テーピングで足首・手首の捻挫などを応急処置 スポーツドクターが教えるテーピングの意味・重要性とポイント
「スポーツの秋」、「運動会シーズン」ですが、怪我や痛みなく楽しまれているでしょうか? 何事もないのが一番ですが、万が一何かあった時のために、「足首や手首などへの応急処置に使えるテーピング」で知っておくべきことについて、整形外科医の田島祐基先生( 武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック院長)にMedical DOC編集部が聞きました。
テーピングの目的・役割・効果とは 足首・手首など、曲げると痛い関節の捻挫は固定した方が早く治せる?
編集部
「テーピング」という名前はよく聞きますが、どんな時にどのような目的で使うものなのですか?
田島先生
レクリエーションやスポーツなどのアクティビティをする際に、用いられることが多いです。目的は、怪我などの予防や、競技中にどこかを痛めてしまった場合の応急処置などがあります。とくに、一度痛めてしまった部位は、その後も繰り返しやすいので、再発予防としてテーピングをする方も多いですね。
編集部
どんな効果があるのですか?
田島先生
主な効果としては、「関節の補強」があります。痛めた関節を補強しておくと、過度な力がかかりにくくなったり、特定の方向に曲げられないように固定してくれたりするので、痛みなどの症状が出にくくなります。
編集部
テーピングに使うテープの選び方なども知りたいです。
田島先生
ドラッグストアなどに行くと、太さや素材、伸縮性の有無など、さまざまな種類のテーピングが売られていますが、あまりあれこれ揃える必要はありません。とくに、太さに関して言えば、手で簡単に割いて必要な幅にできる素材のものも多いので、たくさんの種類を揃えなくても大丈夫なのです。少し意識していただきたいのは、伸縮性の有無です。伸縮性のあるテープは、固定性はやや弱まりますが、ある程度の動きも可能です。一方で、伸縮性のないものは、完全に固定してしまうので、全く動かしたくない場合に有用です。それぞれの特徴を踏まえた上で、必要に応じて選んでください。
編集部
捻挫などは、テーピングで固定すると早く治すことができますか?
田島先生
それは、あまり期待しない方が良いと思います。「固定することでさらなる損傷を防ぐ」という意味では、テーピングで固定したほうが治癒は早いといえますが、テーピングそのものが捻挫などを治すというわけではありません。
足首・手首、膝など関節を痛めたら 応急処置としてのテーピングについて知っておきたいこと
編集部
どのような時にテーピングが必要になりますか?
田島先生
スポーツなどで負傷してしまったけれど、すぐに安静にするのが難しい場合などです。スポーツだと、サッカーやバスケットボール、ラグビーなどのコンタクトスポーツは、予期せぬ方向に倒れて捻挫しやすいスポーツです。あとは、バレーボールや陸上など、ジャンプをした時に、着地がうまくいかずに足首を痛めるケースも多いかと思います。手首だと、テニスなどで痛める方が多いですね。ほかには、もともと外反母趾がある方も、アクティビティ中に過度な負担がかかることで、指の付け根などに痛みが出ることもあるので、予防的にテーピングを行うことがあります。
編集部
「サポーター」とはどんな違いがありますか?
田島先生
サポーターは、テーピングと比べてすぐに装着できるメリットがあります。装着があまり難しくないものが多く、誰にでも使えるというのも安心ですね。一方でテーピングは、誰にでも巻けるというわけではなく、ある程度の知識やスキルが必要ですが、個別の症状に合わせた巻き方や固定力、固定方向が調節出来るというメリットがあります。両方使われる方もいらっしゃいますよ。
編集部
手首や足首、膝を痛めた時など、私たちにもテーピングはできますか?
田島先生
はい。テーピングは、痛めた場所や固定方法など、個別性の高いものなので、一概に「この方法が良いですよ」とは言えませんが、書籍やインターネットなどで、症状に合わせた巻き方を調べることができます。動画などでもたくさん紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
編集部
テーピングをする際に、注意しなければいけないことはありますか?
田島先生
巻いた後、注意していただきたいのが「神経障害」と「循環障害」です。「神経障害」は、神経が圧迫されて起こるしびれなどの症状で、「循環障害」は、血管が圧迫されることで血流が遮断されてしまうことを指します。とくに、伸縮性のないテープを用いる場合には、気をつけてください。テーピングをした部位より末梢(先端)で、感覚が鈍くなってくる、血色が悪くなる、冷たくなってくるなどの症状がみられたら、いったん外して巻き直すようにしましょう。
【注意点】関節を痛めたら足首や手首などにテーピングを巻くだけでなく、早めに医療機関の受診・リハビリを
編集部
テーピングのほかには何をしたら良いでしょうか?
田島先生
「RICE」といわれる、外傷を受けたときの基本的な応急処置方法があります。安静(Rest)・冷却(Icing)・圧迫(Compression)・挙上(Elevation)の頭文字から成る言葉です。患部を「湿布や氷で冷やし、テーピングなどで適度な圧迫を加えながら固定し、可能な限り患部を心臓より高くして安静にしておく」という感じです。
編集部
結構たくさんあるのですね。
田島先生
そうですね。しかし、テーピングやRICEを行ったからといって、動いても大丈夫というわけではありませんのでご注意ください。
編集部
では、テーピングをどのように捉えておけばよいでしょうか?
田島先生
あくまで「応急処置」や「予防的措置」と捉えていただければと思います。関節や靭帯を痛めたと感じたら、テーピングだけでなく、早めに医療機関を受診し、必要に応じてリハビリを行いましょう。リハビリの要・不要も医師が判断します。
編集部
最後に、MedicalDOC読者へのメッセージがあればお願いします。
田島先生
スポーツなどのアクティビティは、運動不足になりがちな現代人にとって、健康増進が期待できるとても有益なものです。しかし、怪我や痛みを引き起こしてしまっては本末転倒ですよね。ぜひ、テーピングやサポーターを正しく活用していただいて、怪我や痛みなくアクティビティを楽しんでください。また、テーピングなどでも改善しない場合は、無理せず医療機関を受診してください。
編集部まとめ
突発的な負傷や、慢性的な痛みなど、自分で対処できたら便利ですよね。レクレーションやスポーツなどのアクティビティを日常的に行う方にとって、先生にうかがったテーピングの目的や役割、選び方はとても参考になるのではと思います。この先ずっと元気で好きなことができるよう、自身でできることはその場で処置できるようになると良いですね。
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