カワサキ「エリミネーター」は気軽に乗れる親しみやすさとバイクを操る奥深さを感じられるマシンでした
今年3月に発表されると同時に、大きな話題を集めたバイクがカワサキの新型「エリミネーター」。ロー&ロングな車体に、同社の「Ninja 400」の2気筒エンジンを搭載。お披露目されたモーターサイクルショーの会場でも“ただものではない” 雰囲気を放っていました。
4月25日に発売されて以降も高い人気を維持しており、まだ予約分を用意するので精一杯の状況とか。そんな話題のマシンに試乗することができたので、インプレッションをお届けします。
■初代モデルからの血統を受け継ぐ
「エリミネーター」という車名を聞いて、以前のモデルを思い出すのは古くからのバイクファンかもしれません。初代「エリミネーター」が登場したのは1985年。
▲1985年式「エリミネーター」
当時の世界最速モデルであり、北米では“Ninja”の名称で人気を得た「GPZ900R」のエンジンをロー&ロングな車体に積んだドラッグレーサースタイルのマシンでした。スポーツマシンのエンジンを搭載するスタイルは、初代モデルから続く伝統ともいえます。
▲1986年式「エリミネーター400」
ただ、当時は国内で正規販売するバイクは排気量の上限を750ccとする自主規制があったため、国内向けには「GPZ750R」のエンジンを採用した「エリミネーター750」が用意されました。その後、1986年には「GPZ400R」のエンジンを積んだ「エリミネーター400」が、1987年には「GPX250R」の2気筒エンジンを採用した「エリミネーター250」が登場し、ラインナップは拡充されていきます。この辺りのマシンを覚えている人は多いのではないでしょうか。
かつての「エリミネーター」シリーズは、クルーザーというよりドラッグレーサーをイメージしたスタイル。その意味で、クルーザーイメージが強くなった新型は押し出しが弱くなったともいえますが、その分、多くのライダーに馴染みやすいモデルに仕上がっています。
「Ninja 400」から受け継いたエンジンは、48PSの最高出力と37Nmの最大トルクを発揮。ホイールサイズはフロント18インチ、リア16インチとクルーザーらしいセレクトになっています。マフラーはロー&ロングなスタイルを際立たせるため、エキパイ部分から水平基調に伸びるデザインです。
シート高は735mmと低いので、小柄なライダーでも乗りやすい設計。さらに20mm下げられるローシートと、逆に30mm高くなるハイシートもオプションで用意されているので、幅広い体格の人に対応できます。
シート下にはETC車載器が標準装備されます。ツーリングに出かけるライダーには、今や必須の装備といえるので標準状態で装備されているのはうれしいところ。
▲「エリミネーターSE」
さらに、ビキニカウルやフォークブーツ、前後2カメラのドライブレコーダーまで装備した「SE」も用意されています。
価格はスタンダードモデルが75万9000円、「SE」が85万8000円(ともに税込)ですが、実車を目の当たりにすると、ビキニカウルやフォークブーツが似合っていて「SE」のほうがお買い得に感じられました。特にドライブレコーダーを取り付けたいと考えているなら、メーカー純正らしく収まり良く装備された「SE」は魅力的に映るでしょう。
■ベテランライダーまで楽しめる奥深さがある
車重は176kg(SEは178kg)と軽く、駐車場などでの取り回しは軽快。重心が低いことも手伝って、気軽にガレージから運び出して出掛けられるマシンです。
エンジンをかけると、2気筒らしい歯切れのいい排気音が響きます。ハンドル位置が低めで、ライダーがまたがった状態でもロー&ロングなスタイルが際立つ設計も好印象。マシンとライダーの一体感も高く、愛車と一緒に出掛けようという気分も高まります。
エンジンは「Ninja 400」から基本的に変更されていないということですが、2気筒でトルクもあるため発進も気軽。低めの回転数で街中を流していても何のストレスもありません。それでいて、最高出力を1万回転で発揮する高回転型エンジンなので、ひとたびアクセルを大きめに開ければ爽快な高回転の伸びを感じることができます。一言でいうと速い! Ninja系のパワフルなエンジンを搭載し、走りにも妥協しない姿勢は、過去のモデルとも共通する特徴です。
高速道路を走っても、このエンジンの恩恵は絶大でした。6速5000回転くらいでの巡航も快適ですし、追い越しの加速はそこからアクセルを大きめにひねるだけでも可能。もちろん、シフトダウンをすれば、より俊敏な加速を味わえます。
一番印象に残っているのは、ワインディングを走るのが楽しかったこと。クルーザースタイルのマシンですが、バンク角もしっかり確保されていて倒し込む操作も軽快なので緊張感なくコーナーに入って行くことができます。
そして、立ち上がりはパワフルなエンジン特性を活かしてアクセルを開けていくのが気持ち良い。低回転でトルクを活かして立ち上がるのも、高回転の伸びを感じながらスポーティにコーナーを後にするのも、どちらも楽しめる特性です。
新型「エリミネーター」は、誰でも気軽に乗れる親しみやすさを持ったマシンとして開発されたとのことですが、街乗りや高速のクルージングはもちろん、峠道まで幅広く楽しめるマシンに仕上がっていました。バイクに乗り始めたばかりのライダーや、久しぶりにバイクにカムバックするリターンライダー、そしてバイクを操ることを楽しみたいベテランまで楽しめる奥深さを持っています。
同じクルーザーとして、大人気モデルであるホンダの「レブル250」と比較されることも多いようですが、走って楽しいのはこちらという印象でした。これからバイクに乗る人やリターンするライダーはもちろん、125ccや250ccクラスからのステップアップを考えている人にもおすすめできるモデルです。
<取材・文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
【関連記事】
◆空冷単気筒モデルの本命かもしれない…。ロイヤルエンフィールドの「Hunter 350」が楽しい
◆安全性に加えて通気性もバツグン!ツーリングを快適にするアライの最新ヘルメットをお試し!
◆水冷か?空冷か?ハーレーダビッドソンの新世代エンジンはどっちが楽しい?