守田英正の安定感が全軍の士気を高める スポルティング、ユベントスに惜敗も、次戦で番狂わせの予感
佳境を迎えている欧州カップ戦のヨーロッパリーグ(EL)、チャンピオンズリーグ(CL)。ELを戦うスポルティングの守田英正は、その場にいる唯一の日本人選手である。昨季のELはふたりの日本人選手が所属するフランクフルトが、あれよあれよという間に決勝に進出。レンジャーズを延長、PK戦で下して優勝を飾ったが、今季はどうなのか。
スポルティングが4月13日(現地時間)、準々決勝で対戦した相手はユベントスだった。ベスト8に駒を進めたチームのなかで、マンチェスター・ユナイテッドと人気を分け合っている優勝候補である。5番人気のスポルティングにとっては格上にあたる。
ユベントスホームで行なわれたその第1戦。前戦の国内リーグ、カサ・ピアAC戦は後半からの出場だった守田は、3−4−3の守備的MFとして出場した。
累積警告で出場停止のウルグアイ代表のマヌエル・ウガルテに代わり隣で構えたのはポテ(ペドロ・ゴンサウベス)。しかし3FWの一角としてプレーすることもあるこのポルトガル人選手は、キャラクターどおり、守田と並列には構えなかった。2人は縦の関係に近かった。つまり守田はアンカー然と深い位置で構えることになった。
その低い位置でのパッサーぶりは、さながら交通整理役という感じだった。攻撃のリズムを作る源として、十分な役割を果たすことになった。この格上とのアウェー戦が、パッと見、互角に映った原因だ。贔屓目ではなくそう思った。守田の安定感溢れる立ち振る舞いが全軍に好影響を与え、士気を高める結果になっていた。
ユベントス戦にフル出場した守田英正(スポルティング)
試合展開は五分五分から、気がつけばスポルティングのペースになっていた。
スポルティングは前戦(決勝トーナメント1回戦)で、ブックメーカー各社が大本命に挙げていたアーセナルを相手に初戦2−2、第2戦1−1、延長、PK戦の末に痛快な大番狂わせを演じていた。上昇ムードに乗る好調ぶりを、ユベントス戦でもそのままピッチに反映させる格好になった。
守田はそのアーセナル戦で、喜びに輪の中にいなかった。初戦でイエローカードを提示され、第2戦を出場停止になったばかりか、その直後にはオウンゴールも献上していた。このユベントス戦は汚名返上を図る場でもあった。
【高い位置でも存在感を発揮】
それまで、おとなしく最終ライン付近でプレーしていた守田が一転、牙を剥いたのは前半19分だった。相手DFが頭でクリアしたボールに鋭く駆け寄り、右足のインステップで低弾道の強烈なシュートを放った。ボールは左ポストを数十センチそれていったが、存在をアピールするには十分な一撃だった。
29分にはウルグアイ代表のセバスティアン・コアテスが、30分にはポテが、そして33分にはヌーノ・サントスが、たて続けに強烈な枠内シュートを放つ。番狂わせが起きそうなムードがぷんぷんと立ちこめていた。しかし、スポルティングとしては決めておきたかったシュートでもあった。
後半に入ると18歳のCFユセフ・シェルミティに、みるみる機能性が失われていく。高い位置でボールが収まらなくなった。いつの間にか流れはユベントスに傾いていた。
後半28分、ユベントスはイタリア代表のフェデリコ・キエーザのウイングプレーが決まり、スポルティングゴール前に、鋭い折り返しが送られる。ブラジル人のセンターバック、マテウス・レイスが辛うじてクリアしたが、スペイン人GK、アントニオ・アダンはその時、慌てていた可能性がある。その直後のショートコーナーから送り込まれたクロスボールに、飛び出したものの、被ってしまう。セルビア代表、ドゥザン・ブラホビッチにヘディングシュートを放たれ、そこから先制点を奪われてしまった。
するとスポルティングのルーベン・アモリム監督は戦術的交代を敢行する。その結果、守田は玉突きされるように1列高い位置にポジションを変えた。インサイドハーフというよりトップ下。残り時間をアタッカー然とプレーした。
するとどうだろう。流れは一転、再びスポルティングに大きく傾いた。攻めるスポルティング対守るユベントス。本当に強い時のユベントスはこの態勢に入ると強かった。喜々としながら相手の選手とボールを追いかけたものだ。攻めているほうが苦しそうな表情を浮かべたものだが、現在のユベントスは、スポルティングに攻め込まれると青くなった。
【番狂わせの可能性は50%】
アタッカーと化した守田も、それに乗じるように存在感を発揮した。89分には交代で入ったスペイン人の右ウイング、エクトル・ベジェリンの折り返しに反応。ニアポストに飛び込むように合わせた。シュートは50センチほどそれたが、守田が攻めてよし、守ってよしの好選手に見えた瞬間だった。
この日の守田を採点するならば10段階で7点は出せる。7.5と言いたくなる7だった。少なくともチームで最も活躍が目立つ選手だった。低い位置から高い位置にポジションを変えてフルタイム出場する姿は、大黒柱と呼びたくなる堂々たる存在感に見えた。
スポルティングの攻勢はロスタイムに入っても続いた。91分には枠内シュートを連発。交代出場のユベントスGK、マッティア・ペリンの神がかり的なセーブで得点には至らず、1−0で敗れたが、第1戦の終わり方としては上々だった。強者ユベントスに対し相性のよさを確認することができた。
第2戦、守田はどこでプレーするのか。高い位置なのか低い位置なのか。ウガルテが出場すれば、高い位置でのプレーが可能になる。その高いパスセンスとボール操作術は発揮されやすい。番狂わせが起きる可能性は50%近くある、とは筆者の見立てである。