確定申告の期間は、例年「2月16日から3月15日まで」とされています。2023年も例年どおりの対応となる予定です。

この記事では確定申告の期限について、今年は新型コロナウイルス感染症による延長措置は予定されているのか、期限に間に合わなかった場合はどうなるのか解説します。また、昨年の確定申告からの変更点も併せて紹介しますので、参考にしてみてください。

2023年提出分確定申告の期間は?

2022年分(2023年に提出する)所得税及び復興特別所得税の確定申告の期間は、2023年2月16日(木)から3月15日(水)までです。

ちなみに、贈与税の申告は2023年2月1日(水)から3月15日(水)まで、消費税の確定申告と納付は2023年3月31日(金)までとなっています。

確定申告によって納税するのではなく所得税の還付を受ける(払い過ぎた税金が戻ってくる)場合は、上記の期間に関係なく2023年1月1日から5年間いつでも申告可能です。

新型コロナウイルス感染症による延長措置は今年もあるのか?

ここ数年の確定申告では、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮した期限延長措置が取られてきました。

2021年提出分では一律に期限が4月15日までとされていましたし、2022年提出分は申告書の右上や入力画面の特記事項欄に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記入するだけで延長できるようになっていました。

しかし今年(2023年提出分)は、個別の延長申請は可能なものの、昨年(2022年提出分)ほどかんたんな方法での申請はできない見込みです。

2023年提出分では、納税者本人や税務代理等を行う税理士等が新型コロナウイルスに感染したために確定申告が間に合わなかった場合などは「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出し、税務署長の承認を受けることになっています。

やむを得ない理由で期限に間に合わなかった場合はどうすればいい?
確定申告は本来、決められた期間中に行う必要があります。しかし、やむを得ない事情があってそれが難しい場合には、個別に期限の延長を申請することができます。

延長を希望する場合は、税務署に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出しましょう。書類は国税庁の公式サイトからダウンロードできます。また、わざわざ窓口まで行かなくても、郵送やe-Tax(電子申告)での提出も可能です。

提出時期は「やむを得ない事情がやんだあと相当の期間内」とされています。申請が承認されれば、やむを得ない事情がやんだ日から2ヶ月以内まで申告期限が延長されます。

個別延長が認められるやむを得ない事情とは?
では、個別の期限延長が認められる「やむを得ない事情」とはどのようなものなのでしょうか。例として、以下のようなケースが挙げられます。

納税者本人や税務代理等を行う顧問税理士、経理責任者などが
・新型コロナウイルスに感染した、もしくは感染の疑いがある場合
・濃厚接触者となった場合
・医療機関や自治体などから外出自粛要請を受けた場合
・海外滞在中に入出国制限がかかって帰国できなくなった場合
・感染拡大による経理担当部署の閉鎖や学校の臨時休業の影響を受けた場合
など

なお、個別延長の措置は災害時に利用できる方法として以前から存在しています。新型コロナウイルス感染症に限らず、火事や台風などの被害を受けた場合にも利用できますよ。

延長措置を受けるためには「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に、どのような被害を受けたか具体的に記載する必要があります。

税務署では個別の状況を一つ一つ確認し、延長が妥当かどうか審査します。そのため、税務署から記載内容についてのお尋ねがある場合もありますし、「申請したのに延長が認められなかった」という可能性もあるので要注意です。

2023年提出分確定申告と税制面の主な変更点とは?

確定申告では、毎年のように書式が変わったり税制が変わったりしています。ここからは、2022年分(2023年提出分)の確定申告は前年と比べてどこがどう違うのか、おもな変更点について見ていきましょう。

確定申告書Aが廃止される
確定申告に使う「確定申告書」ですが、従来は会社員などが利用できる「確定申告書A」と誰でも利用できる「確定申告書B」の2種類がありました。

それが2022年分(2023年提出)以降は、確定申告書Bに一本化されます。書類の正式名称は「令和○年分の所得税及び復興特別所得税の申告書」になり、「A」や「B」の表記はなくなります。

今まで「確定申告書A」を使っていた人にとっては、書類の項目数が増えて複雑になったように感じるかもしれません。しかし記入の必要がない項目も多いので、そこまで大きな影響はないでしょう。

修正申告書第五表(別表)が廃止される
さらに、これまで修正申告(一度行った確定申告を修正するための申告)のために使われていた「申告書第五表(修正申告書・別表)」も廃止されました。その代わり、2022年分(2023年提出)からは申告書の第一表に修正申告用の入力欄が追加されています。

前述の「確定申告書A」同様、書類の数が減って一体化・簡素化が進んでいます。記入する側もそれをチェックする税務署側も、双方が作業を進めやすくするための工夫と考えられます。

一定規模以上の雑所得の申告に必要な書類が増える
2022年分(2023年提出)から、前々年の雑所得の年間収入が1,000万円を超えている場合に収支内訳書の提出が必要になりました。

雑所得には、公的年金のほか原稿料など副業に関する所得も含まれます。2020年に1,000万円超の雑所得収入があった人は、2023年提出分の確定申告書に収支内訳書を添付することになりますので注意しましょう。

収支内訳書には、1年間の売上高のほか仕入額、広告宣伝費や接待交際費といった経費などを記載します。

書類を入手して手書きすることもできますし、国税庁の公式サイト内の「確定申告書等作成コーナー」を使って作成することもできます。2023年提出分以降からスマホでも作成可能になりました。

なお、前々年の雑所得の年間収入が1,000万円以下であっても、300万円を超えている場合には請求書や領収書などを5年間保存する必要が生じます。

今回、事業所得と雑所得の区別が明文化されました。国税庁は当初「年間収入300万円以下の副業はすべて雑所得」とする方針でしたが、その後の議論の末、帳簿書類の記録と保存の有無を踏まえて判定することで決着しました。

電子データで提出が可能な証明書類が増える
年末調整や確定申告の際には、控除証明書などの「添付書類」が必要になることがあります。

これまでは所定の書面でしか提出できなかった社会保険料控除や生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除などについて、2023年提出分から電子データやそれを印刷した書面での提出が可能になりました。

ちなみにe-Taxで提出する場合は、生命保険料控除や寄附金控除、住宅ローン控除などの書類はすでに提出不要となっています。

住宅ローン控除の要件が見直される
2022年度の税制改正で、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の内容が見直されました。以下のようにさまざまな変更点があります。

・適用期間が延長(2025年12月31日までに入居した人が対象)
・控除率:1%→0.7%
・新築住宅や買取再販住宅の控除期間:10年→13年
・借入限度額:4,000万円→2022年入居の場合、2,000万円~5,000万円
・適用対象者の所得要件:3,000万円以下→原則2,000万円以下
・床面積要件:50平方メートル以上→所得1,000万円以下なら40平方メートル以上50平方メートル未満でも可

これまで一律だった借入限度額が、住宅の環境性能や入居年に応じて異なるようになります。また、控除率は下がりましたが、所得や面積の要件などこれまでより緩和されて利用しやすくなっている部分もあります。

なお、この改正はすでに住宅ローン控除の適用を受けている人には影響しません。改正後の制度の対象になるのは、住宅ローンを組んで2022年1月以降に入居した人です。

特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の要件が見直される
マイホームを買い換えて譲渡益が出た(購入時より高い金額で売れた)場合、その利益への課税を繰り延べられる特例があります。これを「特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例」といいます。

もともとは2021年12月31日までとされていましたが、期限が2年間延長され、2023年12月31日まで適用できることになりました。

今回の延長と併せて、適用を受けるための物件の要件が追加されています。買い換えのために新たに購入する物件については、一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上)に適合していることが求められるようになりました。

確定申告の期間に関するよくある質問

最後に、確定申告の期間に関するよくある質問にお答えします。

2月16日より前に確定申告書を提出することはできないのか?
通常の確定申告の受付は2月16日からですが、それより早く確定申告書ができあがった場合は、早めに提出してしまっても問題ありません。

2月15日以前に提出した分は税務署が預かるという扱いになり、2月16日以降に正式に受け付けたことになります。もちろん、早めに提出しても適正な「期限内申告」として扱われます。

また、還付申告(払い過ぎた税金を返してもらうための確定申告)はそもそも通常の確定申告期間に関係なく、1月1日以降であれば提出可能です。

確定申告の期限に遅れたらどうなる?
還付申告(払い過ぎた税金を返してもらうための確定申告)なら、通常の確定申告の期間(2月16日から3月15日)に手続きできなくても問題ありません。5年以内であればいつでも申告可能で、特にペナルティなどもありません。

一方、税金を納めるために行う通常の確定申告では、期限に遅れると「期限後申告」という扱いになります。そうなると無申告加算税や延滞税がかかったり、青色申告ができなくなったりする可能性があります。

決められた期限を守れないと金銭的な負担が増えることにつながるため、なるべく早く着手して申告を済ませる、どうしても難しい場合は税務署に期限延長を申請するなどの対応を取りましょう。

まとめ

2023年提出分の所得税の確定申告は、2023年2月16日から3月15日までに行います。

期限に遅れると、追加の税金を支払うなどのペナルティが発生することがあるので注意しましょう。どうしても期限を守れない場合は、黙って放置するのではなく税務署に期限延長を申請することが大切です。

今年も確定申告や税制面での変更点があります。それらを理解したうえで、余裕を持って早めに申告を済ませるよう心がけましょう。