交通事故で怪我をしたときの受診先は? 整形外科と接骨院・整骨院どっちがいい?
交通事故の怪我といっても、その中身は打ち身に捻挫、切り傷・擦り傷、骨折など様々です。このとき、整形外科をはじめとする医療機関に限らず、整骨院・接骨院に通院するという選択肢があることはご存じでしょうか。今回はそんな整骨院・接骨院の位置づけについて、「うちだ接骨院」の内田先生に解説していただきました。
交通事故で怪我をしたときの受診先
編集部
交通事故に遭ったとき、整形外科に行くべきか整骨院や接骨院に行くべきか迷います。
内田先生
難しいですよね。交通事故処理の場面で保険会社と交渉をする際に、「診断書」を求められる場合があります。「この怪我は交通事故によって生じました」という、いわば証明になる書面です。この診断書は医師にしか発行できませんので、その意味では整形外科が「初手としての受診先」になるでしょうか。
編集部
しかし、医療機関は診療の終わり時間が早くて、通いづらい面もあるんですよね。
内田先生
だとしたら、整形外科の医師に「整骨院や接骨院に通いたい」という旨を申し出てはいかがでしょうか。医師が認めれば保険会社とのやりとりもスムーズですし、整骨院や接骨院の施術に保険適用が認められる場合もあります。なお、当院へ来院される人は「医療機関だとかなり待たされる」「待たされた結果、骨折でもしていない限り湿布を出されて終わり」といった理由が多いですね。
編集部
「交通事故処理」を掲げている整骨院や接骨院もあるのでしょうか?
内田先生
はい。医療機関は原則として医療行為しかおこなえません。その点、整骨院や接骨院にはそこまでの制度的な縛りがないため、交通事故関連のお手伝いをさせていただくことも可能です。そこで、当院も含めた一部の整骨院や接骨院は、みなさまの一助となるよう業務範囲を広げています。私個人としては、医師の下での医療ではまかなえない部分を整骨院や接骨院で補完させていただいているイメージです。
編集部
最初から接骨院や整骨院などへ通うと、加害者へ施術費の請求ができないケースはあるのでしょうか?
内田先生
そこは該当院や保険会社によって違いの出てくるポイントでしょう。インターネットなどで「請求できる」という説を見かけたとしても、ご自身のケースが該当するとは限りません。やはり、診断書の件も含めて「初診は整形外科」なのだと思います。その後の通院先は、治療費請求の可否も含め、整形外科や整骨院・接骨院の先生と話し合ってみてください。
医療機関と整骨院や接骨院の違いを解説
編集部
先生の施設は接骨院ですよね。医療機関との大きな差はなんだと思いますか?
内田先生
医療機関では、医師による診断と薬の処方が可能です。その反面、保険の点数により治療費が決まっていると、自ずと患者さんに割ける時間も限られてきますよね。また、例えば、X線の画像検査などで診断が付かないと、その先に進めないことになりかねません。一方、整骨院や接骨院の特長は「患者さんに寄り添えること」でしょうか。保険制度に縛られることなくお時間を取れますし、主訴やお悩みがあれば、診断というプロセスを経ずして手当に入れます。
編集部
整骨院や整骨院のなかでの違いはあるのでしょうか?
内田先生
開院に必要な柔道整復師は国家資格ですから、統一した学問体系です。したがって、施設による大きな差はないでしょう。ただし、立地やスタッフの人柄、施設の清潔さなどは当然ながら異なります。
編集部
接骨院や整骨院でも、セカンドオピニオン的な比較は必要だということですか?
内田先生
なんとも言えませんが、「何をされるかわからないまま施術がはじまった」とか「いつまでこの施術が続いて、次はどうなるのか、終わりはいつなのかが見えない」のだとしたら、他院の説明を受けた方がいいかもしれません。要するに、ご自身が納得できるか否かが大切です。すでに通院がはじまっていても途中で不審さを感じたタイミングで、セカンドオピニオンをしてみるのも1つの手だと思います。
編集部
医療機関外だと、保険の効くところと効かないところがありますよね?
内田先生
「保険=良い治療」という価値観ではなく、患者さんごとに最適な方法を模索しましょうということなのだと思います。とくに、交通事故のような外圧によるダメージは後を引きます。医療機関の場合、治療開始から半年もすると、後遺症として治療を打ち切られることもありますよね。それでも痛みが引かないとしたら、医療機関での受け皿はありません。このようなとき、実費だとしても、整骨院や接骨院がお役に立てるのではないでしょうか。
医療機関の受診がふさわしいケースは?
編集部
逆に、医療機関を受診した方が好ましい症例はありますか?
内田先生
交通事故で「重大な外傷」になると、整形外科でもなく「形成外科」の領域になります。「ケガはケイセイ」と覚えておきましょう。もちろん、腰の痛みなどの運動器のお悩みは、整形外科や整骨院や接骨院がお役に立ちます。外傷と運動器の治療を並行して進めるパターンもあるでしょう。
編集部
怪我が治らず後遺症となった場合、やはり医師の診断が必要とも聞きます。
内田先生
そうですね。後遺症等級に該当するかどうかは、医師にしか判断できません。一般的に初診から6カ月ほど経つと、保険会社から「そろそろ後遺症扱いにしませんか」という相談があるはずです。医師と相談してみてください。
編集部
薬の処方も医師にしかできないのですよね?
内田先生
はい。漢方薬も含めてそうなります。なお、市販薬やサプリメントに関しては、効果があるのであれば否定はしません。しかし、使用していて「なかなか効き目が感じられないな」と思ったら、医療機関や整骨院・接骨院などにご相談ください。その際、市販薬やサプリメントについて質問してみるのもいいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
内田先生
交通事故後のお体は、元に戻るのに時間がかかります。1~2年を要することも多々ありますので、まずはこのことをご理解ください。それなのに、医療や保険の枠組みは長期の治療を前提としていません。ですから、医療や保険の枠組みから漏れてしまった人、“まだ体が痛いのに行く場所がないという人”のお手伝いができれば何よりです。当院は医療連携もしていますので、交通事故の治療に理解のある医療機関のご紹介も可能です。
編集部まとめ
自分の怪我と交通事故を紐付けるために、初診は診断書の発行できる医療機関が好ましいとのことでした。重篤な外傷なら形成外科を、出血のない体内の不具合なら整形外科を受診します。このとき、立地や診療時間などの理由により、整骨院や接骨院に通いたいのであれば、担当の医師に相談しましょう。そして、保険会社からの治療費の支払いが終わったり、医師から「治った」と言われたりしたにもかかわらず手当を続けたい場合は、自費になるかもしれませんが整骨院や接骨院を検討してみましょう。
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