皐月賞トライアルのスプリングSを制したベラジオオペラ(写真中央、黒帽)

 今年の3歳牡馬戦線は、かつてないほどの大混戦となっている。

 理由は3つある。まず、2つの2歳GIの勝ち馬が別路線を選択したこと。次に、2歳時からの評判馬が相次いで敗れるなどして、戦線離脱していること。そして、次から次へとニューフェイスが登場していることだ。

 もちろん、早くから評価の高かった馬で順調にクラシックへと駒を進めてきた馬もいる。だが、年明け以降に行なわれた注目のクラシック前哨戦、京成杯、若駒S、きさらぎ賞、共同通信杯、すみれS、弥生賞、スプリングS、若葉S、毎日杯の勝ち馬で、2歳時に重賞出走があったのは、GIII共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)を制したファントムシーフだけ。こうした結果を見ただけでも、目下の混戦ぶりがわかるのではないか。

 そういった状況のなか、いよいよ3歳牡馬三冠レースの第1弾、GI皐月賞(中山・芝2000m)が4月16日に行なわれる。その大一番を前にして、熾烈な争いに挑む3歳牡馬たちの『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。なお、今回はマイル路線に転じたドルチェモアは対象外とした。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、JRAのホームページでも重賞データ分析を寄稿する競馬評論家の伊吹雅也氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、目前のクラシックに臨む3歳牡馬の実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。

 1位は、GIIスプリングS(3月19日/中山・芝1800m)を豪快に差しきって、一躍有力候補に躍り出たベラジオオペラ(牡3歳/父ロードカナロア)。前回までは名前すら挙がっていない存在だったが、無傷の3連勝でトライアルを制して急浮上した。

伊吹雅也氏(競馬評論家)
「3月26日終了時点の一走あたり賞金は2390万円で、JRAに所属する現3歳世代の馬としては、GIウイナーのドルチェモア(3667万円)、リバティアイランド(2800万円)に次ぐ単独3位。これまでの活躍度とキャリアの浅さを掛け合わせたこの数字で、3歳牡馬クラシック戦線のライバルたちを上回ったわけですから、この路線においては"最も伸びしろがありそうな実績馬"と言えます。

 3戦3勝とはいえ、まだ1800mのレースしか経験していない点や、前走のスプリングSが道悪だった点が不安視されているらしく、皐月賞では人気の盲点になりそうな雰囲気。しかし、"東京・中山、かつ重賞のレース"において"着順が2着以内、かつ4コーナー通過順が2番手以下"となった経験のある馬は、2018年以降、5勝、2着3回、3着5回、着外23回(3着内率36.1%)と堅実ですから、私は積極的に狙ってみるつもりです」

本誌競馬班
「デビュー3連勝でスプリングSを快勝。しかも、そのスプリングSでは、先行抜け出しという過去2戦とは違って、中団からの差しきり勝ちを決めました。コース、馬場、ペースを問わず、どんなレースにも対応できそうな点は、相当な強みだと思います」

 2位は、ソールオリエンス(牡3歳/父キタサンブラック)。クラシックとの関連性が低いとされるGIII京成杯(1月15日/中山・芝2000m)の勝ち馬だが、インパクトのある勝ちっぷりが評価された印象だ。

吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「京成杯では若さを露呈しながらの勝利で、見た目のインパクトは強かったのですが、馬場選択がよく、時計自体は平凡。現段階で克服する課題はたくさんあります。

 しかし、バランスのいい体つきやつなぎのクッション性からすれば、素質の高いキタサンブラック産駒と判断できます。前向きさと一瞬で他馬を置き去りにした瞬発力は世代トップクラス。これからの伸びしろは大きく、皐月賞でどれぐらいの成長を示せるかが楽しみです」

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「京成杯は若さを見せながらの圧勝。(海外GIのドバイターフで2着、3着と好走している)ヴァンドギャルドの半弟らしく、瞬発力はかなりのものです。折り合いや距離の課題はありそうですが、ポテンシャルは最上級と見ています」


 3位は、フリームファクシ(牡3歳/父ルーラーシップ)。前回と同じ順位だが、GIIIきさらぎ賞(2月5日/中京・芝2000m)を勝って、ポイントをふた桁に乗せた。

土屋真光氏(フリーライター)
「折り合いに課題があるように見えましたが、きさらぎ賞ではそれをクリアしての勝利。加えて、接戦をモノにしたという点はかなり評価できます。(国内外のGIを制している)半姉ディアドラとは体型も異なり、速い芝にも対応できそう。

 ここ数年、きさらぎ賞組はクラシックで結果を出せておらず、同馬自身、多頭数での競馬が課題として残っていますが、期待のほうが大きいです」

吉田氏
「過剰なファイティングポーズを取ってしまい、きさらぎ賞までは課題を残したままでした。それでもその後は、急激に負荷をかけることなく、ゆったりとした調整過程で好気配。我慢が利くようになっている点は強調材料です。

 適度に柔らかみがあり、フットワークが伸ばせるフォームは好素材の証し。皐月賞での折り合いに、どれくらいの進境を見せられるかに注目したいです」

 4位は、10ポイントで2頭がランクインした。1頭目は、GII弥生賞(3月5日/中山・芝2000m)を制したタスティエーラ(牡3歳/父サトノクラウン)。父が果たせなかったクラシック獲りを狙う。

伊吹氏
「タスティエーラは、3月26日終了時点の一走あたり賞金が2233万円。JRAに所属する現3歳世代の牡馬としては、ドルチェモア(3667万円)、ベラジオオペラ(2390万円)、ソールオリエンス(2350万円)に次ぐ単独4位。前走の弥生賞や2走前のGIII共同通信杯は、それなりにハイレベルなメンバー構成でしたし、いずれも高く評価していい内容だったと思います。

 近年の皐月賞は、東京や中山の重賞で好走したことのある馬が優勢。また、出走数が5戦以上の馬は2018年以降、0勝、2着1回、3着0回、着外31回(3着内率3.1%)と苦戦していますから、キャリア3戦の本馬は素直に信頼していいのではないでしょうか」

 もう1頭は、タスティエーラを共同通信杯で下しているファントムシーフ(牡3歳/父ハービンジャー)。同馬はオープン特別の野路菊S(9月24日/中京・芝2000m)を勝って、GIホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)で4着と奮闘。2歳時から安定した成績を残している素質馬だ。

木南氏
「共同通信杯の覇者ファントムシーフ。同レースの時計や勝ちっぷりなどに派手さはありませんでしたが、3着に退けたのが評判馬ダノンザタイガー。さらに、4着のタスティエーラが次走の弥生賞を勝利し、6着のシーズンリッチも続くGIII毎日杯(3月25日/阪神・芝1800m)を勝っているように、負かした相手のその後を見れば、このレースのレベルの高さがわかります。クラシックでは『この馬が中心になる』と言っても過言ではありません」

 今回も順位、顔ぶれがガラッと変わった3歳牡馬ランキング。ここでランク入りした馬以外にも、有力馬はまだまだたくさんいる。クラシックの行方は、まさしく"戦国模様"。まずは皐月賞でどんなレースが見られるのか、注目である。