2022年9月15日から18日の4日間にかけて、幕張メッセにて「東京ゲームショウ2022」(TGS2022)が開催されました。昨年はオンラインとオフラインのハイブリッド開催で、一応、オフライン会場も用意していましたが、ほぼ1ホール分のスペースだったうえ、来場者もメディアとインフルエンサーに限定されていたので、一般公開日のあるリアル開催は3年ぶりです。

TGS2022は、ホール1〜8が会場で、2019年のホール1〜11のすべてを使ったときと比べて、約2/3の大きさとなりました。イベントホールも使用していましたが、配信会場となっていたので、一般入場はありません。国際会議場も、フォーラムやビジネスミーティングエリアなどで使用されています。

その結果、4日間の来場者数は13万8192人。前回のリアル開催であるTGS2019の26万2076人の約半分となりました。まだコロナ禍の中の開催で、一般公開日は入場制限も行っており、最終日が荒天だったことを考えるとある程度予想通りの結果と言えるのではないでしょうか。

前回より半減と数字上は減っていますが、会場はこの混みようでした

今やTGSはゲームの見本市、ゲームの試遊イベントではなく、コスプレ、ライブ、eスポーツ、限定商品の物販、インディーゲームの展示会と、さまざまな楽しみがある複合イベントとなっています。

今回は、コスプレ、ライブ、eスポーツが行われず、それらを目的としている人が訪れなかったため、来場者が減っていたのは当然だと言えます。なので、巷で騒がれているほど、来場者が少なかったことにネガティブな印象を持つ必要はないと考えます。いつも通りの開催で、人が来たら来たで、それはコロナ禍においてどうなんだと指摘する人もいそうですので、丁度いい来場者数だったのではないでしょうか。

個人的にはホールをつなぐ横方向の通路が広く、移動しやすかったので、今後もこれくらいの通路スペースを取ってもらえるとありがたいと感じました。コスプレ会場、eスポーツ会場などは9〜11ホールでの開催をすれば、今年足りなかった分もしっかり補填できそうです。

さて、TGS2022のイベント全体では、例年のお祭り感がちゃんと戻ってきているという印象。セガ/アトラスやスクウェア・エニックス、コーエーテクモゲームス、カプコン、KONAMIあたりの大手メーカーは、巨大なブースに派手な演出を施し、多くの試遊台を用意していました。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が出展を見送っていたのは残念ですが、まあ、なくても足りない感はそこまでなかったかなというのが率直な印象です。コンシューマ機のプラットフォーマーが1社もいないTGSは寂しいところもあり、新鮮な感じもありました。

その代替となったのがPCやVR。PC(VR)上などでプラットフォーム展開をする「Meta Quest」、PCのゲーミングプラットフォームSteamを遊べるポータブルゲーミングPC端末「STEAM DECK」のアジア地域での提供を担当するKOMODOなどがTGSに新規参入し、コンシューマ機のプラットフォーマー不在の補填、もしくはそれ以上の役目を果たしていました。

バンダイナムコブース。大手メーカーのブースの規模や見た目は例年のTGSと同様でした

注目のブースは、やはり上記に挙げた大手ゲームメーカーブース。特にカプコンブースでは、開場早々に試遊整理券の配布が終了してしまうタイトルもありました。

カプコンブースの中でも特に注目となったのが、PS VR2版『バイオハザード VILLAGE』。試遊では実際にPS VR2を使っての体験ができました。先述した通り、TGS2022にはSIEが参加していなかったので、カプコンブースでのみSIEの最新ハードであるPS VR2に触れる機会があったわけです。

『ストリートファイター6』も人気でした。7月に北九州市で行われた『ストリートファイター展』で初の試遊台を展示して話題となりましたが、九州まで行けなかった関東圏の人にとっては待ち望んだ機会です。キャラクターも九州で行われた試遊に登場した4人に加え、ガイル、ジュリ、キンバリーの3人に、TGSの2日目からはケンも使用できるようになっていました。

カプコンブースでは期待の新作『ストリートファイター6』の試遊台が人気となっていました

セガ/アトラズブースでは、『龍が如く 維新!』のリメイク作『龍が如く 維新! 極』、ソニック・ザ・ヘッジホッグの最新作『ソニックフロンティア』、アトラスブランドからは『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』のプレイアブルが用意され、ほかのタイトルも人気を博していました。

『龍が如く』シリーズのTGS展示といえばやはりこれ

Meta Questブースでは、Meta Quest 2の試遊ができました。常に長蛇の列ができていたことを考えると、ヘッドマウントディスプレイを使ってVRコンテンツを体験したことがある人は、以外に少ないのかもしれません。

また、KOMODOブースでは、貸し出されたSTEAM DECKをブース内の好きな場所でプレイできました。携帯ゲーム機のどこでも遊べるメリットを最大限にアピールできていたといえるでしょう。どちらも、体験という意味では、リアル開催のゲームショウならではの良さが出たのではないでしょうか。

初出展ながら大手メーカー並の規模で展開したMeta Questブース

STEAM DECKやMeta Questのように、PC系のゲームやメディアが大きく躍進した今回のTGS。コンシューマも大手メーカーからインディーゲームまで大きく展開しており、選択肢の幅が増えたという印象です。

一方で、スマートフォンゲームコーナーはかなり縮小していました。これはスマートフォンゲームが市場的に縮小しているわけではなく、完成したらすぐにリリースできるスマートフォンタイトルは見本市的なものが必要ない、効果が薄いと判断した結果なのではないでしょうか。

なにかノベルティを配る場合にしても、ゲーム内で課金のガチャが回せるチケットや石を配れますし、イベントをする場合もゲーム内のイベントを開催したほうが効果的で、スマートフォンの中で完結できます。そういった意味では、TGSとはあまり相性が良くないと言えるのでしょう。

ゲームに特化したスマートフォンをリリースしているXperiaのブース

今回のTGSはある種、リハビリ的な意味合いもあったと思います。そういう意味では、目的を果たせたのではないでしょうか。コロナ禍においてイベントをリアル開催をするにあたり、人数制限を設け、会場も小さくしています。それでも多くの人が来場を望み、参加企業も例年通りの力の入れようでTGSを盛り立てていました。

来年もリアル会場での開催を発表しています。2023年9月21日〜24日に幕張メッセで行われる予定です。来年は9〜11ホールも使用し、eスポーツ会場、コスプレ会場も復活し、ゲームの複合イベントとして完全復活を果たしてはしいところです。

著者 : 岡安学 おかやすまなぶ eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。様々なゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。@digiyas この著者の記事一覧はこちら