iPhone 14シリーズのアメリカ版では従来の物理的なSIMカードスロットが廃止されeSIMのサポートが一般的になるなど、モバイル業界では物理SIMカードの撤廃がトレンドになりつつあります。そんな中、半導体メーカーのQualcommと電子機器メーカーのThalesが、フラッグシップSoCの「Snapdragon 8 Gen 2」内に「iSIM」を組み込んでいることを発表しました。

Qualcomm and Thales Unveil World’s First GSMA Compliant iSIM with Latest Snapdragon Mobile Platform | Qualcomm

https://www.qualcomm.com/news/releases/2023/02/qualcomm-and-thales-unveil-world-s-first-gsma-compliant-isim-wit

iSIM (integrated SIM): definition, benefits, perspective

https://www.thalesgroup.com/en/markets/digital-identity-and-security/mobile/connectivity/isim

Snapdragon 8 Gen 2 phones are the first to support built-in 'iSIMs' | Engadget

https://www.engadget.com/snapdragon-8-gen-2-isim-support-150031144.html

What is iSIM: Snapdragon 8 Gen 2 integrated SIM tech explained | Trusted Reviews

https://www.trustedreviews.com/explainer/what-is-isim-snapdragon-8-gen-2-integrated-sim-tech-explained-4305477

モバイル分野における世界最大級の展示会であるMWC 23の中で、QualcommとThalesは2022年11月に発表した「Snapdragon 8 Gen 2」の中に、SIMカードをSoCに統合する「iSIM」を組み込んでいることを明らかにしました。QualcommによるとSnapdragon 8 Gen 2は「世界初の商業的に展開可能なiSIM」をサポートするとのこと。

SoCに統合するiSIMは、デバイス内に専用のスロットが必要となる従来のSIMカードと異なり、省スペース化が可能になり、複雑なスマートフォンなどをさらに小型化することが可能です。iSIMと呼ばれるコンポーネントについては、2018年2月からイギリスの半導体メーカー「ARM」が開発を行なっていることを発表しています。

SIMカードをSoCに統合する「iSIM」をARMが発表、スマートデバイスの省スペース化が加速 - GIGAZINE



eSIMはデバイス内に約2.6mm×2.4mmのチップを搭載する必要がある一方で、1平方ミリメートル未満の大きさのiSIMはSnapdragon 8 Gen 2内で同様の機能を行なうため、デバイス内でSIM用の追加のスペースを設ける必要がないとされています。ThalesはiSIMについて「eSIMよりも大幅に少ない電力で済むため、大規模なIoT運用などが可能になります」と述べています。またiSIMは従来のeSIMよりも、必要に応じてキャリアを切り替える際の柔軟性が向上しているとのこと。

なお、QualcommとThalesはiSIMを利用できるデバイスについて発表を行ないませんでした。しかしQualcommによると、2027年までに3億台を超えるiSIM内蔵のSoCが出荷される予定とのこと。Qualcommは「新しいiSIMは、最高のセキュリティレベルを維持しながら、デバイス内で省スペース化を可能にし、組み立てとサプライチェーンに必要なコストを削減できるさらなる機会をメーカーに提供することが可能です」と述べています。



しかしテクノロジー系ニュースメディア・Engadgetは「Snapdragon 8 Gen 2は現時点でハイエンドチップであるため、より手ごろな価格のチップやデバイスがiSIMに対応するまで、広く普及しない可能性があります」と推測しています。