ソニーが5Gスマホ「Xperia 1 V」(エクスペリア・ワン・マークファイブ)を発表しました。携帯通信事業者を通じて6月中旬以降に発売を迎えます。ソニーが培ってきたカメラ、ディスプレイ、オーディオとプロダクトデザイン、そしてモバイル通信の先端技術を、片手に収まるスリムな本体に詰め込んだ新製品のファーストインプレッションをレポートします。

↑エンターテインメント性能がまた一段と飛躍した、ソニーのXperia 1 Vをレポート

 

贅沢仕様が突き抜けたプレミアムスマホ

Xperia 1シリーズは“ソニーのスマホ”のフラグシップモデル。2019年に誕生したシリーズは早くも第5世代まで進化しました。当然、最新のXperia 1 Vはプレミアムモデルの「Xperia 5」シリーズや、これまでのXperia 1シリーズと比べても仕様が突き抜けています。

 

Xperia 1 Vは大きさが約6.5インチ、アスペクト比が21:9の、4K/HDR対応有機ELディスプレイを搭載しています。また、メインのトリプルレンズカメラには、光学ズームにも対応する望遠カメラが含まれています。このディスプレイとカメラ周りが、Xperia 5シリーズとの大きな違いです。

↑Xperia 1 Vは一番下の望遠カメラが85ミリから125ミリまでの光学ズームに対応。望遠撮影も高精細です

 

最新のXperia 1 Vと、2022年に発売されたXperia 1 IVとの間でスペック面の違いは、クアルコムの最新モバイル向けシステムICチップ「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載したことが挙げられます。ですが、ほかにも違いはあります。

 

大きいところでは、ソニーの独自開発による新型イメージセンサーを24mmの広角カメラに搭載して、写真・ビデオの撮影性能を高めたことです。特にセンサーサイズを大判化して、画素構造も見直した結果、暗い場所での撮影性能は前機種のXperia 1 IVと比べて約2倍に向上しています。

↑Xperia 1 Vの24ミリ広角カメラに搭載する「Exmor T for mobile」。新開発の2層トランジスタ画像積層型CMOSイメージセンサーにより、低照度性能がXperia 1 IVの約2倍に向上しています

 

夜景が特にキレイ! しかも仕事でも使えるほどのカメラ

では、Xperia 1 Vのカメラはどれほどの実力を備えているでしょうか。さまざまなシーンを撮影してみました。アプリはPhotography Proを使用、撮影モードは「Auto」を選んでいます。Google Pixel 7で撮った写真とも比較してみます。

 

背面のメインカメラは24ミリの広角カメラと16ミリの超広角カメラ、そして望遠カメラには光学ズームレンズと光学式手ブレ補正を搭載したことで、遠くの景色も精細感の高い写真・ビデオとして残せます。

 

【作例フォトギャラリー】画像をタップすると閲覧できます。

 

夜景はXperia 1 Vの優秀さが際立つ被写体です。暗部を引き締めつつ、明るい箇所は色彩を豊かに引き出します。ビルの窓枠など、被写体の輪郭がとてもシャープな線で描かれるところもXperia 1シリーズの特徴です。

↑Xperia 1 Vで夜景を撮影。暗部をつぶさず、明部のテクスチャーや色合いを自然に引き出します

 

↑Pixel 7で撮影。Xperia 1 Vの写真に比べると色彩が少しくすんだ印象になりました

 

被写体が私で恐縮ですが、Xperia 1 Vのインカメラで撮影したセルフィです。Xperia 1 Vでは顔に影が落ちない、明るい写真が撮れました。同じ場所と時刻にPixel 7で撮影したセルフィと見比べてみると、出来映えにかなりの差が出ていることがわかります。

↑Xperia 1 Vのインカメラで撮影。顔が明るく撮れます。代わりに背景はやや明部が白飛び気味になる印象です

 

↑Pixel 7のインカメラで撮影。顔に影が落ちてしまいますが、背景は自然な感じに撮れます

 

続いて暗い室内で、三脚を使わずにスマホを手に持ったまま置き物を撮影しました。XperiaのAutoモードによる写真撮影時は自動的にシーンが判定されます。Pixel 7は夜景モードで撮りました。Xperiaの方は被写体の色合いをよく引き出していますが、手ブレの影響が少し出てしまったためか輪郭は甘めです。一方のPixel 7の写真は、精細感があるもののやや暗めになりました。

↑真っ暗な部屋でスマホを手に持ちながら撮影。Xperia 1 Vは輪郭が少し甘くなってしまいました

 

↑Pixel 7は、ふつうの撮影モードだと真っ暗に写ってしまうので夜景モードで撮影。暗めですが、輪郭はシャープな印象です

 

筆者はオーディオビジュアル機器をよくレビューする機会があるため、Xperia 1 Vの24mm広角カメラによる「ブツ撮り」をチェックしてみました。円筒形のスピーカーや四角いディスプレイの形にゆがみが発生することもほとんどなく、レビュー記事にも使えそうな写真を撮れたことは大きな収穫でした。

↑Xperia 1 Vによるブツ撮り。被写体の周辺があまりゆがまないので、コンデジで撮るスナップ写真の感覚で使えそうです

 

スマホの方が小回りが効くぶん、展示会やイベント、工場見学など現場の取材ではカメラとしても活躍してくれそうです。

 

精細感の高い映像はそのままに、立体的に迫る音がイイ

Xperia 1シリーズはエンターテインメント性能もプレミアムなスマホです。Xperiaは2015年に発売した「Xperia Z5 Premium」以来、高精細な4Kディスプレイを搭載するモデルを展開してきました。Xperia 1 Vは4K/HDR表示に対応する、アスペクト比21:9の縦長スリムな「シネマワイド」ディスプレイを継承しています。

 

映像を見てみると高い精細感、ナチュラルな色彩表現は歴代Xperia 1シリーズを継承していることがわかります。有機ELディスプレイの特徴を活かして自然な明暗のバランスを再現できることから、Xperia 1 Vのカメラで撮影した4K/HDRビデオを表示してみても、画面に吸い込まれるような立体感を楽しめます。

↑Xperia 1 Vで撮影した4K/HDRビデオを再生。細かなキズまで再現されています

 

音質に注目してみると、本体正面向きに配置した「フルステージステレオスピーカー」は、スマホの内蔵スピーカーとは思えないほど力強く鮮明なサウンドを再生します。

 

最新機種のXperia 1 Vでは内蔵スピーカーによるサウンドの音圧レベルを約10%上げて、低音の密度を向上。さらに、ソニー独自の立体音響技術360 Reality Audioに対応しています。対応するコンテンツをスピーカーで再生すると、手もとに映画館やコンサートホールが再現されるような没入感です。

↑Xperia 1 Vは内蔵スピーカーで360 Reality Audioのオーディオコンテンツを、迫力ある立体サウンドで楽しむことができます

 

オーディオ設定から「Dolby sound」をオンにすると、内蔵スピーカー、またはヘッドホン・イヤホンによるドルビーアトモス対応コンテンツの立体サウンドが楽しめるようになります。

 

さらに、Xperia 1シリーズはドルビーアトモス再生時の「シーン選択」や、音場やダイアローグの聞こえ方を「詳細設定」できるメニューを揃えています。これらの設定により、横方向への広がりだけでなく、高さ方向の立体感も真に迫るサウンドに没入できるところに、筆者はXperia 1 Vの実力の高さを実感しました。

 

映画など、ドルビーアトモスによる立体音響再生を楽しめるモバイル向けストリーミングコンテンツも少しずつ増えています。Xperia 1 Vなら、そうしたコンテンツも存分に堪能できるでしょう。

↑Xperia 1 Vのオーディオ設定。ドルビーアトモスの再生設定を細かく調整できるところがXperia 1シリーズならでは

 

エンタメ性能で見ると「今すぐ手に入れたい」デバイス

先にも少し触れましたが、ドルビーアトモスや360 Reality Audioなど立体音響体験をヘッドホン・イヤホンで楽しめるところも特筆すべきポイントです。

 

さらに、一般的なステレオ音源として制作されたコンテンツも、ソニー独自の「DSEE Ultimate」をオンにするとハイレゾ相当の高音質にアップスケーリングして再生します。これに加えて、ヘッドホン・イヤホン再生時に360 Reality Audioの立体的なリスニング感に近づける変換機能「360 Upmix」も利用可能。

↑ヘッドホン・イヤホン再生時にはステレオ再生を360 Reality Audioの立体感に近づける360 Upmixが使えます

 

ハイレゾ対応のBluetoothワイヤレス再生も含めて、オーディオまわりの機能はとにかく充実しています。ソニーのエンジニアは「音の良いスマホ」を意識してXperiaシリーズのサウンドチューニングを練り上げてきました。その結果、モバイルエンターテインメントプレーヤーとして、Xperia 1 Vの完成度はほかのスマホが容易に追いつけないレベルに到達していると言えます。

 

ソニーストアではこれまで、Xperia 1シリーズのSIMフリーモデルを、携帯通信事業者による発売から半年前後遅れる形で販売してきました。ですが、Xperia 1 Vはそれほど間を置かず、7月14日にソニーストアでSIMフリーモデルが発売されます。価格は19万4700円(税込)と高価です。ただ、高画質な写真や動画を撮って5G通信機能でシェアできること、あるいは4Kや立体音響コンテンツのストリーミングプレーヤーの先進性を考えれば、「今すぐにでも手に入れたいデバイス」であることは間違いないと筆者は思います。

 

【フォトギャラリー】画像をタップすると閲覧できます。