「洗濯物は裏返し」「年越しはざるそば」…“実家ルール”違いで夫婦げんか 勃発させないための予防策
「夜、爪を切ると親の死に目に会えない」「新しい靴は朝におろす」「霊きゅう車を見たら親指を隠す」…。日本には、地方ごとにまことしやかな伝承話が多々あります。昔は親から子どもに伝えられていましたが、現在はどうなのでしょう。今回は、「恋人・夫婦仲相談所」を運営する筆者が、“日本ならでは”ではなく、“家庭ならでは”の独特なルールや習慣で、夫婦げんかが起こらないための予防策を考えます。
「年越しに何を食べるか」で平行線
東京で生まれた涼香さん(36歳、仮名)の実家では、大みそかからおせちを食べるのが当たり前でした。父親が東北出身で、夜ご飯におせちを食べて、年越しにざるそばを食べるそうです。かたや広島出身の夫、利治さん(37歳、同)の実家では、大みそかの夜ご飯は温かいカキそばでした。天ぷらをたくさん揚げて一緒に食べるそうです。
3年間の同棲(どうせい)を経て結婚した2人ですが、同棲中、大みそかはそれぞれの実家に帰省していたので、それを知りませんでした。結婚後、初めて2人きりのお正月の準備をしようとしたとき、まずその違いでけんかになりました。
「夫は、『大みそかはカキそばを食べなきゃ気持ち悪くて年が越せない』って言うんです。それは私だって同じで、おせちをつまみながらお酒を飲んでテレビを見て、0時になったらざるそばで締めて初詣に行く、それが私にとっての正しいお正月なんです。だいたい、カキでだしをとるなんて、どれだけカキを買わなきゃいけないんだって話ですよ」
平行線をたどった2人は折衷案として、大みそかはおせちを食べ、年越しに利治さんの実家から送ってもらったカキを使ったカキそばを食べることにしました。それでも「温かいそばでは締まらない!」と、涼香さんはカキを別に食べてざるそばにしているそう。おいしいものがたくさん食べられていいじゃないかとも思いますが、生まれ育った中で培われた食事の習慣を変えるのはなかなか難しいようです。
裏にする? 表にする? 洗濯のルールが正反対!
佑美さん(39歳、仮名)と夫の要一さん(36歳、同)には、根深い生活ルールの違いがありました。
「夫の家族は洋服を脱ぐとき、絶対に裏返しにしないんです。正確にいうと、裏返して脱いでも、それを元に戻して洗濯かごに入れます。『そうしないと洗濯物をたたむときに大変だから』って言うんです。それが私の実家のルールとは真逆でした。
実家では、靴下は別として、その他の洋服は色落ちや洗濯時のこすれ、干しているときのゴミやほこりを気にして、必ず裏返しにして洗濯します。そして、洗濯物をたたむときは気にせず裏返しのままたたんで、自分が着るときに表にするんです。それが当たり前だったので、全く気にしていませんでした。
ところが、夫と結婚したらそこを指摘されてけんかに。結局、私も夫もマイルールは変えずに洗濯しています。もちろん、夫の実家に泊まったときには気を使うので、ちゃんと表にして洗濯かごに入れています。でも、問題は子どもが生まれてから。どっちのルールで育てるべきか、今から頭が痛いです…」
確かに、どちらかに統一しないと、お子さんにとっては混乱の原因になります。今のうちに統一会議を開いてくださいね。毎日の生活習慣の違いを放置すると、ストレスがたまっていくもの。別の大きなけんかをしたときにドカンと爆発します。
「同棲をする」「結婚して一緒に住む」。この2事象、“似ていて否なり”です。婚前同棲はお互いに、家の習慣や自分のこだわりをゴリゴリに押し付けることはないと思います。結婚すると、親族一同との交流が始まるので「うちの地元のお盆の習慣に合わせてね」とか「じいちゃんの葬式は、こんな感じで参列しよう」という話題が出てくるのです。
自分自身のルーツや習慣を、相手にも「従ってくれ」と頼んだり、共感を求めたりする。これが、同棲と結婚の違いではないかと思うのです。
長らく同棲していたときには、そんなそぶりを全く見せなかったのに、結婚した途端に自分の実家のルールに「従ってくれ」と相手に依頼するケースは多々あります。そうしたルールは特別なことだったり、すごく難しいことだったりするわけではなく、ユニークで、他人が聞けば思わず笑ってしまうようなものもあります。そして、パートナーに「自分や家族のことを深く知ってほしい」「今後一緒に人生を歩むのだから、家の風習を理解してほしい」というサインでもあります。
自分が長年、当たり前にしてきたことというのは、それが他の家と微妙に違うことに気が付かないものです。もし、結婚後にそれぞれの風習やルールがあると発見したら、拒否せず、面白がること。お互い、育ってきた環境やルーツを否定されるのは嫌なものです。2人の折衷案を考えればきっと楽しくなります。
日本の異文化に触れることができるのも結婚のメリットだと受け入れて、大人になりましょう。