エミュレーターを使ってレトロゲーム機を新しいゲーム機に生まれ変わらせるというプロジェクトが存在します。しかし、コンピューターやゲーム関連のハードウェアをリバースエンジニアリングして遊んでいるというRedherring32さんは、海外版ファミリーコンピュータ「Nintendo Entertainment System(NES)」の各種パーツを物理的に削り、ゲームボーイサイズにまで小さくすることに成功しています。

Hobbyist grinds down original chips by hand to make a Game Boy-sized NES | Ars Technica

https://arstechnica.com/gaming/2023/06/hobbyist-grinds-down-original-chips-by-hand-to-make-a-game-boy-sized-nes/

単に「ゲームボーイサイズのファミコンを作る」だけであれば、エミュレーターやシングルボードコンピューターのRaspberry Pi、NOAC(NES-on-a-Chip)やFPGA(Field-programmable gate array)といったものを使えば実現は容易ですが、Redherring32さんは、こうした最新テクノロジーを用いず、NESのオリジナルパーツを使ってファミコンをゲームボーイサイズに縮小したゲーム機「TinyTendo」を作り出しました。





TinyTendoのゲーム画面と中の基板はこんな感じ。





Redherring32さんによると、TinyTendoはNESのオリジナルチップを物理的に切断・研磨して使用しているそうで、「簡単に説明すると、ダイとリードに当たるまでチップの底を研磨し、その後、Dremelでチップを小さくカットしました。最終的に、チップは10mm×10mm×2mmになりました」と説明しています。写真ではNESのチップがmicroSDカードよりも小さくなっていることが確認可能です。





カットされたチップは体積および面積が元のサイズの7%未満にまでサイズダウンしているそうです。これにより、NESのオリジナルチップをRaspberry Pi 3よりも小さいなプリント基板に収納することが可能となっているとのこと。なお、チップのカット作業はすべて手作業で行われています。





TinyTendoはオリジナルのNESのカートリッジを使用するわけではなく、Bucket Mouseさんが作成したオリジナルカートリッジを使用してゲームをプレイするそうです。以下の写真の中央にあるのがTinyTendoで、右にあるのがオリジナルのNESカートリッジ、左にあるのがTinyTendo専用にカスタマイズされたカートリッジ。





なお、TinyTendoは端末の充電にUSB-Cポートを利用し、電圧は5Vと3.3Vに対応。3.3Vは省電力モード時の電圧となり、スイッチを使って通常モードと省電力モードを切り替えることができるそうです。さらに、YveltalGriffinさんによりアナログの輝度制御機能も備えています。また、オリジナル版のNESへのオマージュとして、電源ボタンには押しボタンスイッチが採用されています。





Redherring32さんは、「ある日、NESのマザーボードを実際にどれだけ小さくできるのか試したところ、Raspberry Pi Zeroと同じサイズのマザーボードを設計することができました。ただし、これは限界を超えており、実用的ではないため、使用する価値はありませんでした」ともツイートしています。





なお、Redherring32さんはTinyTendoの取り組みをオープンソースとしてGitHub上で公開していますが、「TinyTendoは多大な労力を費やした複雑なプロジェクトであり、オープンソースで公開済みのプロジェクトではあるものの、まだある程度実験的なものです」と言及。さらに、「TinyTendoはオリジナルのNESのチップを物理的に切断・研磨する必要があるため、これは非常に難しくて危険な作業です。この工程を正しく行えない場合、チップを破壊してしまう可能性があります。そのため、TinyTendoをベースとした改造は自己責任で行ってください」と注意喚起しています。

GitHub - Redherring32/TinyTendo: An open-source portable handheld NES using real hardware

https://github.com/Redherring32/TinyTendo