国会前でポーズをとる猪瀬直樹氏(写真・時事通信)

 10月20日、日本維新の会の猪瀬直樹参院議員が参院予算委員会で、初めて質問に立った。質問内容は、「マスク着用の推奨等について」「シルバー人材センター事業について」の2点。質疑に与えられた時間は約35分間だった。

 グレーのマスクを着用して質問に立った猪瀬氏。右耳にはマスクのヒモが半分かかった状態だ。国会で、脱マスクを率先して実行している猪瀬氏。質問に立つため、いやいやながらマスクを着用した様子が見て取れる。質問でまず取り上げたのが、マスク着用問題だった。

「時間が制限されておりますので、喫緊の課題から入ります。マスクについてです。いま外国人から日本がなんて言われているかというと、令和のちょんまげ、顔マスク、顔パンツていう風なことを言われている。だからね、ちょっと絵をひとつ見せていきたいんだけど」

 隣に座った、日本維新の会の音喜多駿政調会長がパネルを掲げる。その間、猪瀬氏はいつの間にかマスクを外して質問を続けた。

「エリザベス女王の国葬、わが安倍元総理の国葬、かたやマスクあり、かたやマスクなし、こんなに違います。総理、ここにアクリル板があるんですけど、距離2メートルありますから、マスクを外してお話しさせていただきます。この部屋は換気も入っていますからね」

 マスクを外した猪瀬氏に気づいた末松信介参院予算委員長から「マスクを着用することになってますので、ご対応をよろしくお願いいたします」と注意が入る。

「いま委員長のほうから言われてますので、ただ、ひとこと申し上げると」と、マスクを片手に質問を続けようとする猪瀬氏。場内にはどよめきが広がり、「ルールは守ろう」とヤジが飛ぶ。隣に座る音喜多政調会長から、「着けて着けて!」とせかされ、しぶしぶマスクを着用した猪瀬氏は、「ルールは作っていけばいいわけですが……」と質問を続けた。

「渋谷の風景、どうやったら変えられますか。いくら言っても変わらないじゃないですか。つまり、道を歩いている人が9割、マスクをしていて、1人で自転車に乗っている人もマスクをしていて、1人で車を運転している人もマスクをしていて。これ、おかしいでしょ。これ、総理が『外の人はいいんだ』と言っているけど、もっと身をもって示さないと。(マスクう着用を)やらなければいけない空気がまん延しているなかで、どういうリーダーシップを発揮するかという問題だと思うんですよ」

 猪瀬氏は前日の10月19日、自身のTwitterにこうつづっている。

マスク社会を早く終わらせようではないか、と岸田総理に言います。全員マスクしているとインバウンドの外国人が逃げてしまいますし、先生や友達の顔もわからないで黙食をさせられている子どもたちがかわいそうです》

 その言葉どおり、猪瀬氏は、「鼻マスク」状態で、インバウンド、学校現場、公共交通機関、宿泊施設でのマスク着用に関する質問を続けた。質疑に費した時間は、じつに30分。

「とにかくマスクについての細かい、細かいマニュアルが、本来はある程度の決めごとなんだけど、それがより細かく現場に沁みとおって、自主規制、同調圧力につながって、元気が出なくなってくる。なんとかしていただきたい」

 その後、シルバー人材センター事業についての質疑に6分を費し、猪瀬氏の国会での初質問は終わった。

 マスク着用問題に多くの時間を費やした猪瀬氏には、SNSで《よくやった、あっぱれ!!》という声が上がる一方で、批判する声も上がった。

《外国人って、「令和」とか「チョンマゲ」とかって単語知ってるの?》

マスク外せ圧力 気持ち悪いです》

猪瀬直樹…マジいらん マスクするしないで延々に国会の質問時間を食ってる 喫緊の問題ですか?》

《外国人に言われてから、笑われたから、批判されたから、マスクを辞めましょうなんて、情けない。日本人同士の同調圧力はダメだけど海外からの圧力であれば良いわけ。自分の考えは?》

 猪瀬氏が初の国会質問を終えたとき、予算委員会室内では隣に座った音喜多氏の拍手だけがむなしく響いていた。猪瀬氏にとっては、ホロ苦い国会デビューとなったようだ。