地下格納庫の製作とサンダーバード3号のウェザリング【達人のプラモ術<サンダーバード3号&発射基地>】

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【達人のプラモ術】
アオシマ
1/350 サンダーバード3号&発射基地
02/04

サンダーバード3号製作の第2回。キットには3号の発射基地(劇中に登場する地下格納庫)が付属しており、完成するとリアルなジオラマになります。今回は前回完成させた3号本体にサンダーバードメカには欠かせないリアルなウェザリング(汚れ)を再現。そして格納庫の製作とこちらもウェザリングを進めていきます。(全4回の2回目/1回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■現実に追い越されたサンダーバードの設定

サンダーバード3号といえば、トレーシー島(南太平洋のどこかにあるサンダーバードの本部基地)からドドドッと大空に向かってリフトオフしていく姿が非常にカッコ良い良ロケットで、スペースシャトルよろしく宇宙と地球を何度も往復できる宇宙機です。サンダーバード(以下TB)が日本で放映されたのは1966年、アメリカで人類を月に送り込むアポロ計画がスタートした年でもあります。サンダーバードは2065年の世界の物語という設定です。

ちなみに劇中だと当初、TBを設立したジェフ・トレーシーは月にはじめて降り立った宇宙飛行士で1970年生まれと言う設定だったんですが、現実の世界において1969年にアポロ11号は月着陸を果たしちゃったので、それだとおかしい、ということで「人類で初めて月への宇宙旅行を果たした人物」と変更されています。リアルがTBの世界観を追い越しちゃったがゆえの設定変更だったんですね。

それでもTBメカ、その中でもTB-3号の宇宙と地球を往復できる宇宙機という設定は、未来を見越していたとしか言いようがないですね。まぁ3号のデザインは単段式ロケットですが、イーロン・マスクが進めているスターシップ宇宙船は、1960年代のSFに登場するロケットまんまのデザインのですしね。改めてTB-3号はやっぱり時代を先取りしていたデザインなんだと思います。

 

■機体のウェザリング塗装

さて前置きが長くなりました。今回はまず、完成させたTB-3号にウェザリング塗装を施していきます。

DVDで、TB-3号が主役ともいえる第3話『ロケット太陽号の危機』を何度も見直して、機体の汚れ具合をチェック(登場するプロップは使われているモデルによってウェザリングも異なる)。

パネルラインへのスミ入れと密度感をアップさせるため、リアルタッチマーカーを使って綿棒でグラデーションを入れ、さらにTB-5号とドッキングした際の乗降ハッチなど、キットで再現されていない外板をそれらしく描きこんでいます。

機体後部はエンジンの熱と大気との摩擦?で高温に晒され焼けた質感をエアブラシで再現してみました。

余談になりますが、サンダーバードをはじめITC作品に登場するメカのパネルラインは、モールドではなく鉛筆で描かれていたものも多いそうです。

また前回機体の塗装はセミグロス(半ツヤ)で仕上げたのですが、ウェザリングを施したのちツヤ消し仕上げに変更しています。

 

■リアルタッチマーカーを使い手軽にウェザリングを再現

先にも書いたようにサンダーバードメカは使いこまれた作業機械的なリアルなウェザリングが特徴でもあるので、プラモ塗装の際にも必須になります。

エアブラシや専用塗料を使えばリアルな再現は可能ですが、リアルタッチマーカーを使うことで、単に汚し塗装を再現することもできます。

リアルタッチマーカーは汚れやぼかし塗装を手軽にで表現できる水性ベースマーカーで、ぼかしペンを併せて使うことで、塗装のやり直しもできるのでビギナーにもオススメです。5色セットで販売されていますが、1色単位で購入することもできます。

▲ミスターホビー「リアルタッチマーカーセット1(5色セット+ぼかしペン)」(1650円)

▲ミスターホビー「リアルタッチマーカーぼかしペン」(275円) 溶剤のみのペンで、リアルタッチマーカーを修正したりグラデーション(ぼかし)塗装をする際に使用する

▲機体のウェザリングはリアルタッチマーカー(グレー1・グレー2・ブラウン1)を使用して、キットのパネルラインを強調、さらにモールドのないハッチなどを描いている

▲リアルタッチマーカー(グレー1・グレー2)を使い再現したいパネルラインを描き、乾かないうちに綿棒で擦ることで、グラデーションがかかり、自然な仕上がりとなる

▲使用する色と擦る方向によってオイルのにじみや雨だれ的な汚れも再現できる

▲機体後部の胴体と3基のエンジンは、リアルタッチマーカーのブラウン1を使いパネルラインに沿って下方向に流れたイメージで汚れを描いている

▼Before

▲基本塗装のみ完了させた状態。この時点ではセミグロススクリアーで仕上げているので機体は光沢がある

▼After

▲ウェザリング塗装を完了させた状態。仕上げもつや消しに変更。TBメカはやはり汚し塗装があってこそだと改めて痛感

 

■地下格納庫の製作

本キットには、劇中に登場するTB-3号地下格納庫を再現できるようになっています。スケールは1/350ということで、完成するとTB-3号と格納庫と併せて、高さ約30センチと見ごたえのあるサイズになります。これまでプラモデル的には地味な存在だったTB-3号が、ここにきて存在感を発揮といったところでしょうか。いや〜良い時代になったもんです。

格納庫は5枚の壁面パネルを組み合わせて格納庫の下側部分を再現しているのですが、劇中の格納庫と比べて見ましたが、エッチングパーツ使った手すり等、細かい部分までよくディテールが再現されています。

で、このディテールを細かく塗り分けていくワケですが、マスキング→塗装→マスキングの繰り返し。これがなかなか大変(笑)。5枚のパネルを塗り分けるのに半日かかりました。見せ場でもあるのでここはきっちりと仕上げたいです。

床面と格納庫の上部分はパネルが印刷された厚紙製で、裏側にスチレンボードを張り付けて組み立てるのですが、そのままだといかにもチープな感じになってしまうので、とりあえずつや消しクリアーを塗装してリアルに見えるように質感を変えています。壁面も塗装後にスミ入れ塗料を使ってウェザリングを施しています。

▲格納庫の壁面は5枚のパネルを組み合わせて再現される。インスト(説明書)にはパネルのディテール細部の細かい塗装指示がなされている。仕上がるとかなりリアルな仕上がりとなる

▲パネルのディテールは、ほとんど一体成型されているのでマスキング→塗装→マスキングを繰り返して塗装していく

▲手間はかかるがリアルな仕上がりとなる

▲壁面の手すりがはエッチングパーツで再現

▲事前にプライマーで下地処理したのち、ホワイトで塗装して取り付ける

▲塗装が完了したパネルは、スミ入れ塗料(黒)を使いウェザリングを入れていく

▲完成した格納庫壁面下部分。中央壁面の『THUNDERBIRD3 LAUNCH BAY』は紙製のシールで再現されている

▲格納庫の床部分は印刷された厚紙なので質感がイマイチ。壁面部分と質感が合うようにつや消しクリアーを塗装している

 

■TB-3号の発進

発進指令を受けたアラン(TB-3パイロット)は、ラウンジに偽装された本部指令所のソファに座ったままTB-3号の格納庫のある地下へ降下。レールラインでソファごと3号に乗りこむ(3号の機体下部に乗りこみ用ハッチがある)。発進準備完了した時点で、島の端にあるラウンドハウスの中心部分から打ち上げられる。

なんでソファなんだ?とか、突っ込みどころは満載ですが、当時は3号のみならず各メカごとに異なる発進シークエンスがメチャメチャカッコ良かったんですよ。なので製作した格納庫を見るとニンマリしちゃいます。

▲仕上げた壁面パネルと3号を組み合わせてみた。かなり良い感じの仕上がりとなった

▲アオシマのサンダーバード秘密基地。小松崎茂画伯の迫力あるボックスアートでは、島右側のラウンドハウスから飛び出すTB-3号が描かれている。キットは残念ながら現在入手困難

次回は格納庫の完成を目指します。そしてキットにもう一味、リアルな仕上がりになるように改造を加えていきます。お楽しみに!

Thunderbirds TM and (c) ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2020.Licensed by ITV Ventures Limited. All rights reserved.

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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