ムチューブやダンベルを使用したトレーニングを紹介【写真提供・慶友整形外科病院リハビリテーション科】

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ダンベルやゴムチューブを使用、肩・肩甲骨・肘・手首のトレーニングを紹介

 肘内側側副靱帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の権威である慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師は、野球上達への“近道”は「怪我をしないこと」だと語ります。練習での投球数を入力することで肩や肘の故障リスクが自動的に算出されるアプリ「スポメド」を監修するなど、育成年代の障害予防に力を注ぎ続けてきました。

 では、成長期の選手たちが故障をせず、さらに球速や飛距離を上げていくために重要なのは、いったいどのようなことなのでしょうか。この連載では、慶友整形外科病院リハビリテーション科の理学療法士たちが、実際の研究に基づいたデータも交えながら、怪我をしない体作りのコツを紹介していきます。今回の担当は小林凌さんと貝沼雄太さん。テーマは「成長期に最適なトレーニングプログラム」です。

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 野球選手に対するトレーニングプログラムは多くありますが、成長期の選手に対するトレーニングプログラムはあまり聞かないように思います。成長期と成人とでは身長や体重といった体格はもちろん、心肺機能なども異なります。また、成人ほどの負荷が加わると未熟な骨が怪我をしてしまうこともあります。それでは、成長期に最適なトレーニングプログラムはあるのでしょうか?

 今回はマーケット大学(米国)の理学療法士が提唱した“Youth Throwers Ten Exercise Program”を紹介します(※1)。元々存在していた“Throwers Ten Exercise Program”というプログラムを、成長期の子ども向けにアレンジしたプログラムです。“Throwers Ten Exercise Program”はダンベルやゴムチューブを使用した肩・肩甲骨・肘・手首の18種類のトレーニングで、その効果については多くの報告があり、高校野球選手の球速が6週間で1.7%向上したというものもあります(※2)。

 さて、話は戻って“Youth Throwers Ten Exercise Program”です。成長期のトレーニングは多面的に体の使い方を習得することが推奨されています。“Youth Throwers Ten Exercise Program”は筋力をつけることを目的としておらず、肩・肘以外の全身運動も含まれていることが特徴的なプログラムです。

市販のゴムチューブがあればできる、トレーニングの実際の動きを紹介

 このプログラムはすべて10回2セットとなっており、運動と運動の間で休息をとらないことが求められています。また、動きをしっかりと意識して行うことが重要とされています。

 用意するものは市販されているゴムチューブ。強度は中程度のものとしてください。すべてのエクササイズでゴムチューブはたるみなく少し張っている状態で持つようにしてください。

(1)チュービング
1、立った状態で肘を直角に曲げて、脇にタオルを挟み、ゴムチューブを持ちます
2-1、ゴムチューブを内側に引っ張ります
2-2、ゴムチューブを外側に引っ張ります
3、引っ張ったら元の位置まで戻ります

(2)スプリットスタンスランジ
1、片足を前に出して、ゴムチューブを踏んで固定します
2、ゴムチューブの両端を両手で持ちます
3-1、親指を上にして、前に腕をあげます
3-2、親指を上にして、横に腕をあげます

(3)ローテーション(サイドプランク)
1、横向きに寝て、下側の肘をついて体を斜めにします
2、脇にタオルを挟み、ゴムチューブを左右の手でもって、上側の手で外側に引っ張ります

(4)スクワットスタンス
1、スクワット姿勢をとります
2、その姿勢のまま両手でゴムチューブを持ちます
3-1、両腕を引くようにゴムチューブを引っ張ります
3-2、両腕を肘を曲げたまま胸を張るように引っ張ります
3-3、肩を横に90度上げて、肘を直角にしたまま後ろに引っ張ります

(6)トライセプスエクステンション
1、ゴムチューブの一端を背中で持ち、もう一端をバンザイした位置で持ちます
2、肘を曲げた状態で少し張る程度に調整しましょう
3、肘を伸ばします

(7)リストフレクション/リストエクステンション
1、立ってゴムチューブを足で踏みます。片手でゴムチューブを持ち、テーブルやベッドの上に手を置きます
2-1、手のひらを下に向けて、手首を上に返します
2-2、手のひらを上に向けて、手首を上に返します

(8)フォアアームプロネーション/フォアアームスピネーション
1、手をテーブルやベッドの上に置き、重りを持ちます
2、親指を上に向けて、手首を外側に返します
3、親指を上に向けて、手首を内側に返します

(9)シングルレッグスクワット
1、片足立ちをします
2、バランスを崩さないようにスクワットをします

(10)ラテラルスライド
1、肩幅でスクワット姿勢をとり、太ももにゴムチューブを巻きます
2、右側もしくは左側にスクワット姿勢のまま横歩きをします

▼参考文献
※1 Wilk KE et al. The Youth Throwers Ten Exercise Program: A variation of an exercise series for enhanced dynamic shoulder control in the youth overhead throwing athlete. Int J Sports Phys Ther. 2021, 16(6):1387-1395.
※2 Escamilla RF et al. Comparison of three baseball-specific 6-week training programs on throwing velocity in high school baseball players. J Strength Cond Res. 2012, 26(7):1767-81.(Full-Count編集部)