「コフィンローリー症候群」の症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

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コフィンローリー症候群とは、知的障害・骨格の変形・低身長といったさまざまな症状を引き起こす先天性の病気です。

遺伝性の病気ということも分かっており、基本的には男性に発症するといわれている難病です。

そこで、この記事ではコフィンローリー症候群の原因についてご紹介します。症状や診断方法・治療方法・遺伝するのかなどについても解説するので参考にしてください。

コフィンローリー症候群の特徴

コフィンローリー症候群とはどのような障害ですか?

この病気の患者さんは、4万人に1人の割合で発症するといわれている、指定難病です。主に男性に発症することが多く知的障害が現れます。

その症状の度合いは、中等度から重度なものまで幅広いです。

また、外見にも異変があり、特徴的な顔貌や骨格系の特徴が見られることがあります。低身長・音や興奮などの刺激で脱力発作を引き起こすこともある点も特徴です。

性染色体のXの遺伝子に異常があることで発症することが分かっており、遺伝性の病気です。

主に男性がかかりますが、稀に女性もかかることがあります。女性が罹患した場合、無症状であるか、ある程度の知的障害が現れる可能性が高い病気です。

症状を教えてください。

この病気の主な症状は次のようなものです。

神経・発達の遅れや異常

特徴的な顔貌

骨格の異常

循環器の異常

成長障害

歯の形成異常

詳細な症状としては、運動発達が遅れます。これは、乳児期に筋緊張が低いためです。

歩行開始が2歳~3歳と遅くなるでしょう。言語発達も遅れ、中等度から重度の知的障害が現れます。

性格は明るいですが、異常行動として自傷行為を行うことがあります。

この病気では、刺激誘発転倒発作が見られることが特徴です。この発作は、音や触覚などの不意の刺激や興奮刺激で誘発されるもので、驚いたようになり力が抜けて転倒するというものです。意識がなくなることはなく、脳波異常も無いためてんかんとは違います。

しかし、てんかんを合併する可能性もあります。この発作は、幼児期以降の20%の患者さんに現れる傾向です。

特徴的な顔貌をしていることも、この病気の主な症状です。特徴的な前額・長い睫毛・濃い眉毛・前向きの鼻腔などさまざまな箇所が特徴的な形状をしています。そして、これらの顔貌は、加齢とともに明らかになっていくことが多いです。

また、特徴的な見た目は、全身にも見られます。これは、骨格にも異常があるためです。先細りの指・小さい爪・偏平足・胸腰椎の後彎など、さまざまな箇所で変形が起こっているため、特徴的な見た目をしているのです。

原因不明の心不全や肺動脈の拡張・僧帽弁など循環器系の異常を発症することもあります。

また、出生時には正常な体格をしていても、ある程度経過すると成長障害や骨年齢の遅延などを発症することもあります。歯並びや歯の低形成といった、歯に関する異常も代表的な症状です。このように、この病気の症状は非常に多岐にわたっており、見た目や体内の異常などさまざまな科目で受診が必要となる病気です。

発症の原因は何ですか?

発症の原因は、性染色体のXにあるRPS6KA3と呼ばれる遺伝子の異常だといわれています。

性染色体は、性別を決定する重要な役割を持ち、男性はXY・女性はXXの組み合わせとなります。そして、このRPS6KA3はX染色体に位置しており、男性は1本しかもっていないのです。1本しか持っていないため、RPS6KA3に異常があると代償することができません。

女性はXXの組み合わせであるため、1本のRPS6KA3に異常があっても、片方のX染色体が代償してくれます。これにより、女性に比べて男性の方が発症率が高く、重症化しやすいというメカニズムなのです。

女性も発症の可能性はありますが、症状が軽くなる場合が多いです。通常、RPS6KA3は、脳の発達や形成に重要な役割を担っています。学習の確立・長期記憶の形成・神経細胞の生存など多くの機能に密接に関わっている遺伝子です。

しかし、この遺伝子に異常があるため、この病気を発症すると考えられています。一方で、この遺伝子と全ての症状との関係が解明されているわけではありません。

例えば、全身の各種臓器の症状が、なぜ現れるのかはっきり分かっていないのです。

いつ頃コフィンローリー症候群だとわかるのでしょうか?

この病気は、生後間もなくしてわかることがあります。先天性の各部位の奇形が見られる場合や顔貌が確認できる場合は、この病気が疑われます。

その後、検査が行われることがあれば、発覚するでしょう。

一方で、生後間もなくでは顔貌などがはっきりわからない場合もあります。

そのため、乳幼児期などの運動発達の遅れなどで発覚するケースもあるようです。言語発達の遅れでも、この病気の可能性が疑われ、検査後にこの病気にかかっていることがわかるでしょう。

コフィンローリー症候群の診断や治療

コフィンローリー症候群はどのように診断されますか?

RPS6KA3の遺伝子に異常が認められると、この病気だと診断されます。

しかし、変異が認められない場合もあります。その場合は、次のような症状をもとに診断を行うことが多いです。

眼瞼斜下など特徴的な顔貌

先細りの指

精神発達の遅延

これらの症状が、乳・幼児期から見られる場合には、コフィンローリー症候群と診断されます。

どのような検査を行いますか?

この病気は遺伝子の異常が原因として発症するため、RPS6KA3の遺伝子を対象とした遺伝子検査を行います。

しかし、全ての症状がこの遺伝子異常によるものと解明されていないため、症状に応じて適切な検査方法も行う必要があるでしょう。例えば、胸腰椎の後彎といった骨格系の異常が疑われれば、脊椎レントゲン検査を必要とします。

また、循環器系の異常が見られる場合には心臓のエコー検査・難聴などが疑われる場合には聴力検査と、さまざまな検査を用いて複合的に行います。

治療方法を教えてください。

この病気の根本的治療方法は、まだ存在しません。遺伝子異常が原因と考えられていますが、全ての症状との関係が判明していないこともあり、具体的な治療方法が確立されていないのです。そのため、治療方法としては、各症状に対応した対症療法を中心に行うこととなります。精神・運動などの発達障害に対しては、療育療法を行います。

また、刺激誘発転倒発作は、突発性の症状です。いつ発症するかわからず、発症時によっては頭部外傷に繋がる可能性もあります。そのため、車いすの使用や、外傷を防ぐための保護帽を着用するなどの対応となります。

てんかんを発症している場合には、抗てんかん薬の投薬治療です。心疾患を発症している場合には、症状に応じて投薬や手術を行います。

また、側彎などは呼吸不全を引き起こす可能性があるため、外科的な治療を行うことがあるでしょう。このように、さまざまな症状を引き起こす可能性がある病気であるため、それぞれの症状と重症度に応じて治療方法を決めて対処します。

どのような経過をたどるのか知りたいです。

症状の重症度によって経過は異なります。多くの場合、健康に過ごすことが可能です。症状が軽症であれば、継続的な治療の元で通常の生活に近い形で過ごすことはできるのです。

しかし、重度の症状が現れている場合には状況に応じて、特別支援教育などを利用する必要があるでしょう。

また、合併症にも注意が必要です。合併症としては、脱肛門・片腎・顔面色素沈着・難聴などが挙げられます。これらの合併症の状態によって、治療内容や経過も異なるため、医療機関の指示のもとで適切な治療や生活を送る必要があります。

コフィンローリー症候群との向き合い方

コフィンローリー症候群の寿命を教えてください。

コフィンローリー症候群は寿命を短縮する要因となる病気です。その寿命は、平均年齢20.5歳といわれています。さまざまな合併症による影響で死に至っているケースが多く、心臓異常・呼吸器の合併症・誤嚥などが関係しています。

例えば、世界で最初にこの病気にかかった方は、合併症によって肺炎を繰り返し18.8歳で亡くなっているのです。

また、2番目の患者さんは、急性の誤嚥によって18歳で亡くなっています。

遺伝する病気ですか?

この病気は、先述したようにRPS6KA3遺伝子によって引き起こされます。この遺伝子はX染色体にあることから、X連鎖遺伝と呼ばれる遺伝形式をとることが特徴です。

そして、この遺伝形式では、女性が病気の保因者であることが分かっています。そのため、女性が無症状の場合でも、お子様に遺伝する可能性があるのです。

男性患者の場合、その娘は保因者になりますが、息子には遺伝しません。

日常生活で気をつけることはありますか?

日常生活に大きくかかわる症状が、刺激誘発転倒発作です。そのため、できるだけ驚かさないように注意が必要です。

転倒がひどい場合には、保護帽を着用の上、行動に気をつける必要があります。必要に応じて車いすを利用することも、検討すると良いでしょう。

また、成長に応じて、脊椎変形や運動機能の低下を引き起こすことがあります。その場合は、さらに行動に注意が必要です。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

コフィンローリー症候群は、乳幼児から認められる病気です。健康に過ごせる方も多いですが、合併症を引き起こす可能性のある恐ろしい病気となります。

また、合併症を引き起こした場合には、命に関わることも少なくありません。症状に応じて適切な治療を進めるためにも、正しい知識を身につけて、注意して生活しましょう。

編集部まとめ


コフィンローリー症候群は、知的障害運動障害などさまざまな症状・合併症を引き起こす可能性がある恐ろしい病気です。

難病にも指定されており、未だ根本的な治療方法は確立されていません。しかし、大きな影響なく日常生活を送れている方も多いです。

合併症や日常生活で注意すべきことはありますが、定期的な受診や正しい対処療法を続ければ、健康に過ごせるのです。

病気を正しく把握して、症状の悪化にいち早く気づけるようにしておきましょう。

参考文献

コフィン・ローリー症候群の鍼灸【原因・定義・症状】|銀座そうぜん鍼灸院

コフィン・ローリー症候群|MedicalNote

コフィン・ローリー症候群(指定難病176)|難病情報センター

(30) コフィン-ローリー症候群|疾病予防管理センター

コフィン-ローリー症候群|GeneReviewsJapan