交通事故後の治療費を自己負担したくない! 数日後に症状が出たときの対処法を解説

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むちうち損傷などの症状が事故直後に出たとしたら、「事故による変化」と考えられるでしょう。しかし、数日後の症状であれば、事故以外の要因も考えられます。その際、加害者へスムーズに治療費を請求するために何が必要なのでしょうか。今回は、Medical DOC編集部が、柔道整復師の飯島先生(はなまる鍼灸接骨院)を取材しました。

交通事故の被害で起こりやすい怪我

編集部

交通事故では、どんな怪我が多いのでしょうか?

飯島先生

頚部(けいつい)捻挫、いわゆる「むちうち損傷」に加えて、打撲や挫傷や骨折、脱臼などが挙げられます。いずれも、外から力が加わることによる骨や関節、靭帯、筋肉へのダメージです。なお、捻挫や挫傷や打撲などの場合、X線検査に現れないこともあるので、問診が重要になります。

編集部

そうした自覚症状が、事故直後に出ない場合もあるのですか?

飯島先生

あり得ます。事故によるショックで精神が興奮状態にあると、痛みに気づきにくくなるからです。ほか、事故によって生じたわずかな関節のずれや骨の損傷などが、生活を送るうちに重篤化することも考えられるでしょう。

編集部

後遺症になって、治らないケースもあると聞きます。

飯島先生

後遺症というのは、「もう治りませんよ」ということですからね。交通事故後の怪我の流れについて説明すると、治療期間が6カ月くらい続いた段階で、保険会社から「そろそろ症状固定にして、終了にしてください」と言われると思います。そこで痛みがある場合、症状に応じて後遺症になることがあります。なお、後遺症診断書の作成ができるのは、医師に限られます。また、医師がX線画像の診断などに基づいて「治った」とみなすと、治療が終了になってしまうこともあります。すなわち、「治った」場合は後遺症にはなりません。

編集部

痛むのに「治療は終了」というのは、理不尽に感じます。

飯島先生

痛みがある場合は、なるべく症状固定にしないで通院期間を延ばして、施術を続けることをおすすめします。早く終わらせようとする保険会社などの場合は、しっかり交渉したいですね。また、「まだ治療が必要ですね」と言ってくれて、しっかり後遺症診断をしてくれる整形外科などの医師を探すのが理想的ですね。いずれにしても、交通事故後の処置に理解のある医師・施術者が求められるでしょう。弁護士を入れてお願いする手もありますので、任意保険に弁護士特約が入っているか確認することをおすすめします。

交通事故にあって時間が経ってから症状が出たときの対処法

編集部

ここで本題です。交通事故による自覚症状が遅れて出た場合、何に注意すべきでしょうか?

飯島先生

まずは最寄りの整形外科などの医療機関を受診して、「現在の症状が今回の事故によるものである」という診断書を書いてもらいましょう。交通事故と症状が紐付いていないと、保険会社は「普段の生活などが原因なのでは?」と疑いかねません。そして、この境目はおおむね「事故から2週間以内」という印象です。また、警察に届けて事故扱いにしておくことも忘れないでください。

編集部

通常、通常診断書の発行は必要ですよね?

飯島先生

はい。患者さんが警察に診断書を提出するような場合に使用します。整形外科や接骨院・接骨院が保険会社とやりとりする中で必要になることがあります。ですが、診断書の費用は請求額の中に含めるのが一般的な流れです。ただし、繰り返しになりますが「事故から2週間以内」がポイントです。受診が遅れると、医師も「事故との関係は不明」とみなすかもしれません。

編集部

そもそも、数日遅れて自覚が出るのはどうしてでしょうか?

飯島先生

詳しいことは解明されていませんが、すでに出ている症状に精神が興奮していて「気づきにくいのではないか」と考えられています。問題は、境目である2週間を過ぎてから痛み出した場合ですよね。保険会社が交通事故との関連性を認めるかどうかにかかってきます。

編集部

ちなみに、先生は「遅れて出た痛み」にどう対処していますか?

飯島先生

2週間以上を空けた痛みだとしても施術はします。ただし、保険会社は得てしてこうしたケースの費用請求を認めませんので、自腹になるかもしれませんが患者さんとご相談のうえですね。事故直後から通院されている人の場合は、サービス扱いにすることもあります。

交通事故による怪我の施術と費用について

編集部

最後は施術と費用についてです。基本的に加害者側が負担するのですよね?

飯島先生

もちろんです。加害者側の保険会社が支払います。ただ100%加害者でも、自分の任意保険で支払ってくれます。

編集部

交通事故の「過失割合」が関係しているのですよね?

飯島先生

はい。過失割合の背景には、「もらい事故であっても、被害者になんらかの落ち度があったのではないか」という考え方があります。そのため、なかなか「加害者10対被害者0」ということにはならず、「9対1」や「8対2」などで落ち着くことが多い印象です。しかし、被害者側に「1」なり「2」の過失割合があったとしても、原則として治療費の自己負担はありません。相手側の保険会社が全て支払います。逆に加害者側だとしても、過失割合に応じてご自身の任意保険で費用負担されます。たとえ「加害者10対被害者0」だとしてもです。

編集部

もらい事故なのに自分の任意保険を使うのは、なんだかもったいない気がします。

飯島先生

いいえ、任意保険は使用した方がいいと思いますよ。実際、弁護士特約や人身傷害保険や搭乗者傷害特約などを契約しているのなら、お得になることが多いのです。ですから、交通事故にあったら必ず保険会社に連絡しましょう。

編集部

わかりました。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

飯島先生

医療機関は医療に特化した機関ですから、交通事故の細かいことや詳しい法的なことは教えてくれないことが多いと思います。残念なことに、交通事故を嫌がる先生もよく聞きます。また、夜間や深夜まで医院を開けている医療機関は非常に少ないのが現状です。一方、接骨院や接骨院はいい意味で柔軟に対応してくれることが多いので、みなさんにとって便利なのかなと思っています。今回お話したような交通事故対策にも小回りが利きますので、ぜひお気軽にご相談ください。交通事故に理解のある整形外科もご紹介可能です。

編集部まとめ

自覚の遅れのために治療費・施術が全額自腹にならないよう、事故直後に受診だけはしておきましょうとのことでした。また、あくまでも2週間は目安で、「15日後ならダメ」とは限らないようです。しかし、早々の対策を心がけましょう。万が一、2週間を過ぎて自己負担になるとしたら、営業時間や立地的に通いやすい接骨院や整骨院も検討したいですね。医療機関から「治った」宣言や後遺症診断が出た後のフォローにも向いていそうです。

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