ロッテ吉井理人監督の選手起用法はバレンタインに「非常に似ている」 両者を知る清水直行が解説する「吉井スタイル」の特徴
清水直行が語る好調ロッテ 後編
吉井監督&野手について
(他の投手編:「クローザー固定」が理想、キーマンは「7回を頑張っているピッチャー」>>)
今季のロッテは就任1年目の吉井理人監督の采配や選手起用にも注目が集まっているが、ロッテOBの清水直行氏はどう見ているのか。複数のポジションを守ることが多くなった野手陣の起用法、各選手の状態についても聞いた。
メッツ時代の吉井理人(左)と当時の監督だったバレンタイン氏
――吉井監督はショートに藤岡裕大選手、茶谷健太選手、ルーキーの友杉篤輝選手を併用。キャッチャーの松川虎生選手はファームで鍛えさせるなど、選手起用で独自色を打ち出していますね。
一方、松川に関しては「負けてもいい。打たれてもいい」ではないですが、いろいろな経験を積んでほしいという思いもあってのファームなのかなと。
内野はショートの併用もそうですが、茶谷がファースト、ショート、サードを、故障して離脱している山口航輝もファーストやレフトを守っていますね。また、中村奨吾がしんどい時には小川龍成や友杉もセカンドを守ったり。小坂誠内野守備兼走塁コーチとも相談しながら、うまくシャッフルして起用していますね。
――競争心も高まると思いますし、今まで試合に出られなかった選手もモチベーションが高いと思います。選手も適度に休養できていますし、かつてのボビー・バレンタイン監督の起用法に似ている部分も感じます。
清水 僕もバレンタイン監督のもとで長く野球をさせてもらいましたが、非常に似ている部分があると思います。ポジションを固定することにはメリットとデメリットがある。メリットは、ひとりの選手がいい経験も悪い経験して成長できること。ただ、ケガをして外れた時に、埋めるのが大変というデメリットがあります。
固定しないメリットは、多くの選手がいろいろなポジションを経験できて、競争が激しくなること。デメリットは"専門職"になっていかないということ。ただ、大まかなとらえ方になりますが、僕は「内野の守備ができる=専門職」でもあると思うので、いろいろなポジションを守らせてみて能力を引き出すようなマネジメントのメリットは大きいのかなと。
ただ、吉井監督は「できれば固定したい」とも言っているので、もしかしたら今は、「1年間レギュラーを張れるのは誰かな?」と試している段階なのかもしれません。あと、ファームから上がってきた選手をすぐに使うのがいいですよね。
――確かに、和田康士朗選手も池田来翔選手も、一軍昇格後にすぐにスタメンで起用していましたね。
清水 選手の疲労も考えているかもしれないですね。試合以外でも、練習時間を短縮したり休みの日も固定するなど考慮している。スケジュールは裏方さん、球団も含め、すべて監督の方針で組んでいきますが、すごくやりやすい環境になってるんじゃないでしょうか。
今後、交流戦に入って移動が多くなると、コンディションの維持はより大変になっていくので、そのあたりの考慮はさすがだなと。メジャー経験者で、各チームで投手コーチを務めた経験、野村克也監督や仰木彬監督、バレンタイン監督ら名将のもとで野球をやってきた中で培ってきた"吉井スタイル"が、試合以外でも存分に出ていると思います。
――先ほど内野手の話がありましたが、今シーズンはこれまで内野での起用が多かった平沢大河選手がライトで出場している点(2018年には外野手として87試合に出場)はいかがですか?
清水 平沢は昨シーズン、ファームでタイトルを獲得したこと(イースタン・リーグ首位打者)がかなり心の支えになっているのと、吉井監督からの信頼もあって安心してプレーしているのかなと。
ただ、彼の癖なのか、"迷い"がすごく多いんです。打席に入るまでに考えが整理できず、腹を括って打席に入っているように見えません。打席に入ってからいろいろ考えることが多いので、それが払拭されれば、バットコントロールが優れているバッターですし、バットマンレースに食い込んでいく力はあるなと思っています。平沢の場合は、そこだけです。
守備に関してはフライを捕るのはうまいし、足もある。ショートをやっていましたから肩も強いですしね。あとはバッティングの技術面よりも、考え方が整理できるとガラッと変わると思います。
――昨シーズンまで、特に長打はレオネス・マーティン選手やブランドン・レアード選手などに依存する傾向がありましたが、今シーズンは全員でつないでいく野球になっています。
清水 今年に関しては、外国人頼りになっていませんね。ポランコには打ってほしいのですが、彼が低調でも、全員でつなぐ野球でいい戦いができています。今年のチームの特長として、「俺が打線の核になる、チームを引っ張っていく」っていう姿勢が多くの選手に見えるんです。
――清水さんは以前、バレンタイン監督のロッテが日本一になった2005年は、清水さんのほかにもサブローさん(現ロッテ二軍監督)や里崎智也さん、西岡剛さん(現北九州下関フェニックス選手兼任監督)ら、リーダーシップのある選手が多くてチームに勢いがあったと言われていましたが、今も似ている?
清水 似ている部分はあると思います。チームの勢いに「乗り遅れたくない」という気持ちが、選手たちからひしひしと伝わってきます。みんなが打ち始めると「自分も負けていられない」と気持ちが入る。だから、ベンチの雰囲気もすごくいいですよね。ベンチの雰囲気が打席の雰囲気につながるものなので。
そんな中で、あえてキーマンを挙げるとすれば、僕は山口航輝だと思います。彼がどのタイミングで戻ってこられるのか。彼が離脱(左大腿二頭筋損傷で4月30日に出場選手登録を抹消)してから、得点力がぐっと下がってしまいましたから、彼の復帰のタイミング、戻ってきてからまた打線が機能していくのか、ということがカギになるかなと。
もちろん、同じく離脱中の荻野貴司や郄部瑛斗が復帰してくれたら心強いですし、今戦っているメンバーでいえば、安田尚憲と藤原恭大にも頑張ってもらわなければいけません。若いチームなので、今後さらに勢いがつけば面白いと思います。
【プロフィール】
清水直行(しみず・なおゆき)
1975年11月24日に京都府京都市に生まれ、兵庫県西宮市で育つ。社会人・東芝府中から、1999年のドラフトで逆指名によりロッテに入団。長く先発ローテーションの核として活躍した。日本代表としては2004年のアテネ五輪で銅メダルを獲得し、2006年の第1回WBC(ワールド・ベースボールクラシック)の優勝に貢献。2009年にトレードでDeNAに移籍し、2014年に現役を引退。通算成績は294試合登板105勝100敗。引退後はニュージーランドで野球連盟のGM補佐、ジュニア代表チームの監督を務めたほか、2019年には沖縄初のプロ球団「琉球ブルーオーシャンズ」の初代監督に就任した。
◆清水直行703チャンネル>>