヤラッカーのピュアーレッドを使用した。エアブラシで光沢仕上げとして塗装

▲ピュアーレッドで塗装した機体パーツ。光沢塗装は晴れて湿度の低い日を選びたい。ラッカー塗料での塗装の場合、湿度が高いとキレイな光沢が得られないことがあるので要注意

▲キットは主翼下面と垂直尾翼のトリコロールは付属デカールで再現できるが、作例では塗装で再現

▲塗装で仕上げたトリコロール

 

■次回完成!

機体塗装をしっかりと乾燥させたら、機体を組んでいきます。パーツの精度が高く、艇体の上に左右一体型主翼が取り付けられたパラソル翼のS.21Fはエンジンが主翼上に配されているため、艇体、主翼、尾翼、エンジンをそれぞれで塗装できるため、一般的な飛行機模型と比べて組みやすく、面倒なマスキングなども最低限で済ませられます。飛行艇なので完成後に破損させやすい脚もないですしね。

ということで今回はここまで。次回は機体を完成させて今回の主役「アジトのポルコ」のヴィネットと組み合わせて完成を目指します。お楽しみに!

▲前回製作した機体内部と今回製作した艇体(胴体)

▲鮮やかなピュアレッドが目に映える主翼とエンジンを仮り組み。特徴的なパラソル翼に搭載されたエンジンなどサボイアS.21Fのフォルムが忠実に再現されている

▲あとは主翼端のフロートとキャノピーなどを取り付ければ機体は完成だ

 

■参考にしたであろう機体、マッキM.33

こちらの写真は劇中に登場するサボイアS.21FのデザインベースになったマッキM.33。改修される前のサボイアS.21Fに搭載されていたエンジン、ラジエイターの配置からもこの機体を参考にしているようです。

このマッキM.33は1925年のシュナイダーカップでは3位に入賞した機体ですが、すでに時代遅れになっていたエンジンのトラブルに悩まされたようです。ちなみにこの年のレースで優勝したのはカーチスR3C-2ですから、映画『紅の豚』はこうした現実のシュナイダーカップの史実をうまく取り込んだストーリーのバックグランドになっていて、それがリアリティと大きな魅力になっているんだなぁと改めて痛感させられます。

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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