世界最大の飛行機An-225「ムリヤ」に“乗れる”! 米マイクロソフトがデジタル復活 売上で実機も再建へ
ウクライナのアントノフ航空が運航していた世界最大の飛行機An-225「ムリヤ」。ロシアの攻撃で焼失しましたが、その復活にアメリカのマイクロソフトが乗り出しました。支援の一環としてフライトシミュレーターの有料配信を始めるそうです。
名機復活のためにマイクロソフトとアントノフがタッグ
ウクライナのアントノフ航空は2023年2月3日、ツイッターを始めとした自社のSNSアカウント上で、かつて運航していた大型輸送機An-225「ムリヤ」(ウクライナ語で夢や希望という意味)の使用権に関して、マイクロソフト社とライセンス契約を結んだと発表しました。
マイクロソフト社は、家庭用ゲーム機「Xbox」やパソコンで楽しめるフライトシミュレーター「Microsoft Flight Simulator」を発売しており、今回のライセンス契約は同ソフト内でAn-225を登場させるために結ばれたそうです。
離陸する世界最大の輸送機An-225「ムリヤ」の実機。カラーリングは白をベースにウクライナの国旗カラーがピンポイントで入れられている(画像:アントノフ航空)。
An-225「ムリヤ」は、世界最大の航空機と呼ばれていた輸送機です。もともとは同時期に開発されたソ連版スペースシャトル(宇宙往還機)「ブラン」を輸送するために作られたもので、1989年から旧ソビエト連邦で運用が始まりました。
機体サイズは全長84m、全幅88.71m、全高18.1mあり、その巨体を飛ばすために6基ものD-18ジェットエンジンを装備。輸送機としての能力を示す貨物搭載量は、アメリカ最大の軍用輸送機C-5「ギャラクシー」の2倍以上となる、最大250tを誇っています。
ソビエト連邦崩壊後は、ウクライナの工場にしばらく放置されていましたが、2000年に整備されて飛行を再開。その後はアントノフ航空によって超重量貨物を運ぶ民間輸送機として活躍しています。しかし、2022年に起きたロシアによるウクライナ侵攻で、An-225が駐機していたアントノフ国際空港が攻撃を受け、その戦闘によって機体は完全に破壊されてしまいました。
唯一無二であった巨人機の消失は世界中の航空機ファンたちを落胆させましたが、今回「Microsoft Flight Simulator」でそのAn-225がデジタル的に復活した形となります。コックピット内や操縦感覚をできる限り再現するために、データ作成にはアントノフ航空のスタッフも協力しており、かつてAn-225のパイロットであったドミトロ・アントノフ氏もテストプレイを行っているそうです。
配信開始日は「ムリヤ」にとって節目となる日
「Microsoft Flight Simulator」は2020年8月に発売されていますが、累計ユーザー数は1000万人を超えており、実機パイロットからホビーユーザーまで幅広い層が楽しむ巨大コンテンツとなっています。バーチャル世界とはいえ、そこでAn-225の姿を再現することは、航空文化の面からでも大きな意義があるといえるでしょう。
ちなみに、今回の「Microsoft Flight Simulator」でAn-225を再現したことは、実機のAn-225復活プロジェクトを支援することにもつながるそうです。
昨年(2022)年2月にアントノフ空港で破壊されたAn-225「ムリヤ」。コクピットと胴体前部は焼失しているが、主翼の一部分は残っており、再建プロジェクトでは一部の再利用も検討されている(画像:アントノフ航空)。
ウクライナのゼレンスキー大統領は昨年(2022年)5月、未完成だった2号機を使ってAn-225を復活させると明言。そのための再建計画も発表しています。2号機の機体フレームは6〜7割程度完成しているそうですが、それでもアントノフ航空では再建費用に5億ドル以上かかると想定しています(現在より正確な金額を査定中とのこと)。
今回、An-225をフライトシミュレーター内で再現する(楽しむ)ためのデータは、有料コンテンツとして約20ドル(約2573円)で販売され、その収益は同機を再建するための支援金としてアントノフ航空に支払われるそうです。
マイクロソフト社では、An-225のデータ配信日を2月27日に予定。この日はAn-225がアントノフ国際空港で破壊された日であり、1周年に合わせる形とする模様です(PC版のみ、Xbox版は後日)。