マイホームを購入しようと思い立ったとき、まず考えるのがマンションにするか戸建てにするかでしょう。それぞれに良さがあるので、迷う人も多いと思います。そんなお悩み中のあなたのために、それぞれの特徴やメリットなどについて、じっくり考えていきたいと思います。

マンションと戸建て、それぞれを選んだ人の理由は?

まず、実際にマンションや戸建てを選んだ人に、その理由を聞いた調査結果を見ましょう。(株)トナリスクでは、【一軒家を購入した約1000人に調査】「マイホームを『一軒家』にした理由ランキング」と【マンションを購入した約500人に調査】「マイホームを『マンション』にした理由ランキング」を発表しています。

出典:トナリスク(2022/12/27発表)

戸建てにした理由の第1位は、「隣と距離がある(上下階がない)ため、騒音・気遣いが減る」(47.1%)でした。戸建てはマンションと比べると、独立感があるのが最大の特徴でしょう。隣家と距離があるため、音やプライバシーへの配慮を抑えられます。もちろん建物内の上下階の音は聞こえますが、家族なので気にならないということでしょう。

第2位以降上位には、「一戸建てが好き(マンションという選択肢が元々なかった)」(45.3%)、「庭がほしい」(41.9%)、「土地が資産になる」(35.8%)、「部屋数・広さがほしい(家族が増える、二世帯住宅など)」(35.6%)などが挙がりました。

出典:トナリスク(2023/1/3発表)

これに対して、マンションにした理由の第1位は、「戸建てよりセキュリティがよい(戸建ては泥棒などが怖い)」(58.9%)でした。今は多くのマンションに、オートロックシステムのモニター付きインターホンが設置されているからでしょう。自宅の鍵に加えて、エントランスの自動ドアの施錠が加わり、セキュリティが二重になっているだけでなく、モニターで来訪者が確認できるので、不審者の侵入を防ぐことができます。

第2位以降上位には、「建物や庭の管理・メンテナンスがラク」(54.8%)、「駅から近い、勤務地に近い」(46.4%)、「戸建てよりもコストが安い」(29.9%)などが挙がりました。

マンションと戸建て、コストや資産性で見るとどう違う?

マンションと戸建ての違いについて、まず、価格面で考えてみましょう。マンションを選んだ人の第4位に、「戸建てよりコストが安い」が挙がっています。ただし、最近はマンションの価格が上昇しています。不動産経済研究所が公表した「首都圏マンション市場予測~2023年の供給予測~」によると、2022年1月~11月の新築マンションの平均価格は、首都圏で6,465万円になっています。一方、東京カンテイが公表した「新築一戸建て住宅平均価格」の2022年12月の平均価格は、首都圏で4,424万円でした。つまり、エリアによっては、必ずしもマンションのほうが安いとは言い切れない市況になっているのです。

次に、メンテナンスコスト、つまり維持管理費で見るとどうでしょうか。マンションを選んだ人の第2位に「建物や庭の管理・メンテナンスがラク」が挙がりましたが、これは日々の維持管理には管理費を、建物の修繕には修繕積立金を全戸から徴収して、委託した管理会社の助言によって管理組合が維持管理をしているからです。つまりは、それだけコストがかかります。だからといって、戸建てで維持管理に費用が発生しないわけではありません。戸建ては維持管理を自己責任で行うことになりますから、庭木の手入れや外壁・屋根の補修工事などを自身で計画的に実施する必要があります。結局、費用はかかりますので、一概にマンションが高いということにはなりません。

最後に、資産性についてはどうでしょう? 戸建てを選んだ人の第4位に「土地が資産になる」が挙がり、マンションを選んだ人の第7位に「戸建てより価値が下がりづらい」が挙がりました。これは、どちらも正しいのです。

減価償却資産の耐用年数というものがあります。経済的な耐用年数と言えますが、木造戸建てで22年、鉄筋コンクリート造のマンションで47年などとなっています。したがって一般的に、戸建ての価値は建物の価値が22年間でなくなり、以降は土地の価値を維持するような動き(22年間で大きく下がって以降は横ばい)になり、マンションの価値は47年間で徐々に下がっていくという動きになります。実際の資産価値は、物件の立地や広さなどによって異なりますが、マンションと戸建てでは、資産価値の下がり方が違うと理解しておきましょう。

マンションと戸建て、住み心地は大きく違う!

実は、マンションと戸建てで大きく異なるのが「住み心地」です。住み心地を変える要因となるのが、以下の4点です。

住み心地を変える4つの要因
建物の構造が、独立型(戸建て)か共同型(マンション)か
住宅の構造が、多層(戸建て)か単層(マンション)か
共用設備が、ある(マンション)かない(戸建て)か
管理規約などのルールが、ある(マンション)かない(戸建て)か

戸建ては建物が独立しているので、隣家への音やプライバシーの問題が軽減されます。さらに、間取りから言ってマンションよりも住宅に窓が多くなり、明るくて風通しが良い部屋が増えます。庭がある家が多いのも、独立性が高い由縁でしょう。

一方マンションは、共同住宅でメゾネット住戸を除きフラットになっています。戸建ての場合は、地方では平屋もありますが、一般的に2階建てが多く、都心では3階建ても多くなります。このため、マンションのほうが住宅内の移動が楽で、生活動線が短くなります。また、マンションは角住戸を除いて、戸建てよりも窓が少なく、直接外気にさらされる壁が少ないため、戸建てと比べて断熱性が高く省エネになります。

また、戸建てには、法規制などはあるものの、マンションのように管理規約がないので、たとえばペットの飼育やリフォームの内容などは自身の判断で決めることができます。これに対して多くのマンションには、オートロックシステムや宅配ボックスなどの共用施設・設備があり、24時間ゴミ捨てが可能など、生活の利便性を求めることができます。

このほかに、住宅の市場性の違いもあります。例えば、戸建てのほうは建物面積の広いもの、部屋数の多いものが探しやすく、マンションのほうが駅に近いものが探しやすくなるなどです。

以上から、戸建てとマンションのメリットをまとめてみましょう。

戸建てのメリット
●独立性が高いので、隣家へ音やプライバシーの気兼ねが少ない
●窓が多いので、明るく風通しが良い部屋が多い
●庭があるなど、緑を身近に感じやすい
●生活ルールやペット飼育、リフォームの問題を自分で決められる

マンションのメリット
●セキュリティ面で安心できる
●住宅の断熱性(省エネ効率)が戸建てより高い
●フラットで移動しやすく、生活動線が短い
●共用施設が利用できる(大規模マンションなら種類も多い)

ただし、これは一般論で、実際には物件によって住み心地は変わります。例えば、マンションで専用庭付き住戸なら緑を感じやすく、高層階住戸なら見晴らし・眺望が期待できるかもしれません。角住戸なら窓が多くなるので、一般的な住戸より断熱性が下がる場合もあります。

一方、戸建てでも、防犯カメラや宅配ボックスを設置することはできますが、その分は取得費に影響するでしょう。また、戸建てで大規模なタウン型の場合は、共用施設があったりします。このように、物件個別に住み心地は違ってきます。

そのほかにも、こんな点で違いが…

ほかにもさまざまな点で、マンションと戸建てでは違いがあります。

一般的に、戸建てには駐車場がありますが、マンションの場合は管理組合に駐車場使用料を払って借りる形になります。また、都心部のマンションでは、全戸分の駐車場がなかったりします。駐車場使用料は外部で借りるよりは低額に設定されていますが、毎月の負担になります。ただし、メンテナンスはマンションとして行います。駐輪場も同様です。

マンションと戸建てでは、住宅市場の動向も異なります。一般的に、マンションは駅近くで探しやすく、戸建ては建物面積の広いもの、部屋数の多いものが探しやすくなります。また、住宅価格については、マンションは経済動向の影響を受けやすく、戸建ては比較的安定した値動きをします。これは、戸建ては実際にマイホームとして買われるのに対して、マンションは不動産投資の対象にもなるといった違いなどによるものです。

また、品質の均一性にも違いがあります。マンションは一定のデベロッパー(不動産の総合デベロッパーまたはマンション専業デベロッパー)が競い合って供給するので、同時期のマンションであれば比較的同じような性能・品質になっています。一方、戸建ては総合デベロッパーや大手のハウスメーカー、全国あるいはエリア限定の工務店、地元の工務店など、さまざまな事業者がそれぞれの特性を生かして供給をしています。1棟2棟規模の戸建てから街づくりを意識したまとまった規模の戸建てまで、その商品性も異なります。

わが家はどっちが向いている?

のびのび子育てしたいという家庭であっても、自然豊かな立地の戸建てで走り回って遊ばせたいという家庭もあれば、マンション内の同世代の子どもたちとセキュリティゾーン内の共用施設で自由に遊ばせたいという家庭もあるでしょう。前者なら郊外の戸建てを選び、後者なら大規模なマンションを選ぶという結論になるかもしれません。

また、塾やスポーツ施設に通わせたい家庭なら立地を重視して選ぶかもしれませんし、犯罪から子どもを守りたい家庭なら街の治安や学校との距離を重視するかもしれません。このように、まずは「どんな暮らしをしたいのか」を考えて、どんな場所でどんな住み心地を求めるかを具体化していくと、自然にどちらかわが家に向いているかが分かってくるのではないでしょうか。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)