神楽坂で和食デートを楽しむなら、その真骨頂は裏路地の先、石畳の奥にこそある。

古き良き街並みを歩き、趣ある佇まいのお店に入る。

そんなムード溢れるアプローチも手伝って、彼女との距離も普段より親密になれるはず!

今回は、デートを盛り上げる神楽坂の隠れ家和食を、2日連続でご紹介!

▶後編はこちら:(仮)裏路地の先、石畳の奥にこそ人気店がひしめく神楽坂の和食2


1.ここ1年、小皿で供する肉割烹が話題を席巻
『和牛小皿 しんうち』



行燈が灯り、幻想的なムードに包まれる芸者小道。途中、銭湯の前を横切ることから、別名“熱海湯階段”としても親しまれる。階段を下ったその先に店はある

夜の芸者小道の風情は無敵。少し遠回りをしてこの石畳を歩きたい


デートで利用するなら、待ち合わせはぜひ表通りで。路地の多い神楽坂にあっても、この店へ至る動線は刺激的だ。

見番横丁から左へ、ふたり肩を寄せ合ってようやく通れる小道を下る。行燈が灯る仄暗い石段もあり、時代まで踏み越えてしまったよう。

ビルの地下に潜むロケーションも魅力で、辿り着くだけでテンションが上がる。


美味しいところをちょっとずついただく贅沢さがたまらない

「ローストビーフ」800円。しっとり食感に感激。旨みの強いウデ肉を主に使って仕込む


「福井で約50年の焼肉店が営む肉割烹です」と、店長の中山真吾さん。

長年の実績で築いた業者との信頼関係から仕入れる和牛は飛騨牛が中心で、ほかに若狭牛など。

内臓は芝浦にある「食肉市場」からの直送で、刺身で提供できるほどの鮮度を誇る。



「ハツ刺し」850円。歯切れの良さに驚く。熊本の甘い醤油と相性が良く、名古屋コーチンの卵黄を和えればコクが増す


そんな質のいい素材を小皿料理に仕立て、アラカルトで提供する。それこそがこの店の打ち出した新基軸。

「食べたい部位だけを少しずつ」という使い勝手のよさに、今後は神楽坂で主流となりそうな予感も。




「霜降りミノ刺しポン酢」800円。

軽く湯がいたミノは、自家製ポン酢と鬼おろしでさっぱりと。




「レバー串」450円。

サッと炙っただけでトロッと艶かしい看板メニュー。




「チーズメンチカツ串」600円。

和牛100%で仕込む贅沢メンチで、チーズもたっぷり。




「飛騨牛ステーキ」2,200円。

仕入れによって部位は替わるが、この日はヒレとシンシン。炭焼の豊かな香りに福井特産の「地がらし」がよく合う。




芸者小道の突き当りに位置する店は半地下にあり、通りから室内が覗ける構造に。

日が沈むと、ガラス越しに温かみある灯りが漏れる。



「事前にご予約くだされば、希少な和牛のタンもご用意できます」

それは大人の街にふさわしい、肉割烹の最新系ともいえよう。


■店舗概要
店名:和牛小皿 しんうち
住所:新宿区神楽坂2-21 小栗横丁ビル B1F
TEL:03-5946-8548
営業時間:17:00〜(L.O.22:00)
定休日:火曜
席数:カウンター13席



2.愛媛から直送される食材をセンスよく使いこなす新店
『日本料理 初志』



瀬戸内産の「真鯛」。鯛骨の出汁と鰹と昆布の出汁で炊いた米に、鯛の漬けをのせた「鯛めし」。仕上げの黄身醤油が食指を動かす。いい鯛が入った日限定の〆

華やかに彩られた愛媛の逸品たちの仄かな香りが、鼻腔をくすぐる


神楽坂の中腹を過ぎた右手側、人ひとりがやっと歩ける狭い路地を進む。

誰もが不安を覚えるその道の先に飲食店が集まるビルがあり、『日本料理 初志』は2階に位置する。

6席だけのカウンターに立つのは、店主の池田恒平さん。

京都『菊乃井』、南青山『てのしま』で研鑽を積み、「自分は不器用なので引き出しは多くある方がいい」と中華、フレンチ、鮨まで学び、昨年9月に晴れて独立開業。



愛南町産の「牡蠣」。揚げた牡蠣にあやめ雪かぶのすり流しを合わせた「牡蠣のお椀」。愛南町の牡蠣は小ぶりながら濃厚だ


料理人を志した頃から、店を開く際は「地元・愛媛の美味しい魚を東京に伝える店にする」と決めていたとか。

開業前には生まれ育った宇和島に向かい、多くの生産者と会ったという。

水産高校出身だったこともあり、先生や先輩の助けを得て上質な魚の入手経路を得た。



宇和島産の「ブリ」と「伊予柑」。ブリの骨からとった出汁でタレを拵え、伊予柑の実と陳皮をのせた「ブリの照り焼き」。ブリの脂に伊予柑の爽やかな香りがよく合う。すべてコース(16,500円)より


そうして提供されるのは、伊予柑が香るブリの照り焼きなどで、同じ産地の素材が織りなすひと皿は相性抜群。

〆に真鯛の切身がのった鯛めしをいただけば、鯛骨の出汁で炊いた米のひと粒ごとがご馳走で、口福の極み。

真新しいセンス溢れる空間は心までも浄化してくれる。帰り道は来た時より、ふたりの距離が近づいているに違いない。


■店舗概要
店名:日本料理 初志
住所:新宿区神楽坂4-2 世喜ビル E
TEL:03-6280-8308
営業時間:[一部]17:00〜
     [二部]19:45〜
定休日:日曜、不定休
席数:カウンター6席



3.優しい女将が醸し出す、高すぎない敷居が心地よい
『日本料理 神楽坂 仁』



新築ビルの2階にあり、白木を多用した店内は明るく、和やかな雰囲気。料理長が間近に感じられるカウンター席が、大人デートには最適

これから大人の階段を上るふたりなら、まずこの店を目指せばいい


この店では女将・飯田依子さんの笑顔にまず癒される。

神楽坂に慣れていないふたりでも、快く迎え入れてくれる、温かさがある。

「本物をカジュアルに。それが私どもの掲げたコンセプトです」



女将の飯田依子さんは、唎酒師の資格も保有。旨口の銘柄をそろえる


同じ志を抱き、本物を手がける料理長は杉原徹也さん。

10代で大阪・ミナミが本拠の料亭『大和屋』に入り、以来、各店を巡って17年も上方料理を学んできた。

女将も同店の出身。杉原さんの人柄がにじみ出た穏やかな料理に惚れ込んで、昨年10月、そろって独立した。



コース冒頭を彩る「前菜」。この日はイイダコの旨煮、シラウオと菜花のお浸し、ハマグリ酒蒸しなど初春を表現したラインナップ。料理はともに全7品が登場する「雪コース」(10,000円)より


「食べると心が和みます」と女将が微笑む通り、出汁は包み込まれる優しさ。

利尻昆布と鰹節で丁寧に引いた結果だが、まろやかに仕上がる理由にはきっと人徳もある。

季節の食材を使った献立が2週間ごとに入れ替わるという点では、35歳という料理長の若い感性も活かされる。




コース中盤で提供される「温物」。

この日はアイナメとタケノコ、菜の花の炊き合わせ。新海苔が香る銀餡を添えた。



テイクアウトの「カニクリームコロッケ」が人気。ホワイトソースはチーズ入りで、ズワイガニの身もたっぷり。2,300円


1万円の「雪コース」ならボリュームもあり、カウンターにふたりで並んで味わえば至福。

神楽坂に行きつけの日本料理店がある。それだけで大人になったと実感できるだろう。


■店舗概要
店名:日本料理 神楽坂 仁
住所:新宿区神楽坂4-2 世喜ビル D
TEL:03-6826-9154
営業時間:【火〜金】17:00〜(L.O.21:00)
     【土・日・祝】ランチ 11:30〜(L.O.14:00)
            ディナー 17:00〜(L.O.21:00)
定休日:月曜、ほか不定休あり
席数:カウンター6席、テーブル8席



4.さりげないお洒落を散りばめた一軒で、和食の楽しさに触れる
『日本料理 斗南』



芸者新道沿いにあるが、道沿いに入り口を作るのではなく、あえて小道を作り、入店までの高揚感を演出

街の歴史を色濃く残す芸者新道というアプローチに高揚する


初めての「本格的な日本料理」なら、こんなお店がいい。

場所は、芸者衆が近道に利用する芸者新道。趣あるアプローチに思わず緊張してしまいそうだが、ご安心を。

着物姿の気さくな女将が、明るい笑顔で出迎えてくれる。



左官職人の吉村 誠さんによる白漆喰の土壁や島根の「吉原木工所」の組子、「亀谷窯業」の石州瓦タイルなど、意匠を尽くした内装が見所


店内へと進み、まず目に入るのは、ゆったりとした白木のカウンター席。

どっしりとした一枚板のカウンターに腰掛ければ、これから始まるディナーへの期待感もひとしおだ。


ふたりで盛り上がるような、撮りたくなる料理が続々と


高級割烹を思わせる雰囲気ながら、月替わりの「おまかせコース」は9,500円からと、思いのほかリーズナブルな価格設定もうれしい限り。

乾杯の後、登場するのは特製の木箱。



コースの「彩り前菜 木箱盛り」。手前右から、「ふきのとう田楽」、「長芋の真砂和え」、軽やかに揚げた「白魚白扇揚げ」。奥は、右から「河豚黄金焼き」、「海鼠のみぞれ和え」、白板昆布を菜の花にあしらった「菜の花の翁漬け」


6種の前菜がその正体だが、これを女将が開ける瞬間は、ぜひ動画でも切り取りたい。

また、天草黒毛和牛を使った人気の「葛すき焼き」は、グツグツとした状態でサーブ。



「天草黒毛和牛の葛すき焼き」。島根の石州瓦を使用。葛で僅かにとろみをつけることで肉の旨みを逃さない。料理はいずれも12,000円のコースより


ふたりで食べ頃を待ちつつ、互いに目を見合わせたくなる瞬間だ。

このように、伝統の手法を守りつつ、独自のアレンジでモダンなセンスを加味している。

ぜひ小粋な夜を楽しみたい。




女将と仲居さんが着物でお出迎え。寄り添うような接客で心を和ませてくれる。


■店舗概要
店名:日本料理 斗南
住所:新宿区神楽坂3-2-31 大宗第三ビル 1F
TEL:03-6228-1984
営業時間:ランチ 11:30〜(L.O.14:00)
     ディナー 17:30〜(L.O.21:30)
定休日:日曜、祝日
席数:カウンター7席、テーブル16席




古き良き街並みを感じる風情こそ、神楽坂デートの醍醐味。

和食の名店へ彼女を誘い出すなら、ぜひ裏路地に潜む隠れ家をチョイスして!

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