真野恵里菜が過去の突発性難聴を告白。理解されにくい“きこえの問題”と身近に潜む耳の病気

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私たちの生活において、耳から入ってくる情報は多くあります。目覚まし時計の音や人の声、車の走行音や好きな音楽、朝から晩まで私たちの周りには、音が溢れています。そんな耳に異常が起こると、私たちの生活はどう変わってしまうのでしょうか。 今回は、真野恵里菜さんが今も抱える耳の症状や心境を通して、身近に潜む”きこえの問題”とそれを予防する方法について、耳鼻咽喉科専門医の山西敏朗先生とともに考えていきます。


インタビュー:
真野恵里菜(女優)

元ハロー!プロジェクト所属の女優、歌手。2008年に「マノピアノ」でインディーズ・デビュー、翌年には「乙女の祈り」でメジャー・デビューを果たす。ハロプロ卒業後は、女優業を中心に活躍。2016年にはNHKドラマ「とと姉ちゃん」にも出演。CLASSY.ONLINEにて「大人の〝真野さん〟料理のこと、最近のこと。」連載中。

監修医師:
山西敏朗(耳鼻咽喉科専門医)

1994年日本大学医学部卒業。その後、東京大学医学部附属病院、社会保険中央総合病院(現東京山の手メディカルセンター)、国立霞ヶ浦病院(現国立病院機構霞ヶ浦医療センター)、東京医科大学病院、厚生中央病院、板橋中央総合病院耳鼻咽喉科部長を経て、2007年1月 耳鼻咽喉科山西クリニック開設。医学博士。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。



山西先生

真野さんは、以前きこえの調子が悪いことがあったと伺っています。どのような症状がいつから始まりましたか?

真野さん

ちょうど19歳になった頃のことです。当時は歌の仕事をメインにやっていました。CD発売の野外イベントで、イヤーモニターをつけて歌っていたんですが、音響トラブルで「バンッ」という音が1回なった時があって、その時はびっくりしたんですけど「今はステージに集中しなきゃ」と思い、そのままステージを終えました。その次の日か2日後ぐらいから耳の聞こえづらさと、耳鳴りを感じ始めました。

山西先生

なるほど。すぐに受診はされましたか?

真野さん

その日は、まあ大丈夫かとどこかで思ってしまって、すぐにマネージャーさんに言えず仕事もつまっていたので、受診はしませんでした。ただ、日が経つにつれ、どんどん会話がしづらくなって、ラッパのような耳鳴りもあったので、限界を感じて病院に行って検査をしたら左耳の低い音が全然聞こえなくなっていて、そこで先生から突発性難聴と診断を受けました。

山西先生

耳鳴りを感じたのは左耳だけですか?

真野さん

はい、左耳だけです。

山西先生

めまいはありましたか?

真野さん

めまいはなかったんですが、耳がふさがっている感じと、平衡感覚が取りづらい感じはしました。その時は早く治した方が良いと言われて、1週間入院してステロイドの点滴治療をしました。

山西先生

大きな音を聞いた後に聞こえが落ちる状態は、音響外傷といいます。例えばクラブやコンサートで大きな音を聞いた時に、その日の夜ぐらいから耳鳴りが止まらないような状態や耳がこもるような感覚を生じることがあります。音響外傷は多くの場合、聞こえの検査をすると4000ヘルツという少し高めの音域が下がっていることが多いですね。そのため、真野さんの話しを伺った限りでは、「バンッ」という音が今回の耳の異常の原因かどうかは不確実ですね。耳の聞こえにくさを感じたのは今回が初めてですか?

真野さん

耳に関しては、中耳炎にもなったこともないので初めてですね。

山西先生

点滴で症状は改善しましたか?

真野さん

その後もライブの仕事はあったので、怖さはありましたが、1カ月くらいで通常の状態に戻りました。

山西先生

今回初めて症状が出現し、低音域が下がったということであれば、低音障害型感音性難聴という可能性もありますね。当時はストレスや疲れ、睡眠不足などは感じていましたか?

真野さん

そうですね。アイドルとしてデビューできて、「これから1、2年が勝負だよ」って言われていて、もちろんプレッシャーを感じていました。ほぼ休みもなかったのですが、頑張りたいという気持ちもあって、とにかくがむしゃらだったと思います。少し具合が悪くても、やらなきゃと思っていたので、もっと早く自分の体と向き合わなきゃいけなかったんだなと思います。

山西先生

ただ幸い良かったのは、症状が出てすぐに受診をされたことですね。受診されたのは、3日目ぐらいでしたか?

真野さん

そうだったと思います。

山西先生

その後、真野さんの耳の調子はいかがですか?

真野さん

その後しばらくは、異常もなく普通に仕事もやっていたのですが、2年前の秋頃から、また左耳に違和感があります。

山西先生

どのような症状がありましたか?

真野さん

その日は休みの日で、車に乗って山を越えながら遠出をしていました。その帰り道から耳が詰まって水の中にいるような感覚を覚えました。その時は気圧の問題かなと勝手に判断して、とりあえず家に帰って温かいものを飲んだり、眠ったりしたら治るかなと思ったんですが、良くならなくて……

山西先生

受診はすぐされましたか?

真野さん

当時私はスペインで生活をしていたので、言葉の問題もあり病院へすぐに行けず、1週間程様子をみてしまいました。そしたらどんどんキーンという高い耳鳴りがするようになり、外に出るのもしんどくなったので、やっと病院に行きました。

山西先生

その医師はなんと言っていましたか?

真野さん

耳鼻科の先生に見て頂いたら、少し聞こえは落ちているけど、耳の中は綺麗だし、鼻づまりもあるから鼻炎からくるものだねって言われて、鼻炎用の薬を処方されました。

山西先生

症状は改善しましたか?

真野さん

2、3日試したんですが全然良くならなくて、日本に帰りました。

山西先生

それはやはり左側の耳でしたか?

真野さん

はい、左耳ですね。

山西先生

高い山に登ったり、飛行機に乗って気圧の変化を受けたりすると、中耳炎を起こすことがあります。その場合は航空性中耳炎という診断がつきますが、耳の痛みも伴うことが多いですね。痛みはありましたか?

真野さん

痛みはなかったですね。

山西先生

スペインで受診した医師が鼓膜を診て、問題がなかったということであれば、航空性中耳炎の可能性も低いと思いますね。鼻炎が影響をして、耳に問題をもたらすことはあるのですが、鼻炎薬では症状は良くならなかったため、日本に戻って耳鼻科を受診したのですね?

真野さん

はい。19歳の時に受診した先生に診てもらいました。

山西先生

その時、医師には何と言われましたか?

真野さん

同じ耳が2回突発性難聴になることはないと言われました。ただ、聴力が落ちているのは確かで、今回は聴力検査で高音がほとんど聞こえない状態になっていたので、2日に1回通院しながら、点滴治療をしました。その後、飲み薬も2週間使用したのですが、治療を開始するまでに発症から2週間経ってしまっていたので、正直症状はほぼ変わらず今も回復はしていないです。

山西先生

今度の聞こえは初回と違って、高い音が下がっていたんですね。めまいや耳鳴りはありましたか?

真野さん

めまいは少しありました。それよりも耳鳴りのストレスが大きかったですね。

山西先生

一般的に高音が下がる状態は、年齢の変化が大きいとされています。年齢と言うと、びっくりされるかもしれませんが、早い人では30代から高音領域の聞こえが下がり始めると言われています。ほかの音域は下がっていましたか?

真野さん

少し下がりましたが、治療していくうちに高音以外は右耳と一緒くらいまで戻りました。

山西先生

聞こえがおかしいなと感じたら、1~2週間以内に受診することが望ましいです。真野さんが診断を受けた突発性難聴という病気は特にきっかけなどはなく、例えば朝起きたら耳が聞こえないとか、仕事中に急に聞こえが悪くなったりします。音域は低音だけではなく、全体的に落ちることが多く、人によってはめまいを引き起こす場合があります。罹患率は10万人に30人程度で、男女差はなく、50~60代の中高年層に多いと言われています。早い段階で治療すれば、6割ぐらいは改善もしくは治癒するとされていますが、治療開始までに時間を要すると、症状が治らなかったり、めまいや耳のこもり感、耳鳴りなどの後遺症が残ったりする場合もあります。そのため、耳に違和感を覚えたら、できるだけ早く受診することが重要です。





山西先生

その後、耳鳴りや耳のこもり感、めまいなどを繰り返すことはありますか?

真野さん

最近立ち上がったときに、立ちくらみみたいなものはありますね。

山西先生

前回治療して治った低音型難聴を繰り返したり、耳がこもる感覚はあるけれども、気づかないうちに治ったりするという症状を繰り返していると、今度はメニエール病という病気の可能性もあります。

真野さん

実は2週間で治療は終えましたが、症状は改善しなかったので、ほかの病院にも行きました。その病院の先生からも、やはり突発性難聴は同じ耳で2回目はならないと言われ、メニエール病か聴神経腫瘍の可能性があるということでMRI検査を受けました。ただ異常は特になくて、メニエール病の可能性もあるからと、1カ月分の治療薬を処方されました。

山西先生

その時、激しいめまいはありましたか?

真野さん

なかったです。

山西先生

「めまい=メニエール病」というイメージを持つ人が多いのですが、実はそうとも限らないんです。「めまい」「耳鳴り」「難聴」といった3つの症状が揃う人もいれば、症状が1つだけという人もいます。診断のポイントは症状を繰り返すということです。

真野さん

耳鳴りもあったり、なかったりということですか?

山西先生

そうですね。繰り返す、そして日によって違うというのが特徴です。「めまい」「耳鳴り」「難聴」が全て揃えば、完全型メニエール病。「耳鳴り」だけや聞こえのみが下がる場合は、蝸牛型メニエール病。「めまい」だけ繰り返す場合は、前庭型メニエール病といいます。有病率は10万人に40人程度で、やや女性に多く、年代は30~50代と少し若い世代に多いです。MRIでは内耳の蝸牛という部分に水分がたまっているのがみられることがあります。

真野さん

メニエール病も人によって、出る症状が違うのですね。私も「めまい=メニエール病」だと思っていました。

山西先生

実際には、めまいの原因はメニエール病以外にも色々あります。メニエール病が引き起こすめまいは、全てのめまいの10%前後と言われています。

真野さん

そうなんですね。

山西先生

実はメニエール病は、性格とある程度相関があると言われているのですが、真野さんにいくつか質問をしてもよろしいですか?

真野さん

はい。気になります。

山西先生

几帳面ですか?

真野さん

こだわるところは、こだわりますね。

山西先生

神経質な性格ですか?

真野さん

はい。

山西先生

勝ち気な性格ですか?

真野さん

はい。そうです。

山西先生

完璧主義者ですか?

真野さん

はい、完璧を目指したいと思っています。

山西先生

自己抑制型、いろんなことがあっても我慢して頑張っていこうと思うタイプですか?

真野さん

そうですね。弱音を吐いている暇はないと思ってやっていました。

山西先生

なんと!全て当てはまりますね。今ご質問した項目がメニエール病になりやすい気質や性格になることが医学的に証明されています。真野さんはすべて当てはまってしまいましたね。それ以外の要因としては、ストレスや疲れ、睡眠不足なども関係あるのですが、2年前もストレスや疲れを伴うような忙しさなどはありましたか?

真野さん

ちょうどコロナが流行りだした時期で、夫がサッカー選手なので、家族である私が感染したら、夫も濃厚接触者になり試合に出られず、練習にも行けなくなるという心配はありました。絶対感染しちゃいけないという思いもあって、気が張っていたと思います。

山西先生

色々な思いがありますよね。そういった目に見えないストレスや環境の問題などがきっかけとなり耳に症状を伴うことがわかっています。メニエール病の治療には、内服薬や点滴などがあり、基本的には内耳のむくみを取るような薬が処方されるのですが、何か薬は処方されましたか?

真野さん

ものすごくまずいゼリーを処方されました。

山西先生

そうですね。あまり美味しくはないのですが、内耳のむくみを取るにはとても良い薬なんです。炭酸で薄めたりお茶に入れたりすると、少し味が良くなるとも言われています。

真野さん

そうなんですね。

山西先生

メニエール病は、気圧の変化なども関係していると言われています。私が診察をしている患者様の中には台風が近づくと具合が悪くなるということで受診される方もいます。私がそういった患者様を診ていて思うことは、少し頑張りすぎているから、無理せず休んで体をいたわってあげてねという内なるシグナルを耳の症状を通して、私たちに教えてくれているのかなと思っています。だからそういう時は、無理せず過ごしてくださいねとお話しします。

真野さん

体が教えてくれているから、そういう時は休むことも大事なんですね。



山西先生

真野さんの現在の症状について教えていただけますか?

真野さん

現在の耳の状態は、高音の聴力が戻らなかったので、左耳は高音が聞き取りづらいです。天気が崩れると耳のつまりを感じたり、飛行機に乗るとザラザラ聞こえたりします。耳鳴りは、起きている間はずっと鳴っていますね。

山西先生

耳鳴りの音は高い音ですか?

真野さん

はい。でも2年間この耳と付き合っているので、こうやって会話している時には気にならないです。シーンとなると気づくくらいなので、あんまり自分の中では不具合や支障は感じていないです。

山西先生

現在の心境はどのようなお気持ちですか?

真野さん

「なってしまったものはしょうがない」、「今の自分とどう過ごして行くかが大事」という気持ちはあります。ただ歌を歌ったり、芝居をしたいとも思うんですが、大きい音を聞きながら歌わなきゃいけないので、私はもう歌えないのかなとか考えてしまったりもしますね。勝ち気な性格から、自分がこういう病気になりましたっていう事もあんまり言いたくなくて、言えていませんでしたが、「また歌ってください」ってファンの方から言われたりすると嬉しい反面、できるのかなという不安のほうが強くなっていました。ずっと話さないできたけど、今回先生ともお話しができて気が楽にはなりました。こういう場を設けていただいて良かったなと思っています。

山西先生

そうですね。本人が一番辛い思いをされて、周りの方からなかなか理解してもらえない。かといって、自分から言えるかというと言いにくい部分もありますよね。真野さんの中にもいろんな葛藤があって、芸能界で仕事をされているからこそ、大変な事も多いでしょうね。真野さんには、耳の症状とうまく付き合って、同じ思いをされている方に寄り添えるような素敵な方になっていただければ、私たち耳鼻科医も嬉しいですね。私も医師として寄り添えるようになりたいとも思っています。

真野さん

耳の症状って外からは見えないじゃないですか。一緒に住んでいる家族ですらわからないから、病院の先生には左側の聞こえが悪いことを家族に理解してもらってねと言われました。

山西先生

その通りですね。症状がみえないからこそ、周囲の理解というのも大事だと思いますね。

真野さん

周りの家族や友達が、耳の症状に気付くことも出来るのでしょうか?

山西先生

出来ると思います。特に高齢者の場合、コロナ禍で自宅にいる時間が増えています。そんな時、いつもよりテレビのボリュームが大きかったり、家族の話し声に気付かなかったりすることをきっかけに、家族が気づくというケースは増えています。

真野さん

私の父も年に数回しか会えないんですけど、久しぶりに会って「テレビの音、大きくない?」って言っちゃいました。父は「え? そう?」という反応でしたが、これが年を重ねるということなのかって思いました。

山西先生

お子さん達は自分から聞こえの悪さに気づけないことが多いです。風邪を引いた後に呼びかけの反応が無いことや、戸を閉めた時にあんまり気付かないことをきっかけに、親御さんが子どもを連れてくるケースもあります。そうすると中耳炎が隠れていたりしますね。本人が気づかなかったとしても、周りから言われて気付くという事は十分に可能だと思います。

真野さん

もし私が家族の異変に気づいたら、教えてあげた方がいいのですよね?

山西先生

そうですね。「病院に行ってみたら?」って言ってくださるといいと思います。

真野さん

突発性難聴やメニエール病っていきなりなりますよね。ただ、できればなりたくないじゃないですか。何か予防法はありますか?

山西先生

やはりストレスや疲れ、睡眠不足が一番の大敵です。社会生活を営む上でストレスがないってことは難しいけれども、極力ストレスが溜まらないようにすることや、疲れを残さず、睡眠をしっかり取ることが重要です。

真野さん

ストレスって難しいですね。私もストレスについては、先生に指摘されました。ただ、自分ではストレスを感じている自覚はなかったんですが、実際に症状が出ているということは、体に異常信号が現れているのかなとも思いました。

山西先生

真野さんのように頑張り屋さんで、無理をしている方はまだまだできると思ってしまっているのでしょうね。耳が調子を崩すことで黄色信号を発して、無理しないようにと教えてくれているのだと私は思います。

真野さん

確かにそうなのかもしれないですね。

山西先生

体の変調があれば素直に応じて、「私無理しちゃってるなー」って気付いてくれればいいのかなと思いますね。

真野さん

周囲が気付いてあげることも大事だし、何より自分で自分のことを考えてあげるのが重要なんですね。

山西先生

その通りですね。耳の病気チェックリストを活用し、自分の耳について一度考えてみてください。





真野さん

いきなり聞こえが悪くなった時や、耳鳴りなど耳の異常を感じた時に、早期受診が大事なのはどうしてなんですか?

山西先生

先ほども言った通り、突発性難聴はとくに初期治療が大事なんです。できれば1週間以内が望ましいのですが、症状に気付いたらせめて2週間以内に来てくだされば、治すことができる可能性が高いです。ところが、痛みがないことや日々の忙しさも相まって、すぐに受診せずに3~4週間経ってから受診される方も多いですね。

真野さん

3~4週間経ってから病院に行ったのでは、できる治療はないってことですか?

山西先生

基本的にステロイドの治療はすると思います。ただし、2週以内に受診した方はだいたい6割方良くなることが多いですが、それを超えてしまうと治すことが難しくなる確率が高くなります。だから、とにかく耳がおかしいと思ったらすぐに受診して欲しいです。今はネット社会ということもあり、きこえが急に悪くなった時には、すぐにネットで検索することが出来ますよね。そうすると色んな病気が出てきて、怖くなってしまいかえって受診しなくなってしまう人も多いようです。

真野さん

逆に怖くなって、受診しなくなってしまうんですね。

山西先生

そもそも耳鼻科って、怖いというイメージを持っている方も多いですからね。

真野さん

そのイメージはありますね。

山西先生

中には、耳垢が詰まっていただけというケースもあれば、脳腫瘍や聴神経腫瘍といった重要な疾患が隠れているケースもありえます。だからまずは受診をしていただく、それが一番だと思います。

真野さん

確かに病院が怖いって気持ちは私もすごくありました。ただ、今回の先生の話を聞いて、昔役者の先輩に、病院は原因を突き詰めて安心をもらうところだよって言われたことを思い出しました。原因がわかって、はじめて次に踏み出せるようになるので、早く受診をすることは大事ですね。

山西先生

その通りですね。

真野さん

突発性難聴やメニエール病は10万人に30~40人という少ない割合じゃないですか? それ以外にも身近に潜む耳の病気ってありますか?

山西先生

たくさんありますが、特に最近増えている疾患があります。それは外耳炎と中耳炎です。

真野さん

外耳炎と中耳炎の違いってなんですか?

山西先生

外耳炎は耳の入り口、中耳炎は鼓膜のすぐ内側の中耳で起こる炎症です。

真野さん

触ったり、目で見たりしてわかる感じですか?

山西先生

そうですね。外耳炎は一般の方でもわかると思います。従来は耳掃除のしすぎで、ただれや出血を引き起こすケースが多かったのですが、ここ3年くらいはコロナ禍の影響で在宅でイヤホンを使用する仕事の方が増えたためか、イヤホンの耳に触れる部分が炎症を起こして、かゆみや痛みを訴える方が増えていますね。

真野さん

そういった時も病院に行っていいんですか?

山西先生

もちろんです。ほかにも新型コロナウイルス感染のよるものも問題となります。新型コロナウイルス感染症はウイルス感染を引き起こすことで、耳や鼻、のどの粘膜を攻撃します。それにより副鼻腔炎や咽頭炎、それに加えて中耳炎などを引き起こす方が増えていますね。

真野さん

日常生活から、イヤホンの使い方や感染対策など気を付けなければいけないことも多いのですね。

山西先生

その通りですね。真野さんは耳に関して、普段から気をつけていることはありますか?

真野さん

移動中は絶対に音楽を聞きたいというくらい、音楽が好きなのですが、耳の負担にならないように、なるべく大きい音にしないように気を付けていますね。大きい音が鳴ることが事前に分かっている状況では、耳をふさいで守るようにもしています。

山西先生

真野さんのおっしゃる通り、耳を守るためには、大きな音をあまり聞かないようにすることは重要です。今はコロナ禍で、オンラインミーティングなども普及し、イヤホンを使う機会も増えていますが、ボリュームをあまり大きくしないようにして欲しいですね。もし、音楽や観劇などを楽しむために大きな音を聞かざるを得ない場合は、小さな綿のボールを作って耳に入れておくことで、耳を守るという事もおすすめします。

真野さん

綿のボールがクッションになるということですか?

山西先生

聞こえるけれど、響くことが少なくなりますね。そういったセルフケアを普段から心がけていただきたいです。それから、皆さんにもよくお伝えしていますが、年に一回で良いので、ぜひ耳の健康診断を受けて頂きたいですね。

真野さん

日常的には耳のセルフケアを意識し、定期期的な耳のチェックも受けつつ何かあったら早く受診をするということが何より大事なのですね。

山西先生

その通りですね。


編集部より

「ストレス社会」と言われる現代社会において、心や耳にかかっている負担は大きい傾向にあります。加えて、コロナ禍に伴う心身的なストレスやイヤホンの使用など、普段の生活から気を付けなければならないことが多いのだと実感しました。
「好きな音楽を聞き続けたい」、「家族や友人と楽しく会話がしたい」。今この時代だからこそ、しっかりと自分の耳の状態と向き合っていく必要があるのだと感じました。
まずは、自分の耳や心の声と向き合ってみてください。そして周囲の人を気にかけ、声をかけてみてください。それが”きこえの力”と耳を守っていくことに繋がるのだと思います。
この記事が、読者の皆様の”きこえの問題”を考えるきっかけとなることを願います。