手堅く資産増やすための投資術を伝授します(写真:Luce/PIXTA)

老後に必要なお金を人生の最期まで稼ぎ続けることや、節約して使わずにいることは難しいもの。老後も余裕を持って生活をしていくためには、早いうちから必要になる資金を貯めておくことが必要になります。

では、どのように老後資金を作るのがいいのでしょうか。FIRE(経済的自立と早期リタイア)を達成した投資YouTuberのぽんちよ氏が、50代からでもできる資産形成術を伝授します。

※本稿は『人生に必要な老後資金の常識』から一部抜粋・再構成したものです。

米著名投資家が提唱する「オールシーズンズ戦略」

前回(『50代でも間に合う「老後資金作り」FIRE成功者の技』)は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のポートフォリオを参考にする投資法を解説しましたが、もう1つ低リスクで着実なリターンを目指せる投資法として参考にしてほしいのが、「オールシーズンズ戦略」です。

オールシーズンズ戦略は、アメリカの著名投資家のレイ・ダリオ氏が提唱している方法です。まずは彼がどんな人物かを簡単に紹介します。

1949年ニューヨーク生まれで、投資との出会いは少年時代。新聞配達などのアルバイトで貯めたお金で株式投資を始めたといいます。その後、ロングアイランド大学、ハーバード・ビジネス・スクールを経て証券会社に入社し、商品先物取引を担当します。

1975年、26歳で自身の会社「ブリッジウォーター」を創業。今やブリッジウォーターは世界を代表するヘッジファンドになり、ダリオ氏は最高投資責任者として、マーケットの動向を見続けています。

話を元に戻すと、「先物取引で最小リスクで最大利回りを目指していこう」という考えのもと、リーマンショックでもしっかりと安定したリターンを叩き出したのが、オールシーズンズ戦略のポートフォリオなのです。

では、低いリスクで細長くリターンを得たい50代からのお手本となるオールシーズンズ戦略とはどのようなものなのでしょうか。

オールシーズンズ戦略の特徴として挙げられるのは、そもそも資金額が少ない個人投資家向けの戦略で下落局面に強く、リターンも高いポートフォリオです。

ダリオ氏が率いるブリッジウォーター社では、どのような経済環境下でも安定的な収益を上げる「オールウェザー戦略」というものを提唱・実践しています。

ただ、オールウェザー戦略はレバレッジやデリバティブなど高度な金融手法を駆使しており、個人投資家がそのまま実践することは困難です。そこでオールウェザー戦略のエッセンスを抽出し、個人投資家向けに簡素化したポートフォリオがオールシーズンズ戦略となります。

「黄金のポートフォリオ=安定したポートフォリオ」

では、オールシーズンズ戦略を提唱するダリオ氏の「黄金のポートフォリオ」といわれているものを見てみましょう。

投資先の内訳を見ると株式30%、中期の米国債15%、長期の米国債40%、金の現物7.5%、また原油やガソリンなどのエネルギーや穀物など現物に価値のあるコモディティ7.5%。これが最適なポートフォリオとされています。

ダリオ氏によると、株式の変動リスクは、債券の約3倍。できるだけローリスクにするために、個人投資家は株式よりも債券を多く所有した方がいいとのことです。

また経済の下降期には米国債が上昇します。さらにインフレの際は、金やコモディティが上昇します。こういう傾向から「黄金のポートフォリオ=安定したポートフォリオ」を組めます。すなわち経済状況がいかなる流れになっても、株、米国債、金、コモディティのどれかが収益をあげることができるポートフォリオとなっているのです。

注目してほしいのは株式が30%だけで、より債券に投資の比重を置いている点です。

オールシーズンズ戦略と、米国株式だけの投資を比べた場合、どれぐらいのリターンがあったのかを調べたところ、2008〜2009年あたりのリーマンショックのときでもオールシーズンズ戦略の場合は、そこまで大きな元本割れを起こしていません。

※外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください


出所:『人生に必要な老後資金の常識』

その後、より長期に見ていくと、米国株式のほうがリスクも高いため当然リターンも高くなってきますが、オールシーズンズ戦略のほうはずっと安定を保ち、一定のリターンを叩き出し続けていることが判明します。

コロナショックでも下がり幅は小さい

事実、株式は、コロナショックで非常に大きく下落してしまっていますが、それに対してオールシーズンズ戦略の場合は、下落こそしているものの、その下がり幅が小さく抑えられています。おそらく現物資産である金やコモディティへの投資が功を奏しているのでしょう。

そういった面から見てもオールシーズンズ戦略が安定したリターンを狙いやすいポートフォリオだということがわかります。

また2007〜2021年のオールシーズンズ戦略と米国株式のポートフォリオのリターンを折れ線グラフにして比較してみたところ、オールシーズンズ戦略のグラフは、本当に綺麗な右肩上がりになっているのがわかります。これは投資をするうえで、とても安心できるポートフォリオの証といえるでしょう。

では、オールシーズンズ戦略のポートフォリオの最大の下落率はどのくらいあるでしょうか。

米国株式市場の株価指数のひとつにS&P500があります。ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している500社の銘柄で構成されており、米国市場の動きを把握するうえで重要な指数です。このS&P500の動きと連動する投資信託は、いわばアメリカを代表する500社に投資するような商品ですが、それとオールシーズンズ戦略を比較して検証してみます。

S&P500の場合、最大の下落率がマイナス50.97%でしたが、オールシーズンズ戦略の方はマイナス14.75%と、かなり下落率が抑えられていて、下げ幅が小さくなります。

リスクが低く、着実なリターンを目指せる

また、保有する投資商品の損益がパッとわかるトータルリターンで見ていくと、オールシーズンズ戦略の場合は年率で6.1%。


一方でS&P500は年率で8.59%と非常に強いですが、それでもオールシーズンズ戦略もかなり頑張ったリターンを出しています。

このようにリスクが低く、着実なリターンを目指すうえではオールシーズンズ戦略を参考にしてみるのもいいでしょう。

こちらもGPIFと同様、株式30%、中期の米国債15%、長期の米国債40%、金の現物7.5%、コモディティ7.5%と決まったバランス比率で投資をしていくので、年に1回ぐらいのリバランスを行うことが大切です。

そうすることで、オールシーズンズ戦略を、より資産を減らしにくい、負けにくい投資にできるということを覚えてください。

(ぽんちよ : 投資系ユーチューバー)