少子高齢化により労働人口が減少するなか、高齢者を雇用・活用する企業が増えています。高齢者の雇用や活用に対し、数々の助成金制度があることも理由の一つといえるでしょう。そこで今回は、高齢者の雇用・活用に利用できる助成金一覧を紹介し、それぞれの概要や支給額などを解説します。

企業が高齢者の雇用・活用を進める背景

日本では少子高齢化が進み、高齢化率(65歳以上人口が総人口に占める割合)が上昇するとともに、生産年齢人口割合が減少しています。2021(令和3)年10月1日時点の高齢化率は28.9%で、総人口1億2,550万人のうち3,621万人が65歳以上です。

2036(令和18)年に33.3%、2065(令和47)年には38.4%と高齢化率が高まる一方、出生率の上昇は期待できず、2065年の人口比率は65歳以上1人に対して現役世代1.3人と推計されています。

少子高齢化で若年者の採用が難しくなり、現役世代も減り続けるなか、人材確保は企業をはじめ社会全体の大きな課題です。そのため、働く意欲のある高齢者を雇用し、活躍してもらうことが課題解決の一つの方法と考えられています。

出典: 令和4年版 高齢社会白書|内閣府

高齢者の雇用・活用に利用できる助成金一覧

国は高齢者の雇用・活用を進めるため、さまざまな助成金制度を実施しています。ここでは、厚生労働省が実施している主な助成金とそれぞれの概要を紹介します。

特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金とは、高齢者や障がい者などを雇用した事業主に対する助成金制度です。2023(令和5)年度は三つのコースがあり、65歳以上の雇い入れは「特定就職困難者コース」の対象になります。

【主な要件】
・ハローワークまたは民間の職業紹介事業者などの紹介により雇い入れること
・雇用保険の高年齢被保険者として雇い入れ、2年以上雇用することが確実であると認められること

【支給額】
・短時間労働者の支給額:40万円 ※中小企業以外は30万円
・短時間労働者以外の支給額:60万円 ※中小企業以外は50万円

短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人を指します。助成対象期間は1年間で、支給額は2期に分けて支払われます。なお、年度によってコースや要件、支給額などが変わることがあるので注意してください。

出典:特定求職者雇用開発助成金

65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、生涯現役社会の実現に向けて65歳以上への定年引上げなどを行う事業者に対する助成制度です。次の三つのコースがあり、それぞれ要件や支給額が異なります。年度によって要件や支給額などが変わることがあるため、事前に確認してください。

【65歳超継続雇用促進コース】
労働協約または就業規則により、65歳以上への定年引上げや定年の定めの廃止などを行った企業に対し、措置の内容や60歳以上の被保険者数、定年等を引上げる年齢などに応じて10~160万円まで支給

【高年齢者評価制度等雇用管理改善コース】
雇用管理制度見直しのために要した支給対象経費の60%を支給
※中小企業以外は45%

【高年齢者無期雇用転換コース】
無期雇用労働者に転換された対象労働者1人につき48万円を支給
※中小企業以外は38万円

出典:65歳超雇用推進助成金|厚生労働省

エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリー補助金とは、高齢者が安心して働ける職場環境を目指し職場環境の改善や安全衛生対策を行った事業者に補助金を支給する制度です。100万円を上限として、⾼齢者のための職場環境改善に要した経費の2分の1が支給されます。対象となるのは60歳以上の高年齢労働者を常時1名以上雇用している中小企業で、労働保険に加入していることが条件です。

なお、業種・常時使用する労働者数・資本金などに一定の条件があるので、詳細は下記リンクより確認してください。

※2022(令和4)年度の申請は終了しています。

出典:「令和4年度エイジフレンドリー補助金」のご案内

高年齢労働者処遇改善促進助成金
高年齢労働者処遇改善促進助成金は、2021(令和3)年に新設された助成制度です。高年齢雇用継続基本給付金の対象となっていた60歳から64歳までの賃金規定を増額した事業者に助成金が支給されます。

ただし、就業規則などの賃金規定を増額改定し、増額改定後の規定を継続して運用しているなどの要件を満たす必要があります。要件や支給額は年度によって変わることがあるため、事前に確認してください。

出典:高年齢労働者処遇改善促進助成金|厚生労働省

中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
中途採用等支援助成金は、中途採用者の雇用管理制度を整備したうえで中途採用の拡大を図る事業者に対して助成金が支給される制度です。中途採用率が20ポイント以上上昇した場合は50万円、うち45歳以上の中途採用率が10ポイント以上上昇した場合は100万円が支払われます。

なお、45歳以上の中途採用者については前職と比べて全員の賃金が5%以上アップすることも要件になります。このほかにも事業者・労働者それぞれに要件が設けられているため、詳しくは下記リンクより確認してください。

出典:中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)|厚生労働省

高年齢雇用継続給付金
高年齢雇用継続給付金とは、60歳以上65歳未満の高年齢労働者に対し給与額の低下分を労働者本人に直接援助する制度です。給付金には、雇用保険の基本手当を受給していない人を対象とする「高年齢雇用継続基本給付金」と、基本手当を受給して再就職した人を対象とする「高年齢再就職給付金」の2種類があります。いずれも給与額が60歳時点と比べて75%未満に下がった場合に支給されるもので、給付額は賃金低下率に応じて決まります。

本制度の目的は65歳までの雇用継続を援助・促進することです。2021(令和3)年4月に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの定年引き上げや70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入などが努力義務に盛り込まれました。そのため、2025(令和7)年度に60歳を迎える人から給付率を減らし、段階的に廃止となる見込みです。

出典:高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について|厚生労働省

高齢者向けの助成金を申請する際の注意点

助成金を申請する前に要件を満たしているかを確認しましょう。制度によっては就業規則や労働条件の見直しが必要になるかもしれません。審査のために出勤簿や賃金台帳、雇用契約書などの提出を求められることもあります。すぐに応じられるよう、日頃からきちんと管理しておくことが大切です。

また、年度によって要件や支給額などが変更されることもあるので、最新の情報を確認するようにしてください。申請には締切日が設けられていることもあるため、書類に不備がないかを確認し、早めに各申請先に提出しましょう。

まとめ

健康で労働意欲の高い高齢者に活躍してもらうことは、人材不足の解消につながります。高齢者の雇用・活用に対してはさまざまな助成制度が用意されているため、積極的に利用してはいかがでしょうか。制度の内容や助成金の支給要件・支給額は年度で変わることがあります。申請前に必ず最新情報を確認し、申請期限がある場合には早めに申請を行うようにしましょう。